「別行動…ですか?」
「ああ。このまま一緒に行動しても埒が明かないだろ? 二手に分かれた方が効率がいいと思ってよ」
合流してすぐにクウが話した提案に、イオンは腕を組んで思考に耽る。
クウの言う事は尤もだ。ここにはシャオの記憶だけでなく他人の記憶も数多く混ざっている所為で、未だに元凶に近づく為の記憶は見つかってはいない。一つ一つ探していたら、自分達が助け出す前にシャオの意識は呑まれてしまうかもしれない。
「そう、ですね…今まで巡っても、未だ本題の記憶は見つかっていないし。それに…」
上手く分担すればシャオの事を知らなくて済む。思わずそう言おうとしたが、寸での所で言葉を切る。
このイオンの考えが伝わったのか、ペルセも何も言わずに一つ頷いた。
「…私も構わない、けど」
「何だよ?」
妙な言葉遣いに気づいてクウが問いかけると、ペルセは怪しい者を見る様な視線を向けた。
「イリアドゥスに変なことしないよね?」
「する訳ねーだろ!! 俺を死亡ルートに直行させたいのか!?」
前にされたブレイズとヴェリシャナの制裁を思いだしながら、クウが怒鳴りつける。
何がともあれこれからの話が決定し、イリアが指示を出した。
「とにかく、二人はシャオの記憶を中心に探して。私とクウは別の記憶を中心に探すわ。何か見つけたら、すぐに合流しましょう」
「「分かりました」」
共に二人が頷くと、シャオの記憶を探しに去って行く。
それを見送ると、イリアはクウへと意味ありげな視線を向けた。
「…これでいいわね」
「悪いな、俺の我が儘聞いて貰って」
そう謝ると、何処か辛そうにクウは頭を押さえ始めた。
「シャオの事を忘れた訳じゃない。それでも俺は…この世界の俺の事を知ってみたい。どんな道を歩んでいたのか、どんな思いを抱いていたのかを」
同じだけど、違う自分。それでもこの世界の自分を知る事で…これからの未来に繋がる何かを掴めるかもしれない。そう思ったのだ。
何の記憶が何処にあるのかは分からないとは言え、見つけた記憶の歪みを見ればイリアにはそれが何なのかは分かる。そこで別の自分に関わる記憶の探索をイリアに頼み、シャオの事は半ば嘘の言い訳をしてイオン達に探索を任せた。
こうして全ての準備を終えると、イリアは静かに口を切った。
「あなたの選択は間違ってはいない。同時に、正しくもない」
肯定とも否定とも言える言葉を放つと、じっとクウへ蒼天の瞳を向ける。
「【選択】と言うものは過程でしかない。終わりは何処にもなく無限に続く。それでも、全ては一か所へと繋がっている」
そう言うと、イリアは遠くに目を向ける。
その一か所へと、真っ直ぐに。
「選択の先に待つ、未来に」
「…未来、か」
「そしてそれはあなたが望む未来か、はたまた誰かが望む未来か……それは誰にも分からない。その時が来るまでは」
「なら、その時が来るまで俺は」
「俺の道を行く、ただそれだけ――なのでしょう?」
自分の信念を先に言われ、クスクスと笑うイリア。
これにはクウの居心地が悪くなり、顔が赤くなるのを隠す様に俯きで早足に歩き出した。
彼らが夢の中を探索して、現実では既に半日が経っていた。
ビフロンスに昇った太陽も、今では遥か高くの頭上で穏やかに日の光を照らしている。もう少しで時刻は昼頃となるだろう。
城から離れた城下町のある店。昨日ブレイズ達も行った菓子屋に、カイリがいた。
「わあぁ…!」
「美味しそうでしょ? 欲しい物があるならこれに入れてね。お金も私達が払ってあげるから」
目を輝かせて並べられている商品の菓子を見るカイリに、シェルリアが笑いながら近づいて持ってきたトレイを差し出した。
「ありがとう、シェルリア。でも大丈夫、私達のお金もこの世界では使えるみたいだからちゃんと自分で払うよ」
「そうなの?」
「うん、王羅達がちゃんと確かめてくれたから」
カイリはそう言うと、マニーの入った袋を見せる。
昨日、彼女はレイアの看病をしていただけではない。データ解析で忙しかったオパールに代わって、いろんな人達と交流しつつ自分達のセカイとこのセカイの違いをいろいろ調べていた。
その際にお金の事も確認して貰ったが、長年旅をしている王羅やキルレスト達から「問題なく使える」と判断された。
こうしてシェルリアと談笑しながらお菓子を買って店の外に出ると、同伴者なのかゼツとラクラが待っていた。
「どうだった、ここの店は?」
「凄く良かったよ! ねえ、今度はあのお店寄ってもいい?」
「ああ、構わない。でもそろそろ腹ごしらえしないか?」
ラクラの言う通り、時刻は昼になろうとしている。ここらで食事兼休憩を取るには丁度いい時間だ
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