夕日の沈む町の片隅に存在する、古びた屋敷。
鉄の柵で作られた閉ざされた門の前で、リクが奥に佇む屋敷を見つめていた。
「ここにナミネがいるのか?」
「待ちな」
背後から呼び止められ、リクは振り返る。
森を抜けてやってきたのかそこにはレプリカが立っており、リクに近づいて互いに向かい合う。
そうして観察するように軽くリクを見回すと、鼻で笑った。
「ふん、お前変わったな。前に会った時は、自分の闇を怖がってたのに」
「なぜ分かる」
「俺はお前だからさ」
「俺は俺だ」
レプリカの言葉を否定するように、強く断言するリク。
「俺は俺――か」
すると、どう言う訳かレプリカはリクの言葉を受け入れるかのように呟く。
「うらやましいな、本物は。偽物の俺には、絶対に言えない台詞だ」
明らかに苛立ちが混じった声でそう言うと、突然両手を広げながら自分の姿を見る。
「――そうだよ、ニセモノなんだよ俺は!! 俺の姿も記憶も気持ちも全部!! それに、この新しい力も!!」
そう叫ぶと共に、レプリカの全身から蒼黒い邪悪なオーラが立ち上る。
これにはリクも驚いていると、レプリカはオーラを消して叫び続ける。
「新しい力を手に入れたら、お前の偽物じゃなくて、別の誰かになれると思った!! だけど何も変わらない――空しいままだ!!」
心にある思いを全てリクへとぶつけると、虚ろ気な目で両手を見つめる。
「やっぱりみんな借り物なんだ。お前が存在する限り、俺は永久に影なんだっ!!」
手に闇を纏い、剣を取り出すレプリカ。
対するリクもレプリカから滲み出る感情を受け止めるかのように、静かに剣を取り出して構えた…。
夕日の中での激戦が繰り広げられる中、とうとう二人の戦いの決着が付く。
リクの斬撃を受けると共に、まるで糸が切れたようにレプリカは地に倒れる。
仰向けの状態で倒れると共に、レプリカの身体から闇が立ち上った。
「俺――滅ぶのか…」
もう身体を動かす力も無いのか、倒れたまま感情の無い声で夕暮れの空を見上げる。
「ふん、滅ぶのは怖くない。どうせ偽物なんだからな。本物の心なんて、持ってないんだ。今感じてる気持ちだって、たぶん嘘の気持ちさ」
レプリカは割り切るように言うが、話す声に僅かに悲しみが混じっているのにリクは気づいた。
「何を感じてる?」
「偽物の俺が滅んだら、俺の心…どこへ行くんだろうな? …消えちまうのかな…」
「どこかへ行くさ。多分、俺と同じ場所だ」
そうレプリカに言うと、気に喰わないのか嫌そうに表情を歪める。
「ちっ――そんな所まで本物の真似かよ」
そんな事を呟いていると、周りにある闇と共にレプリカの身体も少しずつ光となって消えていく。
「まあ…いいか」
最後に何処か満足そうに呟き――目の前が真っ黒に染まった…。
「今のが、俺とニセモノの――忘却の城での、最後の記憶だ」
記憶を見終えて淡々とリクが説明する横で、オパールは胸を押さえた。
「何だろう…すごく、切ない」
「悪い…」
「何であんたが謝んのよ。悪いのはどう考えてもこいつでしょ」
呆れた目でリクを見返すと、何処か疲れたようにフゥと軽く息を吐く。
そして、最後に見たルキルの姿を思い出す。
「何が全部ニセモノよ。身体や記憶がニセモノでも、あんたの心や思いは紛れもなく本当じゃない…」
この城で起こった悲しい結末に、オパールは顔を歪める。
リクもかける言葉が思いつかず、二人の間に重い沈黙が圧し掛かる。
しかし、オパールは急に腰に手を当てると、何かを振り切る様に真っ直ぐに顔を上げた。
「――決めた! こいつが起きたら、真っ先に怒鳴ってやるんだから! リクみたいに卑屈になって、何でもかんでも目を逸らすんじゃないって! 自分の存在がどれだけ大事なモノか、あたしがぶん殴ってでも分からせてやる!! ほら、行くわよリクっ!!」
勝手に話を進めるなり、ウィド達が行った方向へとズンズン歩いていくオパール。
何が何でもルキルを目覚めさせようとする彼女の様子に、慌ててリクが呼び止めた。
「お、おい!? アク――リアの事はいいのかっ!?」
「調べたいけど、ウィドと約束しちゃったでしょ! それに、リアの事諦めた訳じゃないから!」
強気に言うと、リクへと振り返る。
その顔には、今まで見た事も無いような儚げな笑顔を浮かべていた。
「リアの事、ちゃんと分かるまで…付き合ってくれるんでしょ?」
「…そうだったな」
自分が言った事を思い出し、オパールへと頷く。
それに満足したのか、オパールも頷き返すなり再びウィド達の所へ歩いていく。
リクも追いかけようとした所で、ある疑問が脳裏に浮かんだ。
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