遠くを見ながら語るイリアドゥスの言葉に、オルガ達を除く全員が目を見開いていた。
【愚神】。それは、この世界に来る前の戦いでエンが言っていた言葉だから。
「エンが言ってた愚神って、あんたの事だったのか?」
「ちょっと、リク…!」
ストレートに問い質すリクに、思わずオパールが声を荒げる。
しかし、イリアドゥスは顔色一つ変えずに肯定した。
「そうね。私はかつて自分の思うままに行動して、大きな過ちを犯したもの……そして、大切なモノを失って長い年月を閉じ籠った…」
「イリアさん…」
何か悲しい事を思い出したように、イリアドゥスの表情に暗い影が落ちる。
どう声をかけていいか分からずにカイリがイリアドゥスを見ていると、一人の人物が動いた。
「例え大きな罪を犯したとしても、神が嘆いてたら周りだけでなく世界も暗いままだ。だから、笑って笑顔を見せてくれないか? あなたはこんなにも美しいのだから…」
何処か優しげに語りながら、クウはイリアドゥスの手を取るとそっと包み込む様に握り締める。
「って、クウ!? 何さりげに罰当たりな事をしているっ!?」
「神を口説くなど言語道断!! すぐに成敗を――!!」
目の前で神を口説きだすクウに、さすがのテラも怒鳴り声を上げる。
アクアも怒りを露わにしてキーブレードを取り出し、無礼な行為を止めさせようとする。
「ふふっ……アハハハッ!!」
ところが、予想に反して突然イリアドゥスは大声で笑い始める。
これには周りだけでなくクウですらも茫然としていると、イリアドゥスは尚も笑いながら喋り出した。
「あなた、なかなかね…っ! 私を口説くなんて、このセカイに産まれてから始めての事だわ!」
そう話すなり、再び笑うイリアドゥス。
口説かれた事に対して不快どころか好感を持つイリアドゥスに、我に返ったのかすぐにクウも取り繕い微笑みを浮かべた。
「やっぱり、あなたは女神だ。愚神なら笑顔なんて似合わないからな」
そう語りかけた直後、クウの横を蒼い炎弾が通り過ぎて激しい爆発と共に後ろの壁に大穴を開けた。
「な、何だぁ!?」
明らかに狙ってきた攻撃に、クウだけでなくイリアドゥスを除いた全員が飛んできた方向に顔を向ける。
そこには、恐ろしい光景が広がっていた。
「母様が心配で後を付けて正解だった……母様に付け入ろうとする蛆虫がいたのだからなぁぁーーーーーーっ!!!」
「アイネアス、サイキ…――敵を見つけました、すぐに城全体に結界を張りなさい。それと戦える者をこちらに……母様を誑かす愚か者に我らが半神の裁きを」
炎、そして維持と模倣の半神の筈なのに、鬼神と化したブレイズとヴェリシャナがそこにいた。
只ならぬオーラを纏いながらブレイズは武器である大剣を、ヴェリシャナに至っては通信用の魔法陣を使い増援を要請しながら、今もイリアドゥスの手を掴んでいるクウを睨みつけている。
「ブレイズさん、ヴェリシャナさん…もの凄く、ご立腹だね…!?」
半神の中でも母(イリアドゥス)に対して人一倍強く思っている二人の姿に、イオンは震え上がり壁際に後退りする。
もちろん、イオンだけでなくクウとイリアを除く全員が壁際に避難し始める。
「クウ…短い間だったがそれなりに楽しかったぜ」
「友として過ごした日々は忘れないからな…」
「師匠…ボクも命が惜しいから…」
『とりあえず、冥福を祈っておくわ…』
そう言いながら、菜月、テラ、シャオが何処か諦めの目でクウから距離を取る。
更に今の状況に憐みを感じたのか、イリアドゥスの口を借りてレプキアまでもが言葉を送るがイリアドゥス以外誰も気づかない。
ここにいる全員、恐怖と憤慨でそこまで思考を廻せないのだから。
「全員離れないでくれぇ!? だ、誰か助けて――!!」
「皆さーん、クウさんの事はもうほっといていいですからー」
クウが救援を求めていると、冷ややかな声が部屋に響く。
見ると、ベットで寝ていたレイアが起き上っていて、冷めた目をしてクウを見ていた。
「レイア、起きてたのか!? 丁度いい、二人を説得して――!!」
「知りません! 美人で胸が大きい人を選ぶクウさんなんて、地獄の炎に焼かれて反省すればいいんです!」
「反省じゃすまねーから!? 炭どころか灰にまで燃やされるレベルだぞこれぇ!!?」
「安心しろぉ…消し炭も残らぬほど貴様の存在をこの世から消し去ってくれるぅ!!!」
大声で怒鳴り散らすなり、ブレイズはクウに向かって激しい炎を纏った大剣を振り下ろす。
そうして大きな爆発が起こり、窓ガラスが吹き飛ぶと共に壁に開いた穴から勢いよく煙が噴き上がる。その煙の中から、白と黒の双翼を具現化させたクウが夜空に向かって飛び
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