―――逃げろ!! 急げ!!
―――早くっ!!
銃と弓を手に前を走る二人の声、後ろから自分達を追いかける沢山の兵士。
―――いかん、《破魔石》の暴走だ!! 早く退け!!
迷い込んだ研究所での知られざる実験。部屋に響く大きな爆発。
―――いや! 一人だけ逃げるなんて絶対にいやぁ!
―――俺はこの物語の主人公だぞ? 主人公は絶対に助かるのさ。
闇の入口に呑まれる自分に、彼は崩れゆく通路の中で笑いかける。
彼らと出会ってから、ずっと一緒だった。機械はもちろん、さまざまな戦い方、秘境で何日も過ごしたし、時には思いもよらぬ冒険だってした。
だけど、別れの時は何も出来なかった。たった一つの魔石欲しさに、恩人達を巻き込んだ。一緒に故郷に逃げる事も出来たのに、見てるしか出来なかった。
昔と同じだ。無力だったせいで、闇に呑まれる家族を助けられなかった。リクとリリィの事だって、ソラやスピカと同じようにどうする事も出来ないまま見てるだけだった。
何も出来ない、何も変わらない。そんなの嫌。力が欲しい、力が…!
―――力が欲しいか? 餓えし者よ。
「――ッ!!」
頭に響いた声に、一気に眠りが払われる。
すぐにオパールが起き上って周りを見回すと家具のない簡素な室内で、自分はベットに横になっている。
休憩室にと当てられたモノマキアの一室だと思いだし、少しだけ精神が落ち着いた。
「はぁ…はぁ…! なに、今の…!」
ベットの上で頭を押さえ、悪夢を追い返そうとする。
それと同時に、軽い眩暈を起こした。
「っあ〜、まだ頭がクラクラする…」
長時間画面を見て起こす特有の眩暈が抜けず、再びベットに横になる。
若干目も痛むので俯せになって、目や精神の疲れを取る。
やがて痛みも和らぐと、寝返りを打って天井を見上げた。
「羨ましいな…こんな船作れるなんて」
素直な感想と共に、オパールの脳裏にシエラ号を思い浮かべる。
シドと共に設計から開発まで携わったグミシップは自信作と言っても良かった。
だが、この船は自分達が作り上げた船よりも更に上を行っている。
「あたし達が作ったグミシップも、結局はマーリン様のおかげで異空の海を飛べてる…――駄目だなー、全然届いてないよあたし…」
どうにか笑みを溢すが、どうしても悲しみが滲み出てしまう。
世界の壁がある以上、普通のグミシップでは他のワールドに降り立つ事は出来ない。その為、世界を渡る事の出来るマーリンに頼んでグミシップに世界を渡れるように魔法をかけて貰ったのだ。
オパールは横になったままポーチに手を入れる。そこから取り出したのは、掌サイズの機械に埋め込まれた青く不気味に光る魔石だった。
「バルフレア、フラン、ノノ…――世界って、本当に広いんだね。終着点に着いたかと思ったら、実際はまだまだ広がってた」
今は遠くにいる恩人に語りながら、魔石を上に掲げる。
鈍く光る魔石の光を眺め、さっきの夢を思い出す。
「この事件が終わって、元の世界に戻って、今回の経験生かしてまたグミシップで旅をして…そしたら、逢えるんだよね…?」
「これは珍しい石じゃな」
「うひゃあぁぁ!!?」
何の予兆も無くかけられた声に、感傷に浸っていたオパールは魚のように飛び跳ねる。
同時に手に持ってた魔石を手放してしまうが、すぐにベットに落ちる前に空中でキャッチする。
そのまま声の主に目を向けると、そこにはベルフェゴルがいた。
「すまないの、驚かせて。ふむ…魔力を吸収しその身に蓄える石か」
「分かるの?」
「見ただけで、物質に関する物は分かる。で、これは一体?」
「《破魔石》って言うらしいの…人工で作られたものだけどね」
ベルフェゴルに教えると、手の中にある魔石―――破魔石を見る。
同じようにベルフェゴルも魔石を見ると、興味が湧いたのか手を伸ばした。
「ほう、少し拝見を…」
「あ、待って――!」
すぐにオパールが魔石を引っ込めようとするが、ベルフェゴルの手が早かった。
彼が魔石を入れている機械へと手を触れた瞬間、力が急激に魔石へと吸い取られ始める。
「ぬうっ…!?」
「早く放してっ!!」
「どうしたんです!?」
悲鳴に近い叫びを上げてベルフェゴルから魔石から引き剥がす。
と、騒ぎを聞きつけたのか一人の青年―――レギオンが部屋の中へと駆け込むと、ベルフェゴルは驚きを露わにしながらオパールの手にある魔石を見た。
「驚いた…触れた者の魔力を無造作に奪い取るのか」
「魔力を奪い取る石、ですか…? それなら、どうしてあなたは?」
「あー、あたし皆の言う魔力なんて持ってないの。持ってたとしても魔法も扱えない程微弱だから…こうして触っても反
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