「…あんな失礼な事言えば誰でも不快な気持ちになるのは解っていただろう。シムルグはからかったのはいいが、ブレイズ。お前はまだぶり返したか?」
そう問い詰める様に、鋭く怜悧に言い放ったアレスティアは二人の様子を見た。
シムルグは飄々としているが申し訳ない様子でいるが、ブレイズはふんぞり返るようにそっぽを向いた。
姉として、妹二人の面倒な性格は熟知している。
半神シムルグはビラコチャ同様、世界を巡って人の世界を学び、理解はある。風のように気ままな、飄々とした性格は無邪気と違って性質が悪い。
半神ブレイズは自分ら半神こそ、高位と自負を持ち、人を見下す。炎のように荒く、他者に厳しい気難すぎる性格は他者を気遣う訳が無い。
(…また、神無に灸でも据えてもらうか)
ブレイズの対応は彼女を打ち負かした神無が特効薬であった(イリアドゥスに叱ってもらう、は特効薬を通り過ぎて劇薬のため無理)。
シムルグは注意するだけで十分だった。人を理解しているし、あくまでもからかっているだけだ。本気で責めも、何もしない。
「後で、何か詫びの品でも用意しないとな。イリシア、品定めを頼んだわ」
「えっ!? ……わかりました」
末妹たる半神イリシアは驚き、涙目になりながら、拒否し切れずに了承する。
『――ほーーんと、チェルとかがいなくて良かったわね』
「む」
すると、聞き覚えるのある女性の声が聞こえ、その元へ視線を向けると淡い銀の毛並みをした猫がやって来た。
猫は光を帯びて、姿を変える。猫は女性にかわって―――彼らはやっと正体を理解した。
イヴ。
シンクらと同じ世界の住人であり、彼女もシンクらの肉親ではないが、彼らの保護者な立場であった。
イヴは肩を竦めて、心底呆れたように言う。
「チェルが居たら、本気で銃弾の雨が降るわよ? 少なくとも、この城を蜂の巣にするくらいには暴れるでしょうね」
「……その事は本気で申し訳ない。不躾なことをした」
とりあえずの対応を、アレスティアが請け負った。イリシアでは不安、シムルグでは面倒、ブレイズは火に油を注ぐレベルじゃないくらいにだめだからだ。
実の所、イヴはシンクらが部屋を出た所から後ろからついてきていたのだ。ついていくと、鉢合わせた半神らに口酸っぱく責められ、落ち込む彼と怒りを堪える彼女を見かけた。
糸を巻いて床に叩き付けてやろうかと本気で考えたが、彼女らが半神、しかも能力の高い4人である事に実力差を抱き、気付かれないように伺うことにした(アレスティアの性格をある程度知っている為この選択をした)。
「本当に、よ。せっかくお互いに仲良くなりはじめたんだから、些細な事で綻びを作っちゃいけないわよ」
「返す言葉も無い。後で改めて侘びをするので…できればこの事は他言無用に」
アレスティアの対応に、ほか3人は口を出さなかった――否、出せなかった。漂う雰囲気はいたって平静だが、ひしひしと怒りが宿っている。
その怒りはブレイズとシムルグの失言、自分の失態への怒りである。
イヴも気ままな性格である。いつまでもこの件を引っ張るつもりは毛頭無いが、彼らの保護者として最後に、念入りの注意を促す。
「とりあえずはいいわ。気をつけてくれれば何より。――――さっき謝ってくれたからいいけど、詫びの品ならお菓子でいいわよ。シンクもヘカテーも好物だから」
「! ああ。すまない…」
イヴの意気に、深く感謝の意を声にもらし、身を翻す。
「―――行くぞ、城下町に確か菓子屋があった筈だ」
「い、今からだと…二人と会う可能性が…」
「シムルグ」
「はいはい。さくっと城下町の菓子屋に飛ばせばいいんでしょ?」
「お菓子は…どういう系がいいんだ……?」」
アレスティアの言葉に、イリシアが慌てて、シムルグが肩を竦め、ブレイズが生真面目にイヴに確認する。
「んー、基本的に何でもいいわよー。まだ、そういうところはあの二人も子どもだし」
「解った。失礼する」
そう言って4人は慌しく走り出し、イヴはそんな何だかんだ律儀な、お人好しな彼女らを手を振って見送った。
城門を出て、シンクとヘカテーは陽光の下、城下町へ向かっている。先の一件から彼女は彼の手を繋ぎっ放し、引っ張りっ放しで歩みを止めない。
「ヘカテー…怒ってる?」
「怒るに…決まってる」
歩を緩めずに、簡潔に述べたそれは紛れも無い本心の塊だった。怒りを察していたが、暴発しなかった事を褒めたかった。
矢継ぎ早にヘカテーはシンクに問いかけた。
「シンクは……怒らないの? 何もしていないのに、唯通りかかって、いきなり怒られるって……おかしいと思わないの?」
「そう言われると……困るね」
シンク自身も唐突に責められた事には不可
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