広場で二人と別れた後、俺達はどう言う訳か姫であるオパールの居るであろう城へと進んでいく。
訝しげに視線を送るものの、先頭を歩く二人は気づかないフリをして先を進む。さすがに不安が過り、呼び止めようと声を出そうとした時だった。
「それー!」
一つの明るい声と一緒に、背中に何かが激突した。
「ごふっ!! …って、ソラ!?」
突然の衝撃によろめきながら振り返ると、何とソラが背中に抱き着いている。
記憶の存在とは言え思わぬ出会いに思考が混乱していると、ソラは背中にしがみ付いたまま笑顔を見せた。
「へへー、捕まえたー! 俺の勝ちー!」
「あーあ、負けちゃった」
「もー、ソラってば早いんだからー」
そうこうしていると、パタパタと軽い足音が近づく。
「ヴェン! カイリまで!」
ソラに続いて登場した人物に驚いてると、どう言う訳かソラは俺から離れた。
「よーし! じゃ、次はリクが鬼なー!」
「お、鬼って…」
「隠れろー!」
「ちゃんと数えてから見つけてねー!」
事態を把握する前に、一斉に逃げる三人。
僅か数秒で完全に三人の姿が見えなくなり、頭痛を感じて頭を押さえた。
「かくれんぼかよ…と言うか、三人共更に子供になってないか?」
町の住民だから命令は伝わっているようだが、意味が分かってないようで何かの遊びと勘違いしてしまっている。
あの三人が敵になってないのはありがたいものの、釈然としない何かを感じているとバルフレアが肩を竦めた。
「俺達に聞くなよ。本来の人格は知らないんだ」
「少なくとも、オパールは彼らをああ見ている。だからあんな性格になっているのよ」
「一体どうなっているんだ、こいつの心の中は…」
年は少し離れているとはいえ、ソラ達を子供扱いしている目線。敵であるリリスが味方。そして、大多数が敵と言う町の様子。
もはや常識が通用しない状況に溜息を吐くと、バルフレアが静かに口を開く。
「どうもこうも、これが人の心って奴さ」
そう言うと顔を上げて、少し曇り掛かった空に目をやる。
「人によって考えが違うんだ。この世には心の数だけ世界が溢れているのさ…星の海のように、数えきれない程の世界が」
空を見ながら自分に語る彼の表情は、時折オパールが見せるそれに酷似していた。
一つの夢を抱き、空に思いを馳せる顔に。
「なぁ…あんた達はどうして俺の味方をするんだ? この世界の人達は俺の事を敵って認識する筈だろ? なのに、どうして俺にはあんた達の様な味方がいるんだ?」
「――良く気づいたわね」
すると、何処となく優しい目でフランがこちらを見てくる。
予想しなかった言葉に思わず疑問を浮かべると、バルフレアも笑いながら後方にある城を親指で差した。
「俺達がお前に味方する理由は、ただ一つ――『姫』のためだ」
「なにっ!?」
「そう睨むなよ。言って置くが、俺達もここの住人なんだ。『姫』の事は大事に思っている」
「だからこそ、私達はあなたを助ける。現実の私達は彼女の良き理解者。だから、『姫』の事を理解している…あなたを助けたオパール同様にね」
「…話が矛盾してないか?」
彼らの話を要約すれば、敵であるにも関わらず手助けている行為だ。しかも、それは自分を捕まえようとするオパールの為。
もはや話が噛みあっていない。訳が分からなくなっていると、フランが首を振る。
「矛盾なんてしていないわ。この世界の事を、あなたが理解していないだけ」
「この世界は顕在意識の中でも一番浅い部分、言い換えればオパールが表に見せている部分だ。つまり、オパールの事を知っていればこの世界の謎は自ずと解ける」
「世界の謎? 何だそれは?」
詳しく聞こうと詰め寄るが、どう言う訳かバルフレアは背を向けた。
「さて…話す事は話したし、見せる物も見せた。ここでお前とはお別れだな」
そう言って、何の迷いもなく自分から離れていく。しかもフランまでもが無言でバルフレアの後を追うように去ろうとしている。
「なっ! ここで俺を置いていくのか!?」
勝手にあちこち振り回され、勝手に置いて行かれるのだ。怒鳴らない方がおかしい。
そんな俺に、足を止めて振り返ったバルフレアとフランは呆れた視線をぶつけてきた。
「ああ、そうだ。いいか…この精神世界では答えを教えて貰っちゃ意味が無い。自分で見つけて初めて意味を成すんだ」
「この世界で感じた事、今までの行動。それを考えれば、この世界の謎が解けるわ」
「そう言う事。じゃ、後は頑張れよ」
「お、おい待て!?」
話は終わりとばかりに、バルフレアは後ろから手を振って立ち去っていく。
だが、最後にフランが足を止めて振り返り、こちらに期待の眼差しを送った。
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