「ちょっといい?」
城の下層にある大広間。そこで夢の世界に行かないメンバーであるテラ、アクア、ヴェン、カイリが思い思いに過ごしていた時、オパールから声をかけられた。
「あたし達があいつを助けに行ってる間、皆にはこれを作って欲しいの」
そう言うと、数枚のレポートを取り出す。
すぐにアクアが受けとり、残りの人にも見せる様にレポートの内容に目を通した。
「これは…」
「これもデータを解析してて見つけたの。シルビアが残した追加データの一部」
「3つの素材で作られる剣―――【心器】か…」
書いてある内容を見ながら、テラは難しい顔になる。
レポートに書いてあるのは、【心器】と呼ばれる剣の製造方法についてだ。ある3つの素材、鍛冶師にしか分からない専門的な用語。更に仕上げの工程には素材以外の『光』が必要と書かれてある。
少々複雑なレシピに誰もが首を傾げていると、オパールが不安そうに胸を押さえた。
「データの内容だと、本来シルビアを持っていた異世界のウィドはその剣を使っていたらしいの。今は何の武器も持っていないから、この剣を作ってあげたいんだけど…」
「でも、どうしてそんな事を? 今の彼は憎悪によって――」
「分かってる。最初はあたしも危険だって思って言わない事にした」
アクアの言葉を遮ると、オパールも胸の内にある不安を明かす。
ウィドにとって、クウは消したいほど憎い存在。それでも事を起していないのは、武器を失っているからだ。魔法を使わずに剣一つで戦ってきたからこそ、今の彼は何も出来ない無力な存在となっている。
逆を言えば…何かしらの武器を手にしてしまえば、すぐにでもクウに襲い掛かるだろう。
「でも…さっきのクウを見て思ったの。あいつがああして向き合えば、ウィドの憎しみ消えるんじゃないかって…」
ウィドの中にある憎しみが消えない限り、争いの種は生まれる。封じる事が出来たとしても、問題を先送りしただけで根本的な解決にはなってない。
そんな中、最も忌み嫌っているクウがウィドの憎しみを揺らがせたのだ。自分達が頑張れば完全とは行かないが、ある程度憎悪を消す事が出来るかもしれない。
このオパールの考えに、カイリは賛同するように頷いた。
「私も何となく分かるよ、そう言うの」
「とにかく、これは俺達に任せといて!」
「ああ、ここにいる人達にも協力してくれるように頼もう」
「ええ。彼も大事な仲間だもの」
カイリだけでなく、ヴェン、テラ、アクアも協力してくれるようで力強く頷く。
自分と同じように仲間を信じる彼らに、オパールも頷き返した。
「ありがと。あたしもリクと一緒に出来るだけウィドの憎しみを消すようにするわ…じゃ、あたし準備があるから!」
そう言って、オパールは【心器】のレシピを託してその場から去った。
場所は変わり、レイアが休養する部屋。
その扉の前で、クウは緊張した面付きで軽くノックした。
「あ〜…レイア、入るぞ?」
返事を待たず、クウは扉を開けて部屋の中に入る。
そうしてレイアを見ると、ベットから上半身を起こした状態でそっぽを向けている。
何故か顔を合わせようとしないレイアに、心の何処かに痛みを感じつつもクウは近づきながら声をかけた。
「えーと、ごめんな? こんな時間になって…」
「…カ…」
その時、微かにレイアから呟きが聞こえる。
「――バカ…クウさんのバカァァァ!!!」
突然クウを怒鳴るなり振り返ったレイアの顔は、表情を歪ませて睨んでいる。
怒っていると分かり思わずクウが距離を取ると、レイアは涙目になって八つ当たりとばかりに小さな火の玉や氷の塊などのさまざまな初級魔法を放ってきた。
「ちょ!? い、いででっ!! 悪かった!! 本当に悪かった!! 何て言うか、その心の整理だったり問題が起こったりで見舞いに行く暇が取れなくて!!」
「そう言う事で怒ってるんじゃありません!!」
魔法を避けたり掠ったりしながらクウが必死で謝っていると、レイアはピシャリと怒鳴り付ける。
そのまま攻撃の手を止めると、肩を震わせて顔を俯かせた。
「他の方に聞きました…クウさん、シャオさんを助ける為に無茶しに行くんですよね…」
「無茶しにって…」
「だって!! これまでクウさんが無傷で済んだ事がありますか!? 今回の旅だって私や誰かを庇ったり助けに入って何度大怪我を負った事か…!! 昨日だって、すごく、心配したんですから…!!」
「レイア…」
ボロボロと涙を零して心配するレイアに、クウも居た堪れない気持ちになる。
何かある度に怪我を負ってはレイアに治してもらう。もはや習慣にもなっていたそれは、多少なりとも彼女に不安を与えていた行動だったのかも
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME