沈黙が支配する中、気配が湖に収束する。
一同の緊張が高まる中、収束した気配が、姿を現す。湖の水面から緩やかに立ち昇っていく。
見目は人間の女性であった。だが、大きく異なるのはその肌は不気味なまでに白く、一部とドレスの様な装甲は漆黒に染まっている。
「――――」
閉じていた双眸を開く。火が灯ったように残光が奔り、青い瞳が彼らを捉える。
「……何よ、あれ」
身構えつつ、小声でプリティマは誰に言うでもなく言った。
無論、他の一同が知っている筈もなく、険しく沈黙する事でしか応じなかった。
水上に佇む女はゆっくりとこちらへとやってくる。歩くのではなく、滑る様に移動してきている。
そして、彼らの前に立ち止まり、彼らを一瞥している。顔に浮かべた穏やかな微笑は歓迎の色は無い。
貼り付けた微笑から、ゆっくりと口を開いた。
「あなた…たち…は?」
「……」
皆は、彼女の言葉に視線を合わせる。
「……誰……?」
穏やかな声で、彼女は話しかけた。このまま、何もしないわけにもいかない為、ベルモンドが応じた。
「――我々は、此処の湖の調査しに来た探検隊だ。湖の水を無断で、少し拝借したのは申し訳ない。まさか、主の様なものがいたとは」
警戒を緩めずに話に応じたベルモンドに、女は変わらぬ様子で彼や他の者を見やっている。
「……此処の水が、欲しい…の?」
「ああ。必要なんだ。必要以上には取らない。……いいだろうか?」
「……そう」
彼女は頷き、穏やかな微笑みのまま、ゆっくりと手を上げ、
「―――じゃあ、くれてあげるっ!」
「っ、うおおおっ!?」
突如、彼女の背後から水が勢いよく立ち昇り、勢いのままベルモンドを呑み込む。
「ベルモンド!? くそが!!」
リヒターは炎熱の大剣で、水を断ち切り、統制を喪った水は弾けて中にいた彼は咳き込みながらも無事だった。
「大丈夫、ですか!? ベルモンドさん!」
「…ああ、危うく溺死されそうだった」
駆けつけたアルマに声をかけられ、無事を告げる。しかし、攻撃は迫っており、すぐさま駆け出した。
既に、水の攻撃はベルモンド以外にも向けられ、攻撃を躱し、退避していく。
「フフフ」
微笑と共に、女は足元の水面を隆起し、立ち昇った水柱から無数の弾丸を射出する。
「何なのさ、アイツはぁ!?」
「ハッハ! 世界に謎はいっぱいだな!」
「呑気に喜んでいないで!」
攻撃を躱し、防ぐ中でセイグリットは大声で困惑し、ギルティスは気性の戦闘好きで喜びを隠さず、プリティマは呆れて怒声で返しつつ、水の攻撃を凍てつかせて凌いでいく。
イリシアは『ヴァッサー』を身に包んで、アルマは鎧の力で水中にも対応できることから大剣を用いて斬りこんだ。
「この―――!」
「はぁぁっ!」
ヴァッサーは腕を剣のように変え、アルマの大剣との連撃を繰り出す。
いくら水を駆使していようとも、イリシアの様に武装せず、無防備に佇む彼女に躊躇はしない。
「―――ふふ」
二人の斬撃は見事に、女を捉えた。だが、硬い音と共に斬りこむことが出来なかった。
「な!?」
「コイツ…!」
刃は体表に走り傷を残しただけで、深く切り裂くことが無かった。
困惑する二人へ、返礼の水の放射がぶち込まれ、吹きとばされた。
「アイツ、硬いようねえ!」
二人の攻撃を見ていたギルティスは笑みと共に、闘剣に光を纏い、襲いかかってきた水を切り裂く。
すかさず、無数の光弾を礫の様に女へと放った。
女は躱すことも、防ごうともせずに直撃する。しかし、敵は無傷と言っていいほどダメージを受けた様子もない。
「イリシア、大丈夫?」
一方、女の攻撃を喰らって吹きとばされたイリシアたちは森の中へと倒れていた。
尤も、倒れていたのはアルマだけで、イリシアは『ヴァッサー』の水によって包まれていたため、衝撃を受けていなかった。
アニマは立ち上がって、すぐに彼女へと駆け寄って声をかける。
「…はい」
頷き返す彼女だったが、顔色はいいものではなかった。
それは、キルレストの情報に、この女の存在は無かった事だろうと、アルマは思った。
でなければ、この探索はもっと迅速的に執り行われていたはずだった。
「あれは、『湖の化身』的なものなの…?」
とりあえず、現状の再確認をするべく、彼女へとそう尋ねた。
彼女は水を司る半神。湖の異変を理解していたのは紛れもないイリシアだった。
その問いかけを、まずは頷きで答える。
「たぶん……キルレストが此処の湖の水は魔力との適性がとても良いって言っていた。
…水は基本的に魔力や、エネルギーに影響されやすいの。だから、素材としても最適」
「……厄介、ね。湖その
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