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CROSS CAPTURE43 「アルヴァ」

「ええ。奇妙な縁よね、此処が懐かしいと感じたのは――――此処が『故郷』に等しいのだから当然ね」

 茜に燃ゆる己の刃も一層の鼓動を感じた。その鼓動共に凛那はゼツらに言う。

「此処は私だけで十分。あなたたちは此処から離れて―――すぐ終わらせるから」

「……ああ。そうするしか、ねえしな」

 ゼツは断ろうと言葉を返したかったが、現状、アルヴァに対し確実なダメージを与えられるのは凛那しかいない。
 此処にいる自分たちは返って足を引っ張ってしまう。助力の気持ちを押さえ、ゼツは他の仲間に目配せする。
 シンクも銃を既に下ろし、負傷したヴァイをヘカテーと共に支えていた。ラクラもやれやれと嘆息するように武器を下ろし、伽藍を助け起こして引き下がった。
 そうして、彼らが此処から出口の方へ引き下がっていくのをアルヴァは竜らに追撃の命令を下したかった。

「私の目的は唯一つだ」

 それを阻むように茜に燃える刃をアルヴァへと向ける。

「それを―――『混沌神星核』が必要なのだ。『もう一人の私のため』に」

「………ソウ………」

 すると、2体の竜の姿が光に包まれていく。元々は彼女の力で創った分け身、彼女へ戻ることでアルヴァの力がより増大する事を凛那は理解していた。
 彼女へ還元した力を取り戻し、アルヴァは深く息を零す。その吐息と同時にあふれ出すのは力の脈動、鼓動。

「―――ナラバ、力尽クデ手ニ入レテ魅セヨッ!!」

 衣が大翼のように大きく広がるや、内なる茜色の銀河から無数の光雨が降り注いだ。
 その光の雨が降り注ぐと同時に、凛那も地面を蹴り飛ばして駆け出す。『凛那』を力強く握り締め、全霊の力を注ぐ。

「ハァァァァッ!!!」

 そして、大きく跳躍するや至近のアルヴァに茜に燃え盛る一刀を降りおろす。

「――――――」

 アルヴァもその一刀を迎え撃つように同時に衣のうちより、現れた剣を手に取り、そして、双方が全力で繰り出した茜の剣閃が交差した。




 出口へ引き下がったゼツたちが瞬間に途轍もない轟音に振り返る。
 その轟音は静まり、彼らはじっと出口の方を見つめ、彼女が戻ることを信じて待つ。
 わずか数分、誰も口を開かずに、僅かで長い時間を感じる中で、片手にあの『混沌神星核』の鉱石を抱えて、姿を現した凛那を。

「凛那!」

 その姿に真っ先に駆け込んだのはヴァイであった。痛みを忘れたように全速力で駆け寄り、飛び込むように抱きつく。
 凛那はそれに確りと受け止めるように抱きとめ、苦笑と共に彼女の頭をなでおろす。

「ふふ、直ぐ終わらせるって言っただろう?」

「ごめんね…やっぱり私足を引っ張ちゃった…」

「気にする事はないさ。お陰で無駄な血も流さずにすんだ」

 穏やかにラクラは落ち込む彼女らに言い寄る。その傍に居たフェンデルも同意の頷きと共に言う。

「そうね。今回はヴァイと凛那のお陰よ。―――勝ったのよね?」

 念頭に確認する彼女の問いかけに、凛那は小さく頷き返すだけだった。
 フェンデルは深く問うまでも無く適当に、

「そう、お疲れ様」

 と一言言葉を添えて微笑んだ。そして、伽藍が歩み寄ると凛那は彼に『混沌神星核』を渡す。

「これさえあれば、直せるのだな?」

「ああ。勿論だ」

 確固たる言葉と表情で受け取り、凛那は穏やかに頷き返した。
 
「さて。もうこれ以上長居は無用だな。さっさと『ビフロンス』に戻ろうか!」

 ゼツの切り上げの言葉にそれぞれ同意し、シンクが質問を投げかける。

「此処から元の世界に戻れますか?」

「―――ああ、できるぜ」

 ゼツが手に持つ黒剣――『アルトセルク』を虚空へ突きつけ、力を込めるや空間を裂いて扉が開かれる。
 『異端の回廊』、反剣士の持つ異世界を渡り歩くため、反剣の力で作り上げた異空間に道を作り出す能力。
 混沌世界の入り口や道中のような様々な世界の情報の断片が綯交ぜになった場所では異端の回廊の力が発揮されず、ゆがんでしまう危険性があった。
 だが、此処深遠部とも言うべき場所はその断片が一つにまとめられ、安定された場所なら発揮され、安心して開くことが出来た。

「よし、さあ。帰ろうか」

 そう言って伽藍たちは順番に開いた回廊の中へと入って行き、最後に凛那が振り返り、混沌世界の景色を見据えた。
 そうして、彼女は景色を胸に仕舞い込んでさっさと扉の中に入った。全員が入った事で扉は閉ざされ、裂いた空間も元に戻った。
 すると、寂寥となった深遠部の入り口からゆっくりとアルヴァがその姿を現したのだった。

「……帰ッテ行ッタカ……」

 何処か寂しげに呟きいた彼女の神体には深々と斬撃の痕が走っていたが、傷は命を奪う致命のものではなくなっていた。
 遠くへ旅立った彼女を想う様に、アルヴァは
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