その後、無轟に付いて行くような形でテラと少年は移動を始めた。
先に進めば進むほど、少しずつ争いの跡が減っていき草地や木などの緑が増えていく。
そうして三人は戦場の中を歩いていると、不意に無轟が口を開いた。
「それにしても、災難だったな」
「え?」
思わずテラが聞き返すと、無轟は歩きながら説明した。
「この世界は、今国同士の戦争の真っ只中…――言わば、修羅の世界だ。お互い、妙な世界に迷い込んでしまったな」
「あなたも他の世界から来たんですか!?」
バラバラとなった世界を渡る事は、キーブレード使いしか出来ない事だと聞いていた。
それ以外の人が世界の存在を知って移動出来る事にテラが驚いていると、無轟はフッと笑いかける。
「まあな。今は行く当てもなく彷徨っている、と言った所だ」
そう言うと、無轟は徐にテラの隣に居る少年を指した。
「それは、こいつも同じだがな」
無轟の言葉に、少年は気に障ったのか無言で睨みつける。
まるで不良のような少年に、テラは思った事を聞いてみた。
「キーブレードが使えるって事は、君も誰かの弟子なのか?」
「…確かに教えては貰った。だけど、それだけだ。弟子になった覚えはない」
「君はアンヴァースの討伐を命じられていないのか?」
「アンヴァースって、さっきの魔物か? ふーん、急に現れたと思ったら誰かが意図的にばら撒いているのか…」
初めて少年の周りの空気が和らぎ、何かを考えるように手を顎に当てて少々曇った空を見上げる。
そんな少年の様子を見ながら、テラは思わず眉を潜める。
キーブレードを持つのなら、マスターである師がいるのは当たり前だ。なのに、この少年は師に対して純情や尊敬などが感じられない。それどころか、この異変を野放しにしている。
あまりにも謎が多い少年を細目になって見ていると、無轟が足を止めた。
「着いたぞ」
その言葉に前を見ると、草むらに隠されるように小さな洞窟があった。
「少しは隠れやすいと思うのだが、気に入らぬか?」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
テラがお礼を言うと、無轟は洞窟の中に入っていく。
それを追うように、テラと少年も中に入った。
中に入ると、薄暗くヒンヤリとした空気が辺りを包んでいる。
とりあえず三人は適当な場所に座ると、無轟がテラに話し掛けた。
「それで、お前はどうしてこの世界に来た?」
「私は、ある人物の命でアンヴァースを討伐する旅をしています。この世界に、光を齎す為に」
無轟にテラは旅の目的を答えつつ、ふと考える。
確かに自分は、師であるマスター・エラクゥスの命で世界を脅かすアンヴァースを討伐する為に旅に出た。
だが、今は――
「…くだらねえ」
「え?」
突然かけられた声に、テラは思わず聞き返す。
少年は壁に寄りかかりながら後ろで腕を組み、冷めた目でテラを見ていた。
「仮にアンヴァースってのが消えたとして、本当に世界中の人が幸せになるのか?」
「それは…」
この少年の質問に、テラは口篭もる。
例えアンヴァースが消えて平和になったとしても、自分はもう『旅立ちの地』へは戻れない。
光を失い、完全に闇に身を落としてしまった自分は。
「お前は光が嫌いなのか?」
そんな葛藤していると、静かに無轟が少年に聞く。
少年は若干驚くも、すぐに口を開いた。
「嫌い、って訳じゃない。ただ…」
そこで言葉を切ると、二人から顔を逸らした。
「…何でもねえよ」
そうして、三人の中で沈黙が過ぎった。
妙な空気が三人を包み、誰も何も言えずにただ静かに時間が流れて行く。
何となくテラはもう一度少年を見ると、ある事に気付いた。
それは自分の中にあるのと同じ、闇の力。それが少年にも感じられるのだ。
「…君は闇の力を持ってるけど、怖く無いのか?」
「そう言うお前はどうなんだよ?」
少年から思わぬ質問を返され、テラは思わず息を飲んだ。
「気付いてたのか…!?」
「そう言うのに敏感なだけだ」
まるで何でもないように答えると、じっとテラを見る。
思わず目線を逸らすと、無轟もこちらを見ているのに気付く。
答えを待つ二人に、テラは軽く溜め息を吐くと心の内を明かした。
「――俺は、師に闇はあってはならぬものだと教えられた。何度もこの身に眠る力を消そうと頑張ってきた」
キーブレードマスターになる夢を信じ、自分の中に芽生えた闇を消そうとした。
しかし、それは叶わず試験も落ちてマスターになる事は出来なかった。
それでも必死で闇に捕われないようにしてきたのに、マスターとなったアクアに監視させられ、完全に闇に落ちてしまった。
でも、そんな自分を救ってくれた人物がいた。
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