レイアの部屋を後にしたクウは、顔を俯かせながら誰もいない廊下を一人歩いていた。
「はぁ…」
胸の内に溜まったモヤモヤとした感情を溜息にして吐き出そうとするが、まるでこびり付いているように残っている。
思わず胸を押さえていると、脳裏に無轟が思い浮かぶ。
(ならば、好きなだけ悩め。悩んだ末に答えを選べばいい。どちらにせよ――今はやるべき事を専念する事だ。決めるのは、その後でも構わないだろう)
無轟に言われた言葉を思い出し、自然と口から苦笑が零れた。
「好きなだけ悩め、か……ホント、そうでもしないと選べねえよな…」
片手で頭を押さえつつ、ベルトにつけているロケットを見遣る。
スピカの大切な思い出の品物であり、戦いには欠かせないお守り。実際、これがなければウラノスには勝てなかったし、敵側にシャオを奪われていたかもしれない。
今もスピカは大切に思ってくれている。今もレイアは好きでいてくれている。二人が自分に向けてくれる感情はとても嬉しくて…とても苦しい。
レイアとスピカ。自分にとって、本当に大切なのはどちらなのだろうか…。
「――ん…?」
ふと顔を上げると、大広間の方で話し声が聞こえてくる。
興味が湧いて近づくと、イオンとペルセがアルカナとキルレストと一緒に何かを話している。
アルカナとは会議の時に顔見知りとなっている為、すぐに話の輪に加わる事にした。
「お前ら、何してんだ?」
「クウさん…」
「丁度いいな。お前にも話があるんだ」
何故かペルセが浮かない顔で振り向くと同時に、アルカナもクウに気付いて声をかける。
彼の声色から何か重要な話だと見抜き、自然とクウも話を聞く体制になった。
「シャオと言う少年を助けるのは、止めた方が良い」
「…どうして?」
「何かしらの嘘を付いているからだ」
ハッキリと答えるキルレストだが、クウは納得できなかった。
「何でそう言い切れるんだよ?」
明らかに不機嫌になって質問を繰り返すと、アルカナが一枚のカードを見せる。
昨日の占いでシャオが引いた、月のカードを。
「これは占った際に出た、彼を象徴するカードだ。意味は嘘・偽り」
「少なくとも、アルカナの占いは必ず当たる。あの子供は何かを隠している…味方と思わせて、我らの敵である事も否定出来ん」
「でも…」
イオンが反論しようとするが、それ以上の言葉は出てこない。
シャオと知り合って、まだ一日しか経っていない。全てを知っている訳ではないし、倒れる寸前に確かに言っていたのだ。『本当の名前は…』と。
芽生えた疑いは不信感に変わっていく。何も言えなくなったイオンと同じように、ペルセも黙っていた時だった。
「――それでも俺はシャオを助けに行くぜ」
沈黙だけでなく重苦しい空気を破る言葉をクウは放ち、真っ直ぐにアルカナを見据えた。
「あいつはずっと俺を信じてくれた。そこに嘘や偽りなんて一つも無かった…胸張ってそう言える」
「…私の占いが間違ってるとでも?」
「そうは言ってない。何なら、その占いで確かめてみろよ。シャオが俺達をどう思っているのかをさ」
「そうだな」
クウの提案に、すぐにアルカナはカードの束を取り出すと空中でバラバラにする。
シャッフルしたカードを束にして分けて重ねて…その一連の占いの行動を誰もが見守っていると、束にしたカードが上から一枚ずつ飛んで制止する。
その内の一枚をアルカナが取ると、キルレストが声をかけた。
「どうだ、アルカナ?」
「――どうやら、お前の言ってる事は正しかったようだ」
そう言うと、持っていたカードを裏返して見せつけた。
アルカナの見せたカードは、教皇の正位置。
「なるほど…教皇のカードは信頼を意味する。それだけお前達を信頼しているようだな」
「シャオ…!」
「良かった…」
カードの意味をキルレストが解説すると、イオンとペルセは安堵の笑みを浮かべる。
こうして不安要素を解消する中、クウは残りの浮いているカードを指差した。
「なあ、ここに並べた三枚のカードは何だ?」
「折角だから、今後の未来も占ってみたんだ。母様もお前達と共に行くからな、分かっていた方が我々も安心が出来る」
並べたカードを説明すると、軽く手を振るって並べた三枚を裏返す。
直後、全員の表情が凍りついた。
「このカード…さっき、アルカナさんが持ってたカードじゃ…?」
「この骸骨…死神か…?」
「雷が塔に当たって、破壊されてる絵だね…」
「ア、アルカナ…この、不吉なカードはなんだ…?」
イオン、クウ、ペルセがどうにか言葉を絞り出す中、キルレストはアルカナに振り返る。
不吉な結果なのか、アルカナは顔を背けながらカードの意味を答えた。
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