先の用事から森から戻ったシンメイ、ヴァイロン、紫苑らは城門前で着地した。
紫苑は改めて城を仰ぐ。まさしく因果の交叉路。交じり、交えて、世界をなす。
人の姿に戻ったヴァイロンは唐突に二人へと振り向き、端然と言う。
「―――こうして、おまえ達と巡り合えてよかった。そう、思うよ」
「なんじゃ、急に?」
思わぬ一言にシンメイはからかうように言い返したが、どこかはにかんでいる。
一方の紫苑は頷きと共に、満足した笑みで言った。
「再び、僕として歩き始めることに、僕は嬉しさを感じる。それだけだよ。先に戻るよ。ちょっと眠たいし」
そう言い切って、彼は城へと歩き出した。元気に歩き始めたその姿にシンメイは違和感を、ヴァイロンは既視感を覚えた。
その気風は、かつての勇者然としたそれであった。異なる彼であっても、纏う気風は似ているのだなと彼女は思わず微笑みを浮かべる。
「……ふふ」
「なーに、笑ってんだか」
ヴァイロンらの背後から気配を現した男――ゼロボロスが彼女の微笑に呆れとからかいの混ざった声をかけた。
その一声に、ビクリと大きく反応し、素早く振り返る。一方のシンメイはゆっくりと振り向き、現れた彼へと口を開く。
「城に戻っておらんかったのか?」
自分らより先に城へと飛び去っていった彼が自分たちの真後ろに姿を現したこと、一応の察しはついたがそれでもと詰問する。
問い詰められたゼロボロスは適当に話を逸らそうと考えていたが、ヴァイロンの鋭い視線に降参する。
だから、本意のままに口走る。
「まあ、アイツと一緒にはまだ『なれねえ』んだよ」
「正直な奴だな」
彼に不意に話しかけられたヴァイロンは機嫌を損ねたのか一層と険しい表情と声で言い返す。
やっぱりな、とゼロボロスは至って気にしないで笑い飛ばす。
「すぐに和解できればお互い苦労しねーよ」
異なる世界、因果で結ばれた彼と自分。英雄と悪神。討つものと討たれたもの。
悲劇を自分の手で生み出し、彼の全てを無茶苦茶にし、彼の全てを壊しさった。
そんな自分と彼がたった一度の戦いと施しだけで許しあえるほどお互いに聖人君子でもない。
「それもそうじゃな」
ゼロボロスの吐露にシンメイが苦笑紛れに同意する。ヴァイロンも険しい表情に同感の意を示している。
「――そういえば、何故…紫苑の中に在る『ゼロボロス(おまえ)』が限界を感じているのをきづいたのだ?」
「最初からだよ。この世界で出会って直ぐにな」
キッパリ言い切り、ゼロボロスはやれやれと一息吐く。
その話題はもう終いだ―――そう言わんばかりに気だるげな足取りで城へと戻っていく。
3人が城の回廊に入るや、先頭を歩いていたゼロボロスの足取りが止まった。
「げ」
「……まったく」
彼の前に居る人物――回廊の壁に凭れかかって待っていた紫苑――が呆れたようにため息混じりに口を開いた。
「やっぱり先に戻ったフリをして後から戻ろうとしたか…少しは信用したらどうだ」
「お、おう…そうだな」
さばさばした気風であるゼロボロスもどこか歯切れが悪い。
そんな様子を見かねた(面白くて仕様が無い)シンメイが割ってはいる。
「なんなら一緒に飯を食そう。同じ釜のなんとやらじゃ」
「ああ、それがいいな」
ちらっとシンメイの視線を察したヴァイロンがわざとらしくおなかを擦りながらに言う。
その言葉に紫苑も頷き、
「では行きましょう。まだ昼食が間に合うはずですし」
「ほれ、いくぞ!」
シンメイはいよいよ歩き出した紫苑の隣にゼロボロスを蹴飛ばし、一緒に歩かせた。
踏鞴を踏みかけたゼロボロスは隣に居る彼の視線を表情を逸らし、それでも同行する。
一緒に歩く二人を見たヴァイロンは決してなかったであろう光景を感慨深く思いながら、佇む。
「ヴァイロン、なにをボサっとしておる。いくぞ?」
「…ああ」
実は一緒に先へ進んだ二人の背を見ていたシンメイに手を引っ張られ、ヴァイロンは笑みを零しつつ、二人は彼らの後を追う。
少しの時間が過ぎ、シンクは昼食を終え、用意された自室へと戻り、愛銃のメンテナンスを行っていた。
汚れを防ぐ専用のシートを敷き、銃の部品や道具を並べ置き、座して彼は作業を始めた。
そうして、傍にはヘカテーが不思議そうに見ながら同席していた。
しかし、彼女にこうしてメンテナンスをしている所を見られるのは実は、今回が初めてかもしれないとふと思った。
「そういえば、こうして見られるのは初めてだね」
そう言いながらも手を止めずにシンクは口を開く。彼女も視線を彼の愛銃――『開闢の使徒(アルファ)』に視線を向けたまま頷く。
「うん。興味はあったけど…邪魔しちゃいけないと思
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