今は城の外に停泊している、異空の海を渡る為の船―――箱舟【モノマキア】。
船の内部、中央にある操作室で作業をしている人物がいた。
「…――!」
乱れた記号や数字が占めた画面を睨みながら、黙ってキーを素早く叩くオパール。
その少し後ろでは、案内の為に付いてきたベルフェゴル、キルレスト。機械に詳しいと言う事でチェル、そして同行者であるリクとイブが椅子に座ったり壁に凭れかかって一心不乱に作業する彼女を眺めていた。
「ここに来てから、それなりに経つの」
「最初はこの船を見て興奮していたのに、今ではずっとあの調子だ」
「バクに侵された大量のデータを直すんだ。そして、そこから重要な手がかりを掴む。すぐに出来る作業じゃないさ」
作業を見守るベルフェゴルとキルレストに、壁に凭れていたリクが静かに口を開く。
「それでも、あいつの腕ならきっと出来る。俺はそう信じてる」
微笑みを浮かべると、集中しきっているオパールを見る。
コンピューターに関する技術は、自分達の中で誰よりも上なのを知っている。だからこそ、信じられる。
そんな思考を抱いていると、話を聞いていたチェルが急に顔を背け鼻で笑った。
「ふん、随分とあの女を信用しているんだな」
「信用して問題があるのか?」
まるで疑いをかけるチェルに、リクが軽く睨みつける。
しかし、チェルはそんな視線を受け流すと更に言い放つ。
「何も。ただ、お前の様な奴にそんな感情があるのに驚いただけだ」
「なに…っ!」
挑発するチェルに、さすがのリクも怒りを見せる。
険悪になる二人を見てられず、すかさずイブが割り込んだ。
「ご、ごめんなさいね? 今ちょっとチェルって機嫌が悪くて…」
「イブ、俺は別にむぐっ!?」
その先は言わせないとばかりに、即座にチェルの口を塞ぐイブ。
軽く睨むようにイブは顔を近づけると、誰にも聞こえない様に小声で会話する。
(チェル、分かってるでしょ? 目の前にいるリクは、私達の知ってるリクじゃない。大人なんだから、それぐらいは――)
バンっ!!
そうしてチェルに言い聞かせていた時、何かを叩く音が盛大に響く。
思わず全員が目を向けると、今までずっとキーを叩いていたオパールが顔を俯かせて立ち上がっていた。
「オパール?」
「どうした?」
突然作業を止めて立ち上がったオパールに、リクとキルレストが同時に聞く。
すると、オパールは振り返るなり、イブに口を押えられているチェルを睨みつけた。
「ちょっと、リクの事そう悪く言わないでくれるっ!?」
思わぬ言葉にチェルが固まると、オパールは更に怒鳴り付ける。
「確かにこいつは自分の事しか見ないし! 卑屈だし! 後ろ向きだし! 親友の気持ちさえも考えないような奴だけどっ!!」
オパールが何か言う度に、リクの方から次々と棘が突き刺さる音が聞こえるのは気のせいではないだろう。
「でも、それは裏を返せば全部他人の事を思ってんのよ!! だから、そんな風に言うの止めてくれない!!」
最後までオパールが言い切っていると、部屋の片隅で落ち込むリクを除いた四人が目を丸くしているのに気付いた。
「…な、何よその目?」
「いや…何と言うか…」
「すごいな…」
ベルフェゴルとキルレストが思った事を呟いていると、チェルが彼女の内にある感情を見抜きニヤリと笑った。
「なるほどな…――お前、こいつに惚れてるのか?」
「んなぁ!!?」
図星を指されたのか、オパールの顔が一気に赤くなる。
この反応に、チェルはやれやれと肩を竦めた。
「まさかこんな姿にされた男に惚れるとは、結構な物好きもいるもの…ぐおっはぁ!!?」
「誰がっ!! こんなっ!! バカで!! 鈍感で!! しょうもない!! ろくでなしな男に!! 惚れるかぁぁぁ!!!」
思いっきり怒鳴りつけながら、チェルを殴りつけるオパール。
物を作る技術に興奮したと思えば、急に真剣になり。かと思えば、今では怒り狂っている。
短時間で表情をコロコロ変えるオパールに、ベルフェゴルとキルレストは呆れを見せた。
「…さっきと言ってる事が真逆ではないかの?」
「あれも愛情表現の裏返し、と思うしかないだろう…」
「ふふっ、本当に面白い人達ね〜」
二人が呆れる中、イブだけはニヤニヤとチェルを殴るオパールを見ていた。
新しい武器を手に入れ、工房から城へと戻って来たクウは修練場に続く廊下を走っていた。
しかし、あと少しと言う所で見知った人物の後ろ姿が見えて足を止める。
「オッサン!?」
思わず声をかけると、無轟、そして炎産霊神が同時に振り向いた。
「クウか。む…?」
『へー、新しい武器見つかったんだ。うん、見る
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME