―――無轟、貴方……また旅に出るの?
あれはこの旅を始める前夜だったか。
妻に旅をする事を告げて、最低限の準備をしている時だ。
『ああ。これを最後の旅にする』
―――……そう、私は止めないわ。ただ、この子にも約束して。
観念したような妻は抱きかかえた幼子を俺へと近づけた。
妻との間に出来た幼子は俺へとその小さな手を伸ばして嬉しそうに声を上げている。
『……必ず帰る。それまで、元気に待っていてくれ…』
俺は我が子の手と指切りしてそう誓った。妻も小さく笑顔を浮かべた。
そうして旅に出た。自分を見つめなおす旅、戦いの旅になっていったのは聊か喜ぶべき予想外だったが。
「――いくぞ、お前たち」
燃え盛る火の中、無轟も炎を纏わせ、『緋乃炎産霊神』を顕現させる。
しっかりと凛那を握り締めて、無轟はゆっくりと走り出し、次第に一気に駆け出す。
「荒れ狂え、火之龍凪(ひのたつなぎ)!」
炎を纏った凛那を振り払うと炎の龍が無数に現れ、クウたちへと襲い掛った。
「おいおい、さっそく全体的な攻撃かよ!」
クウは飛んで回避できる。だが、他の者達は自衛の魔法を持っていても防ぎきれるかわからなかった。
思考を廻り、迎え撃つ事をと決断して、双剣を握り締め、羽ばたこうとした。
「――クウ、俺たちに任せて欲しい」
「な、テラ…?」
自信に満ちたテラの声に動きを止めて振り向くとクウへ頷き、アクアたちに視線を送る。
彼女も強気に微笑んで頷き返して、ヴェントゥスに声をかける。
「ええ。いくわよ、ヴェン」
「勿論!」
テラ、アクア、ヴェントゥスの三人は新たに得たそれぞれのキーブレードの切っ先を合わせて、掲げた。
呼応するように光が彼らを包み込んだ。それは魔法「リフレク」と似たものだと理解できる。
「「「『トリニティ・バリアース』!!!」」」
炎の龍たちは一斉に結界に喰らい付くが、結界は微塵も揺るがずにこれを打ち消した。
そして、迫ってきた無轟が結界へと炎熱を集束させた凛那を振り下ろす。
「!」
だが、結界の強度は凄まじく、亀裂一つ生じていなかった。
更に、三人の反撃の声が重なり合う。
「「「『トニリティ・パニッシュ』!!!」」」
「なにっ! うおぁ――――!!?」
結界が光を発して、衝撃となって無轟に跳ね返り、その衝撃に大きく天に舞った。
「クウ!」
「ああ!」
テラの一声でクウは応じ、無轟のいる空中へと飛翔した。だが、無轟も空中で体勢を整え、見計らって迎え撃つようにクウに斬りかかった。
「っと!」
慣れない双剣で無轟の一撃を躱し、いなして、反撃の一撃を繰り出す。意思に呼応するように双剣の刀身に闇の力が漲る。
「これはさっきの礼だぜ。――『ニゲル・プルート』!!」
「――ぬぅ!!」
クウの双剣による闇の一撃を受け、無轟は地に叩きつかれる。
すると、叩きつけられた方向からクウの胴に炎の鎖が伸びて絡き、引き寄せられる。
「な―――くそっ!!」
この技は間違いなく無轟の『火之鎖刈突』。
視線を凝らすと、叩きつかれた場所に彼が炎の鎖を片手でこちらに引っ張ろうとしていた。
更には、凛那に纏った炎を大きく膨れ上がらせている。追撃を繰り出そうとしているのであった。
「覆いて噛み砕け、『火之琿狼(ひのぐんろう)』!!」
再び炎を放射すると、今度は無数に群れを成す炎の琿狼が天地に姿を現した。
動きを止められたクウ、そして、救出しに、或いはこちらへと攻勢してきたテラたちへと襲い掛かったのだ。
「クウ、今助けるよ!」
風を纏い、素早くクウの元に現れたヴェントゥスがキーブレードで炎の鎖を見事に断ち切る。
同時に、落下する彼にも風を纏わせ、衝撃を和らげる処置を施すとクウへとめがけていた琿狼らはヴェントゥスに狙いを集中した。
「捉えられる? 『エアロ・シューティング』!!」
ヴェントゥスは風を更に纏って、自らを砲弾のように縦横無尽に飛びまわった。
通り抜けると同時にキーブレードで一閃し、琿狼らを撃退する。
その勢いのままに、無轟に突撃した。
「ッ…!」
烈風の一撃を無轟は耐え、ヴェントゥスと対峙する。
「無轟さん、これ以上戦いあうのは―――」
「今は、戦え。お前が守りたいものを守れなくなるぞ?」
「!」
その怜悧な一声に、ヴェントゥスは表情を引き締める。
その少年らしい様子を無轟は静かな笑みを洩らして、力を込める。
「そうだ、その意気だ!」
「行くぜ! 『ラストアルカナム』!」
怒涛の連撃、キーブレードを巧みに用いて無轟に斬りこんで行く。無轟はそれを一撃の『炎産霊神』で牽制しようと振り払った。
瞬間、空中へと
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME