「……っ」
イリシアはセイグリットの声に、彼らの勇姿に苦笑と共に涙を浮かべる。
そうして、攻撃を掻い潜り、無事に地上に降り立ち、木にもたれかけた。
「酷く衰弱しているな…」
「あんな化け物に食われかけたんだ、無理もない」
ディアウスがイリシアの容態を見て、応急処置としての回復魔法を施し始める。
彼に続いて、リヒターもアルマを下ろして、イリシアへと駆け寄った。
そして、リヒターも彼と同様に全力の回復魔法を唱え、施した(専門術者に比べれば劣るが四の五の言わずに「全力で」実行するのが彼の長所だ)。
「…イリシア、大丈夫?」
傍らに居る鎧っていたアルマは一旦姿を解き、彼女へと話し掛ける。
「うん」
不安そうに自分を見る彼女を宥める様に、これ以上気持ちを揺らがないように自分らしくない確りとした声で応じる。
「イリシア。あの敵の正体は―――」
「……『湖』そのもの」
ベルモンドが問いかけた質問は、確信をもって彼女に尋ねた。。
そして、イリシアの答えに、やはりと、呟いた。
「本当なのか!?」
確認するように、リヒターは大声で問いかける。イリシアは声に竦みつつも頷いた。
驚きを隠せずにいる彼は呆然とした眼差しを敵へと投げかける。しかし、直ぐに戦士の眼差しでイリシアに再度質問する。
「倒せる……そうだな?」
「その、つもり」
その言葉に、彼は笑みを浮かべて立ち上がる。
「よし―――先に行くぞ、ベルモンド」
リヒターの全身から闘志が溢れているように、彼らは見えた。または、口の端からは火を噴いた様にも錯覚した。
「では、遅れないようにしないとな」
「……すぐに、向うから」
「治癒を施したばかりだ、無理はするな」
そう言って、ベルモンドもリヒターの後を追いかけて行った。
イリシアは去っていく彼らを見据え、
「あれを倒す……でも、方法が見いだせない」
「…確かに」
彼女の言葉に、アルマは頷き、此処からでも見える「水の星」を見る。
仲間たちの攻撃を受けても、それは結論――『水を攻撃する』だけだ。
アニマヴィーアもまた、同様の類だ。表面上、ダメージを与えても―――。
「ううん、こんなのじゃあ…姉さんたちに怒られる」
不安になりがちな思考を振り切る様に、正すようにイリシアは口にする。
出立する前、姉たち――アレスティア、シムルグ、ブレイズ――が応援の一声をかけてくれた。
「イリシア。不測の事態になっても混乱せず、不安や自閉になってはダメよ?」
彼女の頭を撫でながら、長姉たるアレスティアが諭すように言う。
「まあ、慌てず自分の力を生かしなさいな。アンタの力は立派なものなんだからね」
続いて、彼女の額を軽く小突いて次姉たるシムルグが飄々と言う。
「その通りだ。お前の力は水。半神としてのお前は―――強い」
妹の様子を温かな笑みと共に、三姉たるブレイズが凛然と告げた。
「―――アルマ。行こう」
「解った」
強い決意を秘めた眼差しに、アルマはこれ以上声をかける必要はないと察して了解する。
アルマは再び、鎧を纏い、イリシアはヴァッサーを具現化して、ベルモンドたちの後を追いかけた。
戦闘は苛烈を極めた。
水の星を背に、アニマヴィーアは武装形態と共に、セイグリットたちと戦っている。
「このッ…!」
アニマヴィーアは忌々しく吐き捨てると、手に在る剣の剣尖を向け、水の斬撃と水の星から幾つもの圧縮放射で攻撃する。
「凍てつけ!」
冷気を纏ったプリティマの放つ槍のような弾丸が連続で放たれ、放射と激突して凍りつかせる。
すかさず、セイグリットが流星群を放つ事で氷結した水流は粉々に砕け散る。
瞬間、水の星の頂点部分からアニマヴィーアは姿を現し、下にいる彼らに睥睨と共に剣尖を向ける。
動作に連なり、水の星は大きく形を変え、彼らを喰らい、呑み込まんと牙を剥いた。
「ぬぅうおおお!!」
迫る牙に、劣るも巨大な灼焔の拳が現れ、水の牙を食い止める。抑え込む力を増すように拳の操作するベルモンドが吼えた。
「急げ!」
ベルモンドの一喝と共に、プリティマたちは牙から逃れた。
「――おらああ!」
無事に離脱するとともに、一気に力を高める。食らいつく牙を押し上げた。
「よし!」
ディアウスは喝采にも似た喜色の声で、攻撃が砕かれるのを見た。
「……」
刹那、牙は飛沫となって散り、残った水の星の頂にいるアニマヴィーアはリヒターへと剣先を向ける。
「――ぐ、がぁ!?」
「なにっ」
彼の躰に無数の傷が走る。ベルモンドは驚愕と共に、現象の正体を見ていた。
高速で放たれた小さな水飛沫が、無数の弾頭となって打ち出されたのだ。
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