時間は少し遡る。
それはイリアドゥスが城へと戻っていく頃からである。
置いてけぼりを食らった神無とツヴァイだが、事態を懸念するも本題の彼らに迫られ、それ所ではない。
「で、何か用があるのか」
無轟に真っ向から問いかけられ、ついでに凛那の視線付きである。
問い詰められた神無は歯切れの悪い様子で、救いの視線を妻のツヴァイに向けた――が、期待は直ぐに消えた。
貼り付けたような笑顔で、『早く言いなさい』と無言で叩き返されたのであった。
「……あー」
そうして、意を決し、ゆっくりと口を開いて、
「―――新しくなった凛那、見てみたいなーって」
その言葉を唖然といった様子で無轟も、凛那もそうなった。
そんな雰囲気に言い切ってしまった神無は顔を真っ赤にし、ツヴァイは呆れた様子で静観する。
少しの沈黙の末、
「……なんだ、そうだったか」
口火を切ったのは唖然としていた無轟だった。
得心したように、聊か苦笑を含めた笑みを浮かべて言う。
「なら、店で待つとしよう。伽藍は夕刻には完成するといっていた。もうじきなのだろう」
彼は言い終えるや店の中へと戻り、驚く神無に凛那が嘆息して言った。
「断るわけないだろうが。そういうところは親子似ているぞ」
「う、うるせえ」
強く言い返せず、ぐぬぬと悔しげに睨み返す程度しか出来ず、そんな睨みも凛那は鼻で笑い、
「さっさと入るんだな」
促すように言ってから彼女も店へと入る。
そこへ妻が彼の手を握り、手を引くように同道する。
「さ、行きましょ」
「……ああ」
少し恥ずかしくなりつつも、確りとした足取りで店へと入る。
そうして、神無らも無轟たちと共に完成した凛那の立会いに加わり、出来上がるその合間、奇妙な親子の会話が続いていた。
こちら側の無轟との思い出、異なるセカイ側での家族の話など無轟と神無、双方にとっても満足のいく会話が過ぎていった。
そうして、
新たな凛那の完成に、急遽城で起きた事態からイリアドゥスが此処へと戻ってきた。
城での出来事を聞き終えた神無らは夜からの行動も考えた。
「夢の世界で救出戦と来たか」
「現状、我々は彼らの成功を期するしかないわけだな」
「ええ。大勢で夢の世界なんて危険極まる事。少数で当たるしかないわ」
『僕たちが仕事していた間にそんな事が起きてたのかー』
「ああ。この事態は彼らに任せるしか―――ん?」
「あら」
会話の中に割り込んでいた見知った人物の声に漸く気付いた神無らが声の方向へ向く。
そこには伽藍と共に凛那の作業に出ていた炎産霊神が自然と居た。
「お前!」
『アハハ! ごめんごめん。―――お待たせ皆。完成したよ!』
彼の嬉しそうな声に一同の期待が高まる。だが、同時に炎産霊神は思い出したように言う。
『あ、伽藍が力尽きちゃったから誰か運び出してくれる?』
「ソレを早く言え!」
凛那の一喝と共に、アスラ同伴で神無たちは伽藍が篭っていた工房へと急いだ。
工房の扉を開け、開放され、出てきた熱気に思わずアスラは驚く。
「っ! 伽藍は大丈夫か!?」
「急ぐぞ」
一先ず、熱気に満ちた工房へ入る事にしたのはアスラ、無轟と凛那だけだった。
他の者らはその場で待つことになった。
工房の中、伽藍が居るその広間へとたどり着き、一堂は更に驚く。
「―――よぉ、迎えに来たか……ハハハ」
熱気が更に高まったような広間に、汗だくで、煤まみれになっている伽藍が仰向けに倒れており、やって来た彼らに乾いた声を漏らす。
「無事か!」
駆けよったアスラと無轟に支えられながら、伽藍はゆっくりと応じる。
「……おう。出来たぜ、お前ら」
彼の片手が必死に掴んでいたそれは鞘に収まっている刀だった。
紛れも無く新たな凛那のものだった。燃え上がるような期待に満ちるも、一同は一先ず店へ戻ることを優先した。
そして、伽藍の治療をしながら、工房外でのいよいよの立会いが果たされた。
「いやー、師匠みたく命懸けの打ち込みしてたらぶっ倒れてたわ! ―――さて、本題の刀だ」
彼の手から無轟へと託され、それを確りと受け取る無轟は何処か緊張の色を隠せずに居る。
折れた刀身以外のパーツは流用された為、鞘に収まった刀は以前の凛那と代わりはない。
しかし、握り締めている無轟は感じ取れる。以前の凛那と大きく違う力の脈動を。
『さ、無轟。皆に見せて貰おう。新しい愛刀を』
緊張に黙する彼に相棒の彼は普段の陽気さに催促する。一同の視線が集う中、無轟はゆっくりと刀を抜く。
その刃に無轟が興味深く驚く中、鞘から刀身を引き抜き、改めて刀を見る。
「―――」
刃は闇を深めた真黒、刀身に走るのは茜色の刻印
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