静寂を切り裂く、静かすぎる女の声が響き渡るや、女が沈んだ所から水面が激しくなる。
同時に、地震に襲われたような揺れに襲われ、一同は困惑と共に水面の方へと見た。
「――――」
再び、水面より姿を現し、その身を中空へと浮かせている女は彼らは睥睨した。
臨戦態勢を取る彼らをあざ笑うかのように笑みを深め、手を広げた。
すると、水面からいくつもの水流が荒れ狂い、女を包み込んでいく。
「何が、起きているんだ…!」
湖は、枯れ果てた―――否、『浮上』した。
それは正しく「水の星」だった。しかし、これほどまでに禍々しさを纏う星は存在し無いだろう。
鳴動する星から、あの女の声が彼らの頭に劈くように響き渡る。
「沈みなさい」
沈め。沈んでしまえ。そして、私が受け入れよう、と女は妖しく言った。
イリシアは咄嗟に周囲の仲間たち見る。
巨大すぎる敵に戦意は折れていないが、それでも状況の打破を見出す意思の強さを揺らされていた。
「……」
ふと自分の手を見る。小さく、震えていた。だが、それでも―――。
「皆……私が、アレを何とかしてみせる。だから、逃げて」
「!!」
イリシアの言葉に、一同は驚愕と共に彼女へと振り向き、声を上げる。
「ま、待て! あんな巨大なものを一人で食い止めるつもりか!? 無謀すぎるっ、早まるんじゃあ無い!!」
声を荒げながらも、必死に諭すようにリヒターは声をかける。他の一同も同意見だった。
全員の力を合わせれば打破できる。そう信じて、彼女を押しとどめようとした。
「―――本気、かい。イリシア?」
セイグリットだけが、平静と、厳格な様子で問いかける。
イリシアは彼女の方へと真っ直ぐ視線を向ける。二人は半神として、姉妹として、親子としての関係がある。
これはセイグリットがかつて代行体レプキアと共に半神を育てた事が起因している。
「…うん。怖いけどね………皆をビフロンスに逃がして。キルレストが戻ってきたら……また別の探索をすればいいから」
ツェーラス湖の水でなければならない、と言うわけではない。
キルレストなら他の世界にあるだろう素材となる水の居場所を知っている筈だから。
「此処で無理に命を減らす必要な、無いよ」
イリシアは自然に、微笑を浮かべた。その微笑に、セイグリットは込み上げる感情を押し留め、身を翻す。
「……アンタがそこまで言うんだ。どうしようも、ないさね」
「くそ! 俺は……俺は!!」
「無下にするな。行くぞ―――それで、いいんだな」
抵抗しかけたリヒターの腕を強く握り、ベルモンドは冷厳とイリシアに聞く。
彼女は頷き、他のもの達も覚悟を決めて、身を翻す。
唯一人を除いて。
「いやだよ、イリシア!」
「……アルマ」
鎧う彼女の悲痛な声に、イリシアは複雑な表情を見せる。しかし、それでも。
「―――行って」
「イリシアァ!!」
「急げ、来るぞ!!」
ベルモンドの一声と同時に水の星から無数の、水の砲弾が放たれてきた。
イリシアはそれを身に纏った『ヴァッサー』で彼らに当たらないように護りとおす。
「……ッ!!」
そうして、セイグリットたちは全速力で撤退していく。アルマは鎧の中で涙を流す。
それでも、足はかけ続ける。背中を押した彼女の意思に、従うように。
仲間たちが森の中へと入っていく。イリシアは安堵の微笑を送り、眼前に浮かぶ「水の星」に挑む。
水の星の中心に居る女は冷笑と共に残った彼女に声をかける。
「―――あなただけで、私を食い止めれるとでも?」
その気になれば、大津波となって彼らを森諸共呑みこめるわ―――と女は不敵に言う。
イリシアはその言葉が単なる嘲りではない、事実と認識している。
「侮蔑(あなど)るな」
怒気を言葉に纏わせ、反論する。
「我は、レプキア―――そして、イリアドゥスの『半神』。万物普遍の水を司る。
お前を食い止めるだけで済ませるものか」
手段は、あった。
たった一つだけの、手段が。
それは―――。
「ハァァァッ!」
迫り狂う無数の水の攻撃を掻い潜り、一気に水の星へと突っ込んだ。
女は冷笑を通り越し、嘲笑、哄笑を上げた。
「アハハハハッ! 自滅でもする気か!? 無駄ね、私の『中』に居るんだもの。取り込んであげる。
水の半神、なら―――『水に還りなさい』ッ!」
「……」
女は力を込めて、内部に居るイリシアを、ヴァッサー諸共取り込もうとする。
しかし、取り込まれる気配は無い。その意味を、女は直ぐに理解した。
「ッ! おまえ…! 逆に『取り込む』心算かァァ――――!?」
最初に、イリシアがこの湖の水を回収する際に行った吸収を、今度は、この「
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