「――永い永い時を待った」
荒廃とした荒地、墓標のように立ち並ぶ無数の鍵状の剣。
モノクロの仮面をつけたモノクロ配色の衣を纏っている女性は渇いた風に髪を撫で付けながら、虚空の空を仰ぐ。
「全ては此処から始まった」
あらゆる争いの根源、セカイを別つ根源、『私』を産み落とした場所。
「そう、此処で全てを終わらせる」
*
神の聖域【レプセキア】。その中心、第一島神殿内部。
荒い息を上げながら走る黒い布で素顔を隠す少女――アーシャと灰色の黒いコートを着た青年――ディザイアが出口へと駆け出していた。
「逃がさないぞ、貴様ら」
低い声と共に8つの勾玉が二人の前に立ちふさがるように結界を生み出し、道を阻まれ、立ち止まった二人は振り返って声の主を睨んだ。
声の主……銀髪、金色の瞳をした和風な白装束、翡翠色の帯刀を手に持つ少年――アバタールが居た。
アーシャ、ディザイア、そして、アバタールは母でもある神の血族【半神】の一員だった。
そんな親子、兄弟のような間柄なのに裏切りを行った事に対して理解できなかった。嘗て、自身も母たる彼女を恨んでいたが、今は和解したディザイアにとって彼が母を裏切る理由がわからなかった。
「アバタール! 何故、レプキアを襲った!? お前はアイツとつるんでいたのか!」
怒声と困惑の混じった問いかけに、彼は、
「フッ、だったらどうした? 貴様らに答える意味は無い」
何を今更といった開き直った態度で言い返した。
その答えを、意味を知ったディザイアは拳を握り締め、口元まで片手で隠すフェイクの構えをとって、アーシャに小さく呟く。
「……アーシャ、俺がこの壁を突き破る。お前は……」
「そんな――」
「戯言は無用だ!」
彼の密談を勘付き、斬りかかって来たアバタール、青年――ディザイアは戦闘態勢に切り替える。
その時だった。
アバタールの脇から空間が歪み、突き破って来た男女の剣士が一斉に彼の剣を防いで、押し返した。
「っ! お前達は……!」
「ティオン、アルガ!! お前ら」
「ディザイア。今は逃げるんだ! アルカナやアイネアスに知らせろ」
「待て、お前らはどうするつもりだ!?」
「……愚問よ、ディザイア――今なら空間の干渉でその結界も緩い! 今の内に行きなさい」
二人はアバタールの剣戟を交えながら、ディザイアたちに言った。
「いくぞ、アーシャ!」
「え、ええ……!」
立ち止まる訳にはいかないと悟ったディザイアはアーシャを右腕で彼女の腰を回して、抱き抱えながら、左手に闇の力を目一杯に打ち込む。
「『堕天―――崩手』ッッ!!」
―――――――ッバリィイン!!
ガラスの破片のように砕け散った結界、一気に駆け出したディザイア。
「任せたわよ!!」
すると、結界が張られていた場所に新たな結界が出現した。
それはティオンが引き起こした空間の歪みによる結界だった。
「さて、此処からは通さないわよ…!」
「そうだ。お前も、あの仮面の女もな!!」
「解っていないな、貴様らは……あの女の力を」
哀れな目で二人の攻撃を防いでは返しての乱舞をするアバタール。
すると、彼の奥からゆっくりと歩み寄ってくる足音が響いてくる。
その足音が止んだ後、神の聖域【レプセキア】は完全沈黙した。
既に、ディザイアとアーシャは半神アイネアスたちがいる移動する世界【ビフロスト】へ向かっていた。
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