ビフロンス城下町、アスラ・ロッテの工房にて。
混沌世界で手に入れた『混沌神星核』、エンとの戦いで折れた明王凛那、炎産霊神の火の力、そして、伽藍の技術。
それらの条件をクリアし、修繕ではない更なる強化改造を行うことになった。
「悪いけど、俺と炎産霊神だけで取り掛かる。アスラさんたちは此処で待ってくれるか?」
伽藍の言葉に、ロッテは残念そうに笑い、夫へ催促を促す。
「はっは! 仕方ないさね。アンタ、案内してやんな」
「ああ。ついてきてくれ」
伽藍はアスラに案内され、店内の裏手から出てすぐの場所にその工房があった。
入った工房は武器だけはなく、食器なども作ることから多数の道具や設備が揃っていた。
アスラは彼に武器用の設備の方へ案内し、彼に話しかける。
「――一通りの準備はこっちでも用意したつもりだ。あとは、完成が楽しみだよ」
「礼を言う。もちろん、楽しみに待っていてくれ」
「じゃあ、失礼するよ」
そういって、店の方へと戻っていった。既に伽藍の漂う気配が職人の持つソレであると察したのだ。
残るは彼の手で完成されるのを期待して待つしかない。アスラは小さく笑んで歩みを、店の方へと戻っていった。
「――さて、始めるとしようか」
アスラが工房から出て、伽藍は口火を切る。
さっさと衣装を作業着へと着替え、道具や、設備を確認し終える。
『こうして伽藍と一緒に作業するのは2度目だね』
「そうだな。まあ、『こっちのお前』とは初めてだがな」
炎産霊神も姿を顕し、緊張した空気を和らげるように彼へと話しかける。
その言葉に伽藍は笑みを返し、折れた凛那の作業を始めたのだった。
そうして店内では無轟、凛那、イリアドゥスが完成を待つために用意された椅子に座り、時間をつぶしていた。
用意された茶菓子などを頂きながら、店主夫婦と雑談を始めていた。
「へえ、無轟さん。奥さんと子供がいるのかい!」
「ああ…妻と子の写真だが、見るか?」
「おお…! これは別嬪な女性―――いだだっ、ごめんなさい!!」
「私も見せてくださる?」
「……」
無轟が取り出した写真をアスラが見て、妻の鏡華を鼻の下を伸ばして称賛した所をロッテが拳骨で制裁し、
興味深く写真に写っている幼い神無を見て、あらあら、とイリアドゥスは笑みを小さく零し、
無言のまま、凛那はイリアドゥスと同様に写真を覗き込んでいた。
そんな様子に無轟はやれやれと苦笑交じりに眺めてから、伽藍たちのいる工房の方角へ視線を向け、胸の内で祈った。
(あとは伽藍と炎産霊神の頑張り次第か。座してゆっくり待とう………頼んだぞ)
一方、イオンらの行動に便乗したクウをとり逃がしてしまった神月とオルガはしぶしぶ修練場へ帰る。
その道中では仕損じた事への苛立ちを晴らそうと、
「必ず殺す…」
「必ず焦がす、灰も残してやるか…」
と物騒な呪詛を吐き捨てているが、これはあくまでも怒りのボルテージを下げるための自己暗示的なものだから問題はない。
そして、一先ず口噤んでから二人は修練場の休憩室へ戻ってきた。
「――ただいま」
「あ……お、おかえり」
戻ってきた彼らへまだ顔の赤い紗那が不安を隠すように健気に声をかけた。
そんな彼女に神月は申し訳ない気持ちでいると、
「…お前も『してもらえば』いいだけだろう?」
「うるせえぇっ!」
「じゃあ、あと……で?」
「頼むからノリ気にならないでくれ!」
血色に深いワインを注いだグラスを片手にウラドの妙な助言を怒声で切り捨て、紗那の奇妙予想外なノリの良さに悲鳴で返す。
そんなやり取りを戻ったオルガとアーファは呆れながら、見ていると、
「あいつらもいい具合のバカップルだな」
「そうよねー…」
そう言って見据えるアーファの視線の色は呆れの他の色も混ざっていた。どこか憧れのような、羨望のような。
オルガはあえてその視線を無視して、自分へと用意された弁当を開ける。しかし、その中身を見て、唖然とする。
「…………」
弁当は二段式のもの。一段目が梅干し入りの白米をつめたシンプルなご飯、二段目が様々なおかずを詰めたものだった。
中身はハンバーグや、ウィンナー、卵焼きにプチトマトが入っていた。まじまじと見つめているオルガに気づいたアーファが不機嫌に、不貞腐れたようにいう。
「な、何よ! また『ダークマター』とか『ハートレスの黒焼き』とかいうつもりだったんでしょう? ………ちゃんと努力する気は……あ、あるんだから」
アーファは料理をすること自体不慣れなところが多い。それなのに暴走して、冒涜的な何かを作ってはそれを食わされ、死にかける。
それが原因で逆に自分の方が家庭的な技術を身に着け
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