城での騒動が漸く収束へと落ち着く中、白髪の青年――神月は一人、城内下層広間でタバコの一服、一息をついている。
一服吹かす彼の表情から何処か感傷に浸っている雰囲気を漂わせてもいた。
そこに欠伸をかみ締めながら少年――睦月が広間に入ってきた。彼は物憂げに吹かしている彼に歩み寄りながら容器に声をかけた。
「おっ、神月ー。どうしたんだよ、浮かれない顔してさ?」
「……」
声をかけられた神月は一瞬睨み付けるように一瞥して、すぐに一服と共に視線を逸らす。
そんな態度を見た睦月はやれやれと思いながらも、顔を近づけて再び、声をかける。
「しーんーげーつ」
「酒臭いぞ」
しつこい様子に険しい表情を作りながらも、同時に理性で些細な怒りを抑え込んだ。
「そりゃあ、昼間は宴会してたからな!」
「…クウらがやって来て、中止になっただろうが」
「はっは。運んだ後、ハオスと二人で飲みあったんだ! んで、ちょいと寝てた」
「そうか」
酔いもあって更に陽気な睦月を尻目に、神月は一服吸い終える。そして、二本目を無意識に手を伸ばした時、手を止める。
「……寝ていたのなら、騒動も気付かなかったか」
「ん? ああ、俺たちが連れ込んだけが人が逃げ出して、更にはけが人の一人が逃げ出したけが人を連れさらって、勝負して、
挙句にけが人同士で戦いあって―――そんな所だったか」
「……」
騒動の内容はだいたいあっていた。しかし、酔いつぶれて寝ていた奴がそこまで情報を持っているはずが無い――そう、じっと睨み据えるその視線にで語り掛けられ、睦月は理由を陽気なままに打ち明かした。
「弟の皐月とかアビスに教えてもらったんだよ。だいたい合ってた?」
「ふん」
そっぽ向くように言うと、それを肯定とみた睦月は隣に座り込んだ。神月はもう視線を合わせようとしないで遠くを見ている。
睦月はそれでも隣から話しかけた。理由は無いが、あえて言うならこの事件で知り合えた人間、同じ状況下を強いられた者同士、不思議と声をかけたくなっていたのだった。
「騒動に巻き込まれて疲れたのか? 顔色優れないな」
「お前がさっさと戻ればすぐに良くなるぞ」
「言うねえ」
尚も陽気に笑う彼を、神月はため息交じりに呟いた。
「永く生きてるからそんな風に流せるのか?」
「ほー」
その言葉に、睦月は呟いた声とは裏腹に陽気の一切無い何処か真剣味のある表情で返す。
そして、その言葉を吟味するように考え込んで数秒、彼に視線を合わせて口を開いた。とても冷やかな視線を。
「永く生きてる、何ていうけど俺はずっとこんな感じだぜ。永遠っていうのはさ、最低に言うと『ずっとそのまま』なんだよ」
「……」
その言葉の重みは『永く生きてきた』彼だからこそ言える風格が在った。神月は静かに頭を下げる。
「すまない、悪く言って」
「ははは、気にしないからいいぜ。――ん、じゃあ…誠意として、浮かない理由を教えてくれ」
「……お前はあえて負けるってのは出来るか?」
「? あえて負ける、かあ」
その言葉の意味を理解するように考え込む睦月を見ながら、神月は話を続けた。
「さっきの騒動の最後、そいつは戦いを挑ませて、助けに来た仲間とも戦い合い――最後は反撃もせずに、受け入れるように負けたんだ」
「……なるほどねえ」
「負けた奴は、こっちの世界でなら俺の祖父に当たる人だった。奇遇にも、な」
「同じ名前の赤の他人、ってか?」
神月は静かにうなずいた。睦月は浮かれない姿を見せていた理由をなんとなく理解した。
その人物があえて負けたことを理解したいのだろう。そうでなければこれほど考え込む必要は無いのだ。
「……そいつは何を理由に戦いを挑んだんだろう……そこが最大の要点かな。
―――俺は『そいつ』じゃあないから、お前も『そいつ』じゃあないから考えたって答えは那由他の果てさ」
「そう、その通りさ……はは、馬鹿みたいだな」
睦月の言葉に苦笑いを浮かべながら神月は顔をわずかに俯く。長い髪が垂れて浮かべた表情をうまく隠していた。
その様子に睦月は思わず自重するように表情を険しくした。彼にではない、自分へだ。
「悪い。―――なんなら、直接聞きに行くってのもアリだろうな」
「直接…か」
思い返せば、そいつ―――無轟とのまともな会話は特に無かった。こちら側の無轟との出来事も幼少の頃のもので、憶えもあまり無い。
直接話しかけられるだろうか、言い知れぬ不安が神月に圧し掛かった。固まる神月を見て、睦月はにっ、と笑みを浮かべて立ち上がる。
「よし、行動するのみだな」
「お、おい…!」
有無を言わさず、睦月は神月の手をつかんで、無轟の居る部屋(そこへと運んだことも
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