「クウさん、さっきから無口だね」
「もしかして、さっきの記憶の後遺症とか残っているのかな?」
再び移動を始めてから始終口を閉じたまま後ろを付いてくるクウに、イオンとペルセはコソコソと会話をする。
やがて校舎の裏に差し掛かると、前を歩いていたイリアが足を止めた。
「――あの記憶は…」
イリアの視線を追うと、そこには色合いからして他者の記憶が存在している。
次に繋がる記憶なのかと、イオンはすぐにイリアに声をかけた。
「イリアドゥスさん、もしかしてこれですか?」
「そう言う訳ではないわ。ただ…」
そう言って僅かに口籠るが、すぐに三人に振り返った。
「あなた達は見ておいた方がいいかもしれないわね。行きましょう」
「え? あ、あぁ…」
どうもハッキリしないイリアの言い方に、後ろにいたクウは曖昧に頷く。
そしてイオン達は記憶の中へと足を踏み入れた。
時刻は真夜中を過ぎた頃、月の光が照らす町中を一人の少女が歩いていた。
髪は足元まである美しい銀髪、瞳も月を思わせる銀色。衣装は全身を包む布のような白と銀の服だ。
「綺麗な月じゃのう…」
そんな呟きと共に、丸く輝く満月を見上げる。
その姿は幻想的な光を帯びており、見る者を魅了させる美しさを持っている。
空に浮かぶ満月を見て、少女は瞳をキラキラと輝かせると笑みを浮かべた。
「こうして歩くのは、実に何年ぶりじゃろうか…」
懐かしそうに呟いて歩いていると、ふと立ち止まる。
そのまま後ろを振り返ると、悲しそうな目をした。
「本当に、迷惑をかけたの…」
まるで誰かに謝るように、少女は小さい声で詫びる。
そうして再び前を向いて再び歩き出す。と、遠くの建物の屋上に何かを見つけたのか顔を向ける。
「クウ…それに、ラルもおる…!!」
少女にとって知っている人物なのか、表情が少しだけ明るくなる。
すぐに少女は二人の所に行こうと、地面を蹴って走り出した。
「見つけたぞ、『シルビア』」
「―――っ!!?」
だが、突然男性の低い声が少女の耳に届き足を止める。同時に、ここ一帯に闇が包み込む。まるで、少女を逃がさんとするように。
暗闇の空間に閉じ込められた少女は、恐怖の色を浮かべて恐る恐る後ろを振り返る。
空間の中心に、足元まである金髪に金色の瞳をした男が腕を組んでこちらを見ている。服装は、全体を覆う黒と金のローブだ。
「何だ? 折角不完全ながらも融合もして、こうして会えたと言うのにその怯えた目は?」
「な…なぜ、そちが…!!?」
自分を閉じ込めた男に、少女は全身を震わせる。
「お主は、クウとあ奴が破壊したはずじゃ!!! 『アウルム』っ!!!」
銀色の少女―――シルビアが怒鳴りながら睨みつけていると、金色の男―――アウルムが首を傾げた。
「あ奴…? ああ、お前を持っているあの銀髪か。何だ、未だに契約してないのか?」
「当たり前じゃ…スピカと約束したんでの」
そう言うと、シルビアは顔を俯かせて拳を握る。
「あ奴には、絶対に我の《試練》は受けさせぬ。スピカの気持ちを、無駄にせん」
堅い意思を宿しているかのように、シルビアの言葉には重みがある。
やがてシルビアは軽く首を振ると、アウルムを睨みつけた。
「次は我の番じゃ。何故、二人に破壊されたお主がここにいる?」
「私が再生させた。それだけですよ、シルビア」
二人の間に、突然の第三者の声が横から割って入る。
見ると、そこには白い布で全体に顔を巻いた、白いズボンに十字架の入った白のコートを前で止めている青年がいた。布の隙間からは、微かに黒い髪がはみ出しており、空いた左目は金色の瞳だ。
この人物―――エンに、シルビアは警戒心を露わにした。
「お主は…!!」
「名乗るほどの者ではないですよ…――【作られた鍵】」
エンの言葉に、シルビアは驚きを露わに息を呑む。
「それは…!! その名は…!!」
「そう。作られた時のあなたの名だ。キーブレードに魅入られた資格を持たぬ人達が、光と闇の『キングダムチェーン』を元にあなたと彼を作った時の」
自分の正体を知るエンに、シルビアは僅かに身構えると歯を食い縛って睨みつける。
「何が目的じゃ…!? また我とアウルムを融合させて、擬似的な『χブレード』を作る気か…!?」
純粋な光である自分と、純粋な闇のアウルム。この二つを融合する事で、擬似的だが『χブレード』が作られる。
人工物だが、その威力は凄まじいものだ。だからこそ、製作者はキーブレードの特性である『所有者』を探す権利を自分達に植え付けた。
シルビアが睨みつけると、布で隠されているがエンが笑うのが分かった。
「ええ…――私には大きな目的がある
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