シルビアによってクウ達が『ビフロンス』に移動され、一夜が明けた。
新しい一日を迎えた城の中では、広間に用意された朝食を取ろうとさまざまな人達が集まり出す。
そんな中、チェル、シンク、ヘカテー、イブも広間に向かって廊下を歩いていた。
「んん〜、今日もいい朝ね〜!」
「昨日の今日で、よくそんな事言えるな……少し弛んでいるぞ」
気持ち良さそうに大きく背伸びするイブに、チェルは厳しい言葉を送る。
だが、そんな御小言にイブは気にする様子もなく軽く受け流した。
「いいじゃない、別に。別世界から来たって人達、敵って訳じゃなかったんでしょ?」
「確かにイブさんの言う通りですけど、何と言うか…」
「何かが起きそう、って感じだよね…」
「“何か”、か…」
神妙な面付きを浮かべるシンクとヘカテーに、チェルも思考に耽る。
レプセキアの戦いの後に、イリアドゥスの語った「そういうこと」。もしかしたら、彼らが来た事により自分達に与えられた休息が終わろうとしているのかもしれない…。
「レイアが寝込んだぁ!!?」
その時、廊下の先で聞き覚えの無い男の声が響き渡る。
四人が前を向くと、そこには見た事もない人物達が八人ほどいる。何人かは怪我が癒えてないのか、身体のあちこちに包帯を巻いている。
シンクとヘカテーはすぐに昨日来た別世界の人達だと理解する。だが、チェルとイブだけは目を疑った。彼らの中に、見覚えのある人物がいたからだ。
「う、うん。昨日、相当無理してたみたいで…その反動が今日になって来たんだって」
「行ってくる」
そうして四人が見ている中、カイリは今いるメンバーに事情を話す。
よほど心配なのかすぐさまクウが背を向けるが、アクアがやんわりと声をかけた。
「大丈夫よ。あくまでも疲労による体調不良だから、一日安静にしていればすぐに治るわ」
「そ、そうか…」
「テラ、あとで一緒にお見舞い行こうよ」
「そうだな。会議が終わった後にでも寄ろう」
大事ではない事で足を止めるクウに対し、ヴェンとテラは少し心配そうにベットで寝込んでいるレイアを思う。
リクも心配なのか同じように顔を俯かせていると、徐にカイリがポケットに手を入れた。
「それとね、クウ。これ…レイアが渡してって」
そう言うと、カイリはポケットから銀のロケットを取り出してクウに差し出す。
これを見たクウは、目の色を変えてカイリの手からロケットを奪った。
「スピカが大事に持ってたロケット…!! 何でレイアが!?」
何処か詰め寄る様にクウが聞くと、オパールが冷めた目をして半ば睨む様に話した。
「あんたのコートのポケットに入ってたんだって。で、返して置いてって」
「俺のポケットに!? でも、スピカから貰った覚えは――!!」
信じられないとばかりに、クウは焦りを浮かべて記憶を辿る。
だが、心当たりが見つかったのかハッとなって握ったロケットを見つめた。
「まさか、あの時か…?」
「あの時?」
リクが聞き返すと、クウはロケットを見ながら一つの記憶を思い返した。
「スピカが仮面に侵されていた時に、俺に何かを渡していたんだ。多分、これを…」
自分の腕の中で顔を押え仮面の浸食を防いでいた時に、彼女は確かにポケットに何かを滑らせていた。
スピカが何を思って、これを渡したのかは分からない。それでも手放すまいと強く握り締めていると、話を聞いていたシャオが笑みを浮かべた。
「こっちの世界のスピカさんも…師匠の事、凄く信頼していたんだね」
そう言って、シャオはクウに向けて笑顔を見せる。
しかし、どう言う訳かクウは表情を曇らせ目を逸らした。
「師匠?」
「なあ、シャオ…前から思ってたけど、俺の事を“師匠”って呼ぶの止めてくれないか? 確かにお前の師匠と俺は一緒だろうけど…別の存在だろ?」
クウの言う事は尤もで、シャオの師匠はあくまでも彼の世界に存在する“クウ”だ。例え外見が一緒でも、中身は別のモノだ。
それをシャオも分かっているのか、ゆっくりと頭を下げた。
「ごめん。でも…ボク、どうしても師匠の事を“師匠”って呼びたい。駄目、かな?」
シャオは自分の思いを率直に伝え、困ったように見上げてくる。
これにはクウも恥ずかしそうに顔を逸らすなり、何処かぶっきらぼうに言った。
「…分かったよ、好きにしろ」
「ありがと、師匠!」
「相変わらず、お前達は賑やかだな」
満面の笑みをシャオが浮かべると、声がかけられる。
全員が目を向けると、あちこちに包帯を巻いた無轟が腕を組み微笑を浮かべながらこちらに近づいていた。
「無轟!? 怪我はもういいのか!?」
「問題はない。身体が丈夫なのは分かっているだろう?」
「ま
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