「シルビアを…救う力?」
イリアドゥスの口から紡がれた言葉に、信じられないと言った風にクウがオウム返しに呟く。
もちろんクウだけでなく周りの人達も困惑を浮かべていると、黙ったままではいけないと思ったのか菜月が話を進めた。
「イリアドゥス、どうしてそんな事知っているんだよ?」
「記憶を取り入れたの。シルビアに関する記憶をね」
何事も無いように述べると、一瞬だけシャオに視線を向ける。
視線を向けられた本人がその事に気付き身を強張らせると、二人の間で交わす無言のやり取りに気付いていないのかクウが腕に刻まれた刻印をイリアドゥスに見せつけた。
「それより、この力…――『分離』と『融合』はどうやって使えばいいんだ? どうすればシルビアは救われるんだ?」
「簡単よ。彼女はアウルムとの融合する事で『χブレード』になる。だから一つとなった本体を再び二つに分離させればいい。さっきあなたがやったキーブレードのようにね」
「χブレード? 何だそれ?」
初めて聞く単語にオルガが目を細める中、キーブレードを双剣に出来た理由にテラがクウの腕にある刻印をマジマジと見つめた。
「じゃあ、クウのキーブレードが二つになったのはこの刻印の力なのか?」
「でも、これを使えばシルビアを助ける事が出来るんでしょ! 問題が一つ片付いたわね!」
よほど嬉しいのか、オパールが笑顔で握り拳を作る。
シルビアが与えてくれた一つの希望。しかし、イリアドゥスは否定するように首を横に振った。
「でも、そう簡単じゃないわ。与えられた力は微弱なもの、それに本人もまだ慣れ切っていない状態じゃ『分離』の力は発動しない。現に、今のあなたは無意識で二つの力を使ってる状態だもの」
「俺が、無意識に…?」
「気づいていないから教えるけど…あなたは闇の力を使えない身体になっている。それでも無轟との戦いで使えたのは、『融合』の力で精神と心の闇を繋いでいたからよ。それも無意識化の状態でね」
「そう、だったのか…?」
意外な事実に、クウは顔を俯かせ刻印の刻まれた部分を握る。
双翼はともかく、闇の力が使えたのはキーブレードの力だとばかり思っていた。だが、実際はシルビアが渡した力のおかげだった。彼女を助けるはずが、いつの間にか自分が助けられていたのだ。
どうしようもない気持ちで一杯になっていると、黙って話を聞いていたアーファが難しそうに頭を捻った。
「ねえ、話を聞く限りその…シルビアさんを救うのって『分離』だけでいいんだよね? どうして『融合』って力も渡したのかな? そのおかげでクウは助かってるけど、シルビアさんには不要なものじゃない?」
アーファの考えは確かに筋が通っている。シルビアを救うのなら『分離』―――1つのモノを分ける力だけでいいはずだ。なのに、どうして『融合』―――さまざまなモノを1つにする力も与えたのだろうか?
「『分離』の力を使った際、戻す為かもしれないな。こうしてな…」
そう言うなり、クウがキーブレードを両手に持つ。
すると、キーブレードが光り出して一瞬であの黒と白のキーブレードに分ける。
再び双剣の状態に変えたクウに周りが見開く中、今度は両手に持ったキーブレードを重ねると光り出し、すぐに双剣から一つの武器に戻した。
「元に戻った!?」
「もう使い方が分かったんですか!?」
目の前で見せられた『分離』と『融合』の力に、思わず菜月とイオンが驚きの目でクウを見る。
だが、本人は何処か浮かない顔で首を横に振った。
「何となくだよ。どちらにせよ、今の状態じゃあのお姫様を救えそうにない。どうにかして使えるようにしないと…」
「その間に、エンが行動起こさなきゃいいけど…」
これからの事にクウが左手で拳を握っていると、カイリは一抹の不安を口にする。
自分達がこの世界に来てからもう一日が経とうとしている。シルビアが捕らわれた事を考えれば、自分達が行動する猶予はそんなに無い筈だ。
二人の言葉に周りの空気が重くなっていくと、突然オパールが声を上げた。
「そうだ! ねえ、この城にディスクを解析する機械とかない?」
「機械…この城にあったっけ?」
ペルセが困ったようにオルガ達に視線を送るが、四人も今いる城について考えこむ。
自分達はこのビフロンスの城に住んで数日は経つ。ある程度城の中も把握はしているが、機械がある部屋は見た事が無い。
こうして五人が記憶を引き出している中、イリアドゥスから助け舟が出された。
「それなら明日の会議で言うと良い。あなたにとって必要な事なのでしょう」
「会議?」
イリアドゥスの発言に、リクが首を傾げる。
それに対し、イリアドゥスは無言である物をクウ達に差し出した。
「これ、あたしの
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