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メモリー編14 「流れる記憶」

 白い無機質な材質の廊下を走りながら、一行は先に進むリュウドラゴンを追いかける。
 やがて一つの記憶の歪みを見つけると、リュウドラゴンは立ち止まって鳴きながら首を動かした。

「どうしたんだろ?」

「『この中に入れ』って催促してるように見えるが…」

 行動の意味が分からないオパールに、リクが思った事を口に出す。
 すると、リクの言葉で合っているのかリュウドラゴンはコクコクと首を縦に振った。

「行きましょう」

「あ、ウィド!」

 さっさと歪みに入るウィドに、シーノが慌てて追いかける。
 リクとオパールも歪みへと足を踏みいれるが、リュウドラゴンは後を追いかけずにその場を動かなかった。
 彼らの帰りを待つかのように。



 初めに目の前に広がったのは、一面白い壁で覆われた広間だった。
 周りには真ん中を囲むように無機質な白い椅子が置かれているが、それぞれ高さが違っており、黒コートを着たさまざまな人物が腰かけている。
 もっと詳しく見ようとするが、どう言う訳か身体はもちろん視点すらも動かない。しかも視界も靄がかかったようにぼやけている。

「本日は記念すべき日となる」

 一つの声が、円卓全体に響き渡る。
 同時に、周りの空気が変わった。

「我々に新たな仲間が加わる事となった」

 その言葉を合図に、こちらに視線が一斉に注ぎ込まれる。

「14番目だ――」

 言い終わってから、急に視点が動く。
 そうして見えたのは、椅子に座った黒コートを着たヴェンと同じ顔の少年。
 何処か虚ろげにこちらを見る彼が映り―――意識が途切れた。



 記憶を見終わり元の場所に戻って来ると、四人を労う様にリュウドラゴンが一声鳴く。
 しかし、四人はそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。

「今の記憶…何だか、今までと違う」

 オパールが頭を押さえながら、今まで巡って来た記憶を思い出す。
 ルキルの記憶を見る際、その情景の中に入り込む第三者の感覚で見て来た。だが、今の記憶は自分の意思で身体を動かす事は出来なかった。
 言い換えるならば、これは…いや、ここからは全て他人の視点から見る記憶になるのかもしれない。

「それより、]V機関って言うから13人しかいないと思っていたけど…違うのかい?」

「いや、機関のメンバーは全部で13人の筈だ。全員には会ってはいないが、それは確実に言える」

 シーノの疑問に、機関との戦いに関わっていたリクは否定を出す。

(だけど…何だ、この感じ?)

 自分の言った事に間違いはない。それなのに、一瞬頭に何か引っ掛かりを感じたのだ。
 リクが思考に更けようとした時、リュウドラゴンがまた走り出した。

「あ、また何処かに行くつもりだ!?」

「追いかけますよ!」

 見失わないようシーノとウィドが走り出し、リクも考えを中断して後を追いかける。
 少し走った所で、黙ったまま動いていないオパールに気付いて大声で叫んだ。

「どうした、オパール!」

「ご、ごめんっ!」

 我に返ったのか、オパールはこちらに向かって走り出す。
 ちゃんと後をついてくる姿を見て、リクは再び先に行ったウィド達を追って走り出した。

「…アイザ…」

 その所為で、ポツリと呟いたオパールの声はリクの耳に届かなかった。



 さわさわと風で靡く木々の間から、月の明かりが零れる。
 一見すると静かな光景だが、辺りには絶え間なく金属がぶつかり合う音が鳴り響いていた。

「「――だあぁ!!」」

 気合の入った掛け声と共に、ギィィンと甲高い音が響く。
 その中心には、黒髪の少年と金髪の少女がそれぞれ武器である剣を持って互いの刃を打ち合わせていた。

「…今日はここまで、だな」

「そうね…」

 黒髪の少年――クウが口を開くと、スピカも了承するように剣を下ろす。
 戦いが終わりクウは手に持っているキーブレードを消す横で、スピカは銀のレイピア――シルビアを鞘に納めた。

「ありがとう、いつも鍛錬に付き合ってくれて」

「…暇、だからな」

 笑顔でお礼を言うスピカに対し、クウは顔を逸らして何処かぶっきらぼうに答える。
 そんなクウに小さく笑うと、急にスピカは思い出す様に話しかけた。

「あなたが私達の家に来て、どれくらい経ったのかしら…?」

「もう3年は経ってる。これを持ったのが、この孤児院に来て1年ぐらい経った時だからな…――今でも覚えてる」

「クウ…」

「俺が両親無くして、師匠達に拾われて。なのに、二人にここに連れて来られた時『また捨てられたんだ』って思ってた。だけど…こうしてスピカと出会えて、本当に良かった」

「もう、クウったら…!」

 笑顔でそんな事を言われたからか、スピカの頬がほんのりと赤くなる。
 それに便乗する様にクウも笑っていた
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