青い海と幾つもの島がある南国の世界―――ディスティニーアイランド。
昼過ぎなのか太陽が高く昇っている青空の下で、海に近い場所に異空の回廊の入口が現れる。
その中から、イオンとペルセが姿を現した。
「やっと着いたね」
「うん、回廊の中でシャオとクウさんが逸れた時は焦ったけど」
ペルセとイオンがホッと一息吐きながら、温かく吹く風に髪を靡かせる。
その後ろから、シャオとクウも何処か疲れた顔で回廊の中から現れた。
「あはは…ごめんなさーい」
「シャオが悪い訳じゃないだろ。それにこうして合流出来たんだから、もうその話は止めようぜ」
シャオが苦笑いすると、居心地が悪くなるのを感じてかクウは話を切り上げようとする。
ここに来る途中の事だ。回廊の中を歩いていた時、突然出来た歪みにクウとシャオは呑み込まれ二人と逸れてしまったのだ。
そうして別の世界に飛ばされた際、シャオの友達と会ったり別世界のゼアノートの陰謀に巻き込まれて死にかけたりといろいろとあったが、どうにかこちら側に戻って来る事が出来た。
さっさとクウが話を終わらせようとするので、イオンとペルセはこれ以上何も言わずに先に進もうと歩き出す。
二人が離れていくのを見ていると、隣に居たシャオが不安そうにクウを見上げた。
「師匠、本当に大丈夫? 結構ボロボロだったのに…」
「何回も聞くなよ。ちゃんと回復もして傷も治ってる。それより、お前はどうなんだ?」
「ボクは平気。軽く気を失っただけだし、痺れも取れてるから…師匠、本当に何かあったら遠慮なく言ってよね!」
最後にそう言って、シャオは二人の後を追いかける。
こうしてクウは一人きりになると、右腕の裾を捲ってシルビアの刻印を見つめた。
「世界を揺るがす力、か…」
回廊の歪みに巻き込まれ、辿り着いた世界での事。自分達だけでなく、同じように巻き込まれたある二人組を利用しようとした敵となる人物の言葉が蘇る。
一抹の不安が過るが、すぐにクウは首を振って追い払った。
「力をどう使おうが俺の勝手だ…あんな言葉、真に受けてたまるか」
シャオ、そして彼の友達である少女を盾にして持ちかけた一つの計画。馬鹿げた話だが…相手の目は本気だった。
言い換えてみれば、別世界の者すらも求める程の力を自分は持っている。
世界の中心、キングダムハーツへと続く“鍵”―――【χブレード】を作る力を。
「この力、俺はちゃんとシルビアの為に使えるのか…?」
「ししょーう!!」
呼ばれた声に顔を上げると、少し先の道でシャオが大きく手を振っている。イオンとペルセも足を止めてこちらを見ている。
自分を待つ三人に気が付き、クウは笑みを浮かべて歩き出した。
あの世界で死闘を繰り広げた、緑髪の青年を思い浮かべながら。
「覚えとけ、電撃野郎――俺は俺の道を行く…ただ、それだけだ」
その後、海岸を後にした四人はイオンの家を目指して、海沿いの道を歩きながら談笑していた。
「にしても、またこの世界に来る事になるとはな…」
「クウさんは、来た事あるんですか?」
「まあな…と言っても、『あっちの世界』だけど」
「師匠、やっぱりあっちの世界と一緒だった?」
「あ〜…俺達、休憩も兼ねてあそこに見える小島に居たんだ。だから、こっちの方には来てないんだよ」
「そうなんですか」
ペルセとシャオがクウに質問して話をしている中、イオンは一人黙ったまま考え込んでいた。
(どうしよう…! 成り行きな形だけど、クウさんを僕の父さん達と接触させるのって実はマズイ事じゃ…!?)
シャオはまだ良いとして、別世界のクウは言って見れば過去の人間。しかも、ソラやカイリとは仲間と言う関係だ。
一見すればおちゃらけて見えるが、意外にも鋭い洞察力を持っている。もし出会ってしまったら、息子だと隠し通せるか自信はない。下手をすれば、彼らの未来に影響が出る可能性が高まってしまうだろう。
「イオン先輩、せーんーぱいっ!」
イオンが黙々と考え込んでいると、耳元で名前を呼ばれた。
慌てて振り向くと、いつの間にかシャオがすぐ傍でこちらを見ている。
しかし、軽い口調とは裏腹に何処か真剣な目をしている。
「シャオ…!」
「イオン先輩。マズイって考えてるでしょ? 師匠を家族に会わせるの」
「よく分かったね…」
「そりゃあね。ここはボクに任せてよ!」
自信ありげにそう言うと、駆け足で先に進む。
すると、目の前にある左右に分かれる道の所でシャオは右の方に進んでいった。
「あ、シャオ! そっちの道は違う――!」
「おねーさん、こんにちはー!」
イオンが引き戻そうとした瞬間、シャオは先の方からやって来た女性の前で止まって元気よく挨拶する。
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