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開闢の宴・外伝2-1『心の世界』


 目の前に、大きな街並みが見える。
 様々な民家が立ち並び、あちこちには噴水や花が植えられた花壇。中心には大きな城が存在しており、遠くにはそれに匹敵する巨大な門がある。
 そんな街の中を――俺は宙に浮いた状態で移動している。

「意外としつこいわね」

「それぐらいが丁度いいさ。ほらボウズ、しっかり掴まっとけよ!」

「ひぃい!?」

 見知らぬ男女2人がエアバイクに乗りながら話す中、俺――リクは男性の腕を掴みながら危険な運転に悲鳴を上げた。



 ―――事の始まりは、少し前まで遡る…。



「オパールの奴、昼飯が出来たのに何処に行ったんだ?」

 時刻は昼になった頃。リクは箱舟と称した神が作りし船――モノマキア内を散策してオパールを探していた。
 理由は単純で、お昼用の弁当を給仕の人が届けてくれたのだが、操作室で作業をしていた筈のオパールが何処かに行ってしまってるのだ。

(データの解析は終わっていないんだ。少なくとも、この船からは出ていない筈だが…)

 今の状況を考えながら、リクは長い階段を下りる。
 そうして船底の部分に辿り着くと、遠くでカチャカチャと金属音が聞こえてくる。
 すぐに近づくと、【立ち入り禁止】の文字が書かれてある扉の前にオパールがいた。

「えーと、これをこうして…う〜ん、なかなか手強いセキュリティね。その分ハッキングのし甲斐があるわ…」

「オパール」

「ヒッ!? …って、リク!! もー、驚かさないでよ!」

 ビクついた肩を撫でおろすなり、オパールが顔を歪めて声を荒げる。
 しかし、リクは反省する事素振りを見せずに咎める視線をぶつけた。

「それよりお前…立ち入り禁止の扉の前で何をしていたんだ?」

「え!? えっとね、その…お、落し物がこの扉の隙間に入って…」

「そんな隙間、何処にも見えないんだが?」

「え、え〜…?」

 見たままの事を反論にすると、オパールはワザとらしそうに目を逸らす。
 明らかに怪しい素振りに、リクはギロリと睨みつけた。

「正直に答えろ。何をする気だったんだ?」

 リクの圧力に言い逃れ出来ないと分かったのか、オパールは頭を下げた。

「うー…興味本位で、つい…」

「興味?」

「この部屋、鍵掛かってる上に立ち入り禁止の看板あるのよ? こう言う部屋って、大抵何か隠されてたりするもんでしょ!」

「普通に考えて、ただ単に危険だからじゃないのか?」

 当然な理由を提示するが、それで納得するオパールではなかった。

「もー、そう言う事言わないの! この船、半神って人達が作った船なのよ! だったらこう、ロマンとかお宝とか財宝とか宝箱とかあるもんでしょ!」

「半数以上が欲望で敷き詰められてるぞ?」

「とにかく、あたしはこの船の事もっと知りたいの! ついでにお宝もあったら嬉しいなーても…」

「あくまでもそう言う所は否定しないんだな」

 隠しきれない本音にリクは呆れるが、ある意味ではオパールらしい。
 だが、普通に考えてオパールがやろうとしているのは完全に不法侵入だ。いくらここにいる人達が味方だとしても、さすがに見過ごせる行為ではない。

(さて、どうするか――ここは下手な事をさせる前に戻らせて…)

 この場から離れさせようと思考を纏めていると、急にオパールが顔の前で両手を合わせた。

「お願い、ちゃんとこの部屋を覗くだけにするから。だから見逃して」

「何で…俺、まだ何も言ってないよな?」

「分かるわよ、あんたが言いたい事ぐらい。ね、本当にお願い! 下手な事はしないから!」

 そう言うと頭まで下げて、リクに向かって必死で頼み込む。
 このオパールの頼みに、さすがのリクも軽く溜息を吐いて目を逸らした。

「…今回だけだぞ」

「ありがと、リク!」

 顔を上げて笑顔を見せると、すぐに閉ざされた扉に向き合って鍵を開けようとする。
 そんなオパールの様子を、リクは何処か遠い景色のように眺めていた。

(思えば、オパールは俺の事をよく分かってる。それに対して、俺はオパールの事を上手く理解してない…)

 この世界に来る前の旅では、オパールは年上だからか何かと自分の隣にいては感情を見据えて気を使ってくれたり、そんな気遣いを断っては力づくで押し通そうとしていた。
 いつの間にか慣れてしまった環境に思いを馳せていたが、不意に寂しさを覚える。

(俺もこいつの考え、少しでも分かればな…)

 そんな事を思っていると、段々とオパールが難しい表情を浮かべている事に気付いた。

「う〜…やっぱりセキュリティが厳しい…! 下手に動かせば警報が鳴るし…!」

 半ば唸りながらも手を動かすが、突破するのが難関なのがリクから見ても分かる。
 リクは少しだけ考え込むと、扉のセキュリティと
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