一方、その様子をウラドは横になり、気だるげに見ていた。
それは彼女は吸血鬼ながらも日が昇っている間は行動できるが、本来の力を半減してしまう為だった。
鍛錬を始めた彼らの様子を、その眼差しで見据え、あきれ果てたように言った。
「……暇だからとはいえ、毎日鍛錬、鍛錬、鍛錬……脳みそまで筋肉じゃあないだろうな?」
「もう、ウラドちゃん。そんなこと言ってあげないの」
ウラドに諭すように注意する女性――ツヴァイが苦笑いのまま歩み寄り、その傍へと座る。
城で昼食を終え、娘のヴァイの怪我の具合を伺い、次に神月の居る修練場へとやって来た。
彼女は身を小さく動き、ツヴァイを一瞥するやまた振り戻って、納得していない不機嫌な様子で言う。
「ちゃん? お前よりも何百年も生きているのに?」
「ふふ。でも、見た目は子供でしょう?」
まだまだ子供ね、と内心で苦笑しながらもその頭を撫でて、ツヴァイは話を続ける。
「みんな、じっとしていられないのよ。カルマは今でも何かを目論んで動いているのではないか。
彼女と戦うその日はいつなのか、自分たちは彼女に勝てるのだろうか―――ってね」
「……」
その気持ちの吐露を静かに耳を傾けることで話の続きを促す。
そんな姿勢に、ツヴァイは続けて話す。
「…私は戦うってここまで来たけど、やっぱり実力不足だなーって実感しちゃうのよね」
此処へと集ってきた者たち―――心剣士、反剣士、永遠剣士やその仲間たち、半神、と綺羅星のような将星に眩さを覚えた。
戦う覚悟だけで来てしまった自分がとても不安になっていく。そう、感じていた。
「まあ、情けない話だけど」
内に在った劣情を一通り吐き、自嘲の笑みを零して話を切り上げようと一息ついた。
彼らの喧騒に包まれ、二人は沈黙する。ツヴァイは内心、申し訳ないと思って口火を切ろうとする。
「……いえ。それはない」
「?」
「意志あるものに、道はある。それが誰であろうとも」
ゆっくりと身を起こし、ウラドは真剣な表情と言葉で言い返した。その言葉に、ツヴァイは自嘲から安堵の笑みを返す。
「諭し返されちゃうとはね、ふふふっ」
再び彼女の頭を撫で、笑顔をこぼす。ウラドの凛とした表情が小さく崩れ、満更でもない喜びの微笑を浮かべる。
それを許しているウラドはそのまま撫でられ、ツヴァイは彼らの様子を眺めていた。
城内の庭園に用意されたテラスにて、金髪の女性――半神キサラ、黒茶の青年――アルビノーレがいた。
二人がこうして一緒にいるのは他でもないアルビノーレの誘いを受け、キサラが応じたのだ。
そこで彼の口から彼個人的な相談を聞いていた。その内容は聖域奪還戦以降の、憂鬱などの無気力の事態であった。
「あれから数日……心に穴が空いた気分だよ―――皆がカルマの戦いに心血を注ぐいでいるのに」
「仕方ないわ。今はゆっくり休めばいいと思うわ」
天井を仰ぎ、アルビノーレの自嘲すぎた笑みを浮かべる。に優しく宥める様に言う。
その状態の原因は明白だった。それは対の半神であったディザイアの戦死。
ディザイアとアルビノーレの仲は複雑ながらも、互いに信頼しあっていた。
彼女へ相談したのも互いに対の半神を喪った者同士と、キサラは内心思いながらも彼と親身に接している。
「それにしても、キサラこそ特に異変とかはないのか?」
彼の話が一先ず終わり、アルビノーレは彼女へと心配げに問いかける。
「え?」
「いや…元々が光を司る半神、それなのにも関わらず…闇の半神の力を取り込んだのだろう?」
「ああ…そうねえ」
自身の唇に指を添え、思案する姿勢を取り、その質問に適切な言葉を考える。
対極の力を取り込み、心身に影響や問題があるか不安ではあった。決戦後、イリアドゥスに相談した。
自身の記憶を読み込ませ、その経緯を彼女ならではの速さで理解し、淡々と話し出す。
「なるほど、確かに『異なる属性を取り込んだ』だけなら不安も抱くわね」
「はい……―――え?」
気になる一言だった。取り込んだだけ、という言葉に。
その不安の様相を気にする事無く母は続ける。
「あなたがダークネスと戦い、あなたは最後に『一撃』を受けて倒れた。その一撃が切っ掛け。
今に至るまでずっと内側に宿り続けた因子が今へ至った時、あなたは真に昇化した」
「つまり――」
「つまり、あなたは光の半神ではない。『光と闇の半神』となったのよ」
言い放たれた真実を、キサラは瞠目としながらも確りと受け止めた。戸惑いは確信へ。
それは、あの奪還戦の時に、あの瞬間に、既に受け入れていたのだから。
「―――っ」
不意に涙がキサラから流れる。
「大丈夫?」
「は
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