イオンとペルセが二人の後を追って記憶の歪みに入ると、そこは日の光が僅かしか行き届かない鬱蒼とした森の中だった。
「ここって…」
「イリア! いきなり何を――!!」
ペルセが辺りを見回していると、吹き飛ばされていたクウが起き上がる。
「こぉのバカ師匠がぁーーーーーーーーーーっ!!!」
同時に、クウに負けず劣らずの少年の怒鳴り声が奥から響き渡った。
「この声――…うわぁ!?」
思わずイオンが振り返ると、頭上から見覚えのあるキーブレードが勢いよく降ってきた。
両腕を交差して頭部を守ろうとするが、キーブレードは幻影なのかイオンをすり抜け地面へと突き刺さる。
その時、ガザッガザッと小刻みに葉が鳴る音が上の方から聞こえ、全員が顔を上げた。
「どーした、バカ弟子? 全然当たってねーぞ?」
何処かバカにしたような発言をし、地面に向かって挑発する一人の男が高い場所にある木の枝に立っていた。
その男はロングの金髪に琥珀色の目。全体に鍔のある藍の帽子と片目の眼鏡をかけている。服装は、黒のシャツの上にさまざまなベルトを付けた青いジャケットを羽織り、黒い長ズボンを履いている。
そんな男の視線の先には、黒目黒髪の少年―――子供の頃のクウが悔しそうに睨んでいる。
「うっせぇ!! すぐにでもその顔に当ててやる!! だからじっとしやがれ!!」
「はん、大人しく攻撃受ける馬鹿が何処にいるんだっての。それに――」
ニヤリと怪しい笑みを浮かべ、男は右手を大きく広げて素早く斜めに腕を振るう。
するとクウの足に何かが絡みつき、そのまま上の方へと持ち上げられた。
「うわあああああああっ!!?」
逆さの状態で釣り上げられたので、クウはバタバタと宙づりで身体を動かす。
よく見ると、足には黒い色をした細いワイヤーが絡みついている。男を見ると、うっすらとだが動かした右手にワイヤーが絡みついているを確認できる。
そうこうしていると、男は軽い足取りで地面に降り立ちイオンの傍に突き刺さっているキーブレードを取った。
「『今日はキーブレードを使うの禁止』って言ったの忘れたか? おらセヴィル、パース」
「ああぁーっ!?」
男がキーブレードを投げるのを見てクウが叫んでいる間に、後ろにいたセヴィルによって彼の武器は奪われた。
「反応が一歩遅いぞ。しかも、俺がいた事にも気づかないとはまだまだだ。反省も含めて今日はこれ無しでクロとの特訓をする事だな」
「ずりーぞ!! 返せー!!」
宙づりのまま文句をぶつけるが、セヴィルは無視するように背を向けてその場から去ってしまう。
この一部始終に、イオンは隣でバツの悪い表情を浮かべるクウに話しかけた。
「クウさん、これ…」
「見ての通り、修行時代の記憶だよ…くそっ、改めて見ると俺って本当に弄られてばっかりだ」
クウにとって相当嫌な記憶だったようで、顔を歪ませガシガシと頭を掻きむしる。
そんなクウに、ペルセも顔を向けて問いかけた。
「あの二人が、クウさんのお師匠さん?」
「ちげーよ。今俺をおちょくってるのが、俺の師匠。で、キーブレード持っていったのはセヴィルって言う…いけ好かなくてお人好しな奴」
「そして私達の敵、よね?」
「…あぁ」
間髪入れずに言ったイリアの言葉に、クウは顔を逸らしながら答える。
理由はまだ分からない。だが、セヴィルは自分ではなくエンへとついている。彼にとっても大事な存在であるスピカを利用したのが、何よりの証。
空気が若干重くなり、イオンは話題を変えようとした。
「えーと…じゃあ、あのクロさんって人がクウさんの師匠なんですね!」
「いや。正確には《クロトスラル》って言うんだ。でも、俺とかは《師匠》って呼んでるし、セヴィルは親友だから《クロ》って呼んでるだけだ」
「へー、そうなんですか」
意外な愛称にイオンが頷いていると、何かが倒れた音がする。
見ると、余裕を浮かべて頭の後ろで腕を組むクロトスラルの前で、息切れを起こしてクウが地面に倒れ込んでいる。
「ぜぇ…はぁ…!!」
「なんだよ、もうバテたのかー?」
「武器も無い、状態で…どうあんたと戦えってんだよ…!!」
そう言って、恨みの篭った目をクロトスラルに向ける。
すると、何か気に障ったようで顔に張り付けていた笑顔を消すとクウの頭を軽く小突いた。
「いてぇ!?」
「お前な、武器の所為にするんじゃねーよ。そんなの無くたって、殴るなり蹴るなり魔法を放つなり出来るだろ」
「だって…」
それでも反論をしようとするクウに、クロトスラルは大きく溜息を吐くと彼の隣に座った。
「生き残る為の手段は沢山ある。大事なのは、その手札を多く持つ事だ。キーブレード一つに頼っていた
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