誰もいない大部屋でウィドは一人、ルキルの傍に座って考え込んでいた。
「心の剣…私自身の、心…」
王羅達の心剣についての解説を思い出しながら、胸に手を当てる。
(自分でその力に目覚めるのを待つよりは、無理やり誰かに抜いて貰って…いや、駄目だ)
アトスから教えて貰った反剣を思い出すが、すぐに首を振る。
そうして、このセカイに来る前に起こったクウとの戦いを思い出す。
(あの時、あいつに一撃を決めれたのは……姉さんに気を取られていたおかげ。今の状態で剣を握っても、勝てるかどうか分からない)
戦いの中で自分が優勢だった時、相手は捕らわれていたスピカの事で心が揺らいでいた。しかし、その思いを振り切った後は一気に逆転されてしまった。
それに人越しに聞いた話では、今のクウはあの時よりも強くなろうと修行している。ここで心剣や反剣を手にしたとしても、相手も決闘した時よりも強くなっているのは確実だろう。
(反剣ならば、心剣と言う物を喰らえば短期間で強くなれるが…リスクが大きすぎる)
他者を頼る事で引き出せる剣、さまざまな剣を喰らう事で強くなる事を考えれば、それが得策と言うもの。
しかし、喰らう際に起こる副作用である激痛の事を考えればあまり気が進まない。まさにハイリスクハイリターンと言った所だろう。
「――…」
「ルキル!?」
微かにシーツが動いた音がして、ウィドは顔を上げてルキルを見る。
だが、ルキルは相も変わらずベットで眠ったままだった。
「…気のせい、ですか」
目覚めたと言う期待を捨て、すぐにルキルから視線を逸らすウィド。
そして、先程の考えを思い返しながら再び胸に手を当てる。
(あいつは姉さんを見捨てた、そしてエンと同じ存在…許せない、許す気すらない。なのに…どうして、あの時の王羅の言葉に躊躇った…?)
ウィドは気づかない。憎しみの中に残る僅かな感情、それが良心である事に。
「ずっとあの調子ですか…」
「うむ…」
ウィドのいる部屋の外では、アクアとビラコチャが扉の隙間から部屋の中を覗き見して話をしている。その二人の隣にはテラと王羅もいる。
今も尚他人を拒絶するウィド、未だに目覚めぬルキルにテラも不安を覚えていると足音が響く。
見ると、モノマキアにいた筈のオパールがこちらに向かって歩いていた。
「オパール、何でここに? データの解析をしてたんじゃ?」
「そっちはバグを直すプログラム作って動かしてるの。ちょっと休憩がてらにウィドの様子を見に来たんだけど…どう? まだ怒ってる?」
テラに答えながらオパールは四人に聞くと、全員は黙って首を横に振る。
その意味が伝わったようで悲しそうに顔を俯かせると、今度はアクアが質問した。
「でも、どうしてウィドの様子を?」
「シルビアのデータ、一部分だけど解析できたの。しかも、エン達が拠点にしてるであろう世界についても」
「本当ですか!?」
思わぬ情報源に王羅が喰い付くが、逆に困ったような表情を浮かべる。
「ただ…その内容、暗号になってるのよ。万が一を考えての事なんだろうけど…とりあえず、その資料はベルフェゴルとキルレストに渡して置いたから。興味あるんなら、その二人に声かけるといいわよ」
「それで、ここに来た理由は?」
ようやくビラコチャが本題を訪ねると、オパールは迷いを浮かべながらも口を開いた。
「実はね…その暗号ともう一つ、ウィドに関する物が書かれた文章が…」
「――うあああああああっ!!!」
突然部屋の中から聞こえた叫び声に、オパールだけでなく4人も一斉に扉に目を向けた。
「今の声!?」
「ルキル!?」
聞き覚えのある声にオパールが戸惑う中、アクアが扉を開く。
そうして目に飛び込んだのは、何が起きたのか分からず立ったまま固まるウィド。
そして――ベットの中で苦しみながら悲鳴を上げるルキルの姿だった。
場所は変わり、ディスティニーアイランドの島にある海岸。
太陽も大分傾き夕暮れに変わろうとする海と空を、虚ろな目でイオンがぼんやりと見ていた。
「ここにいたんだね」
そんな時、イオンの後ろで声がかけられる。
ゆっくりと振り返ると、笑顔でシャオがこちらに近づきながら歩いていた。
「シャオ…」
「探したよ、イオン先輩。ペルセさんと師匠も探してるよ?」
「…君は、どうして僕を“先輩”って呼ぶの?」
「それは、その…ごめんなさい」
ぶっきらぼうな質問に怒ってると勘違いしたのか、すぐにシャオは謝る。
イオンは軽く溜息を吐くと、ようやくシャオへと目を向ける。
自分を探してここまで走って来たのか顔には汗を掻いているし、頭のニット帽も若干寄れている。
「ねえ…シャオ、聞
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