空賊のオパールから改めて聞かされた、彼女の正体。
未だにその場に座り込んで怯える姫のオパールに、リクは覚悟を決めて近づいた。
「オパール」
「…い…くな…」
声をかけると、小さな呟きが耳に届く。
姫がゆっくりと顔を上げると、表情が崩れる程に泣いていた。
「こんな、姿で…会いたく、無かったのに…!」
「え?」
「空賊目指してるのは、確かにあたしの姿…だけど、本当はこう言う事だって憧れてない訳じゃない…!」
この状態で嘘を吐くのは無駄だと悟っているのか、本音を吐く姫。
そんな彼女の言葉を、リクは黙って聞く。
「でも…現実のあたしを思えば、そう言うのってやっぱり変だよね…こんなの、似合わないよね…っ!」
育ちがどうだろうと、自分も一人の女だ。お城やお姫様と言った憧れを持たない訳じゃない。
しかし、戦いの中で生きてきた自分にとってそれは妄想でしかない。だから隠してきたのだ。自分の思いや本音を裏に返し、言葉や行動で表現するように。
その裏が表に返された事により、嫌われる覚悟をする姫に…リクは目線を合わせるように屈むと、優しく彼女の頭に手を置いた。
「そんな事ないさ。その服だってちゃんと似合ってる」
「リ、ク…?」
「少しは素直になったっていいんだ。どんな形だろうと、こうしてお前の事を知れるのなら俺は嬉しい」
「それ…ほん、とう…?」
恐る恐る姫が聞くと、リクは笑って頷いた。
「ああ」
「あり、がと…!! ううっ…リクゥ!!」
「うわっ!?」
嬉しくて抱き着く姫に、リクは倒れながら彼女を受け止める。
その様子を空賊が嬉しそうに見ていると、空いたままの扉からバルフレアとフランが入ってきた。
「どうやら、あの子の王子様が闇を払ったようだな」
「うん…ありがとね、二人とも」
バルフレアにお礼を言うと、フランが意味ありげに視線を送った。
「あなた…自分の世界を飛び出してでも、彼に会いたかった?」
「だって、こうでもしないと会えないから…」
何処か寂しそうに答えると、再び姫に抱き着かれたリクに顔を向ける。
「出来れば、リクをあたしの世界にまで招きたい。でも…今のままじゃ駄目って事も、分かってる」
「あなたは本来奥深い場所にいる。そこに彼が行くためには――」
「あたしの気持ち伝えないといけない…そして、その気持ちに答えてくれないといけない」
心の奥深くにある深層意識となれば、信頼するだけの人では駄目なのだ。
信頼し、信頼され…それそこ、共に生涯を歩むと誓ったパートナーでないと危険が生じる。
だが、彼にはもう相手がいる。胸の内を明かしても…――片思いの鍵では、奥へと続く心の扉は開かない。
「きっと、あいつがあたしの世界に来る事は出来ないから…これだけでも、満足しなきゃ」
そう言った彼女の表情は笑っている筈なのに、とても悲しそうだった…。
その後、俺は姫と別れて空賊の彼女に連れられて巨大な城壁の門へと来ていた。
城壁の門はいつの間にか開けられ、先は眩い光で包まれている。空賊曰く、ここから元の世界に帰れるとの事だ。
「すまないな、いろいろ助けて貰って」
「ううん、気にしないでよ。そもそも、これはあたしが招いた事だし」
「そうなのか?」
「あたしはオパールの《好奇心》を司る人格なの。人を成長させる要素でもあるんだけど、こう言ったトラブルを起こしたりもするから」
頬を掻き、苦笑を浮かべる空賊。少しは悪いと思っているらしい。
改めて後ろにある街を視界に納め、様々な騒動を思い出す。全てが反対だと分かった今は、その騒動も何処か嬉しく思う。
と、不意にある事を思い出した。
「どうしたの?」
「なあ…この世界では味方が敵になるんだよな?」
この質問に、彼女は何をいきなりと言う顔をされる。
だが、そうなると一つだけ気がかりな事があった。
「リリィの事…敵って思ってるのか?」
直後、彼女の顔色があからさまに変わる。
思わず目を細めると、彼女は顔を隠す様に俺から背けた。
「…そんなんじゃ、ないわよ」
「だったら、どうして中立の立場を取ってるんだ? 本当に友達だと思ってるなら、そんな曖昧な存在には――」
「あんたには分かんないわよっ!!!」
追及する途中で、思いっきり怒鳴りつける。
さすがにこれ以上言葉を紡げずに口を閉ざすと、彼女は顔を背けたまま呟いた。
「――リリィの事、ちゃんと友達には思ってる。それは嘘じゃないから安心して」
「でも…」
「この話はもう終わり!! さっさと帰りなさいっ!!!」
「うおぁ!?」
突然振り返るなり、力の限り門の中へと俺を突き飛ばす。
門の先にある光に包まれ、視界が一瞬で白へと
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