「皆、連れてきたわよ!!」
バンと勢いよく扉を開けると共に、オパールはシーノを部屋の中へと引っ張る。その後ろからカイリだけでなく、同行する事になったヴェンとヴァイも続く。
されるがままにシーノが部屋へ踏み込むと、中にはウィド、テラ、アクア、リク、王羅、ビラコチャが不安げになっている。そんな6人の視線の先には、ベットの上で苦しむルキルがいた。
「うう…ぐぅ、ああぁ…!!」
「ルキルは!? ルキルはどうなるんですか!!」
「落ち着いてよ! 今から調べるから!」
血相を変えて掴みかかるウィドに、シーノは肩を掴んで落ち着かせる。
すぐにシーノはルキルの隣に立つと、彼の額に指先を置く。その様子を見ながら、部屋にいた王羅はビラコチャに耳打ちした。
「あの…彼でいいんですか? レプセキアでの会議の話では、大して力を持っていないのでは?」
「彼は【夢】の半神だ。戦いには向かないが、何かあった際に調べる時には役に立つ」
「【夢】って事は…調べるのは《記憶》ですか」
「半分正解だ。記憶もそうだが…心にも関係があるからの」
そもそも『夢』と言うのは本人の記憶だけでなく、感情も含まれている。眠る間に起こる記憶と心の働きにより、夢が構築されるのだ。
二人がそうこう話していると、調べ終わったのかシーノの表情が変わった。
「これは…!」
「何か分かった――ッ!?」
即座にリクが近づいた時、急に袖を掴まれる。
見ると、苦しんでいた筈のルキルが袖を掴んでいた。
「――お願い、リク…“あたし”を止めて…」
自分の声で無い少女の声と共に、黒髪の少女がルキルと被る様に見えた。
「え…!?」
信じられない光景に思わずリクが目を擦る。
しかし、再び目を開けた時は少女の姿は何処にもなく、袖を掴んでいた手もベットに落ちた。
「今の、誰…?」
どうやら今の現象は他の人にも見えていた様で、カイリだけでなく部屋にいる全員が茫然としている。
その時、廊下に続く扉の向こう側から何やら騒がしい足音が聞こえてきた。
「何だ?」
思わずテラが扉に目を向けた直後だった。
「――入るぞっ!!」
大声と共に、思いっきり扉が蹴破られる。
そこに現れたのは、何とシャオを背負ったクウ、イオン、ペルセの四人だった。
「貴様…!?」
「クウ!? 何でここに来たの!?」
「悪い、文句は後にしてくれ。あんたがシーノだな」
睨みつけるウィドと咎めるアクアを横目に、シーノへと近づくクウ。
自分の力が必要だと見抜き、一つ頷いてクウへと質問した。
「僕に何の用があるの?」
「シャオが急に倒れたんだ。診て貰っていいか?」
「分かった。じゃあ、そこのベットに――」
シーノが空いたベットを指差すのを見て、クウが背中からシャオを降ろす。
だが次の瞬間、ウィドがクウの襟元を掴み上げて壁に叩きつけた。
「っ…!」
「貴様…私から何度大切なモノを奪えば気が済む!?」
今まで溜め込んでいた憎しみが爆発し、何度もクウを壁に叩きつけながら怒鳴り付けるウィド。
後ろでカイリやオパールの悲鳴が小さく上がる中、不意にウィドは顔を俯かせた。
「実の両親に見捨てられ、寒さと戦いながら雪山を彷徨って…! 絶望と厳しい環境の中、心の支えだったのが姉さんとの思い出だけだった…!」
ポツリポツリと肩を震わせながら自身の辛い過去を話すウィドに、クウだけでなく周りの人達も何も言えずに押し黙る。
「そんな時に、私と同じように何もかも失ったルキルと出会った…――守らなければ、助けなければって…この子は私に生きるキッカケを与えてくれたんです!!! それなのに姉さんを捨てて、今度はルキルまで見捨てる気か!? やはり、あなたもエンと同じですね!!! そうやって、全ての世界も見殺しに――!!!」
「消させないっ!!!」
まるで遮る様にクウが大声で叫ぶと、罵倒を浴びせていたウィドの口が止まる。
「シャオも、そいつも消させねぇ!!! 俺の手が届くのなら、もう誰も失わせないっ!!!」
まるで根拠も根も葉もない言葉だが、それでもクウの真剣な眼差しにウィドだけでなく誰もが釘付けになってしまう。
やがてクウはウィドが掴む手を取ってそっと下ろし、申し訳なさそうに頭を下げた。
「今は、時間が無いんだ…少しだけこいつを借りる」
「…勝手にしろっ!!」
無理やりクウの手を振り払うなり、目を合わせまいと背中を向ける。
そうして拒絶の姿勢を見せつつ、ウィドは静かに胸に手を当てた。
(今、胸に起こった得体の知れない感覚…――何だったと言うんだ?)
クウを罵倒していた際に起こった、胸の中でザワリと揺れた不気味な感覚にウィドは不安を覚
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