トワイライトタウンの、町のある一角。
未だに霞んで見える光景の中で、ヴェンに似た黒コートを着た少年はこちらを見ていた。
「今日も俺は寄る所があるから、先に帰還してくれないか」
それだけ言うと、少年は背を向けて歩きだした。
瞬間、視界全体に掛かっていた霞が少しだけ取り払われた。
「ロク…サス…」
「えっ?」
何処か聞き覚えのある少女の声と共に、少年―――ロクサスが驚いた様に振り返った。
「“―――”…?」
何か呟いた様に口を動かすが、声は全く聞こえない。
「ロクサスって――呼んでいい?」
「ああ」
何処か嬉しそうにロクサスが頷くと、満足したのか後ろを振り返る。
そのまま背後にあった闇の回廊へと入り込み、映像が途切れた。
「ロク、サス…?」
リュウドラゴンに案内されながら入った歪みの場所に戻るなり、記憶で見た少年の名前を呟くウィド。
気持ちは一緒なのか、シーノも事情を知るであろうリクへと視線を投げつけた。
「リク…君は機関について知ってるんだよね? じゃあ、ヴェン――いや、ロクサスの事は知ってたの?」
「ああ…だから、俺も初めてヴェンを見た時は驚いた。だけど、名前が違う様に二人は別人の筈だ」
「…どうしてそう言い切れるんですか?」
少しだけ興味を持ったのかウィドも問いかけると、リクは少しだけ黙りこむが覚悟を決めたように答えた。
「ロクサスは…ソラのノーバディなんだ」
「「ソラのノーバディ!?」」
リクの発言にシーノとオパールが驚く。ウィドは黙っているが、目を細めている。
「少なくとも、ヴェンにはノーバディの気配は無かった。ソラだってハートレス化はしていない。それに二人の性格も違うから…別人だと俺は思ってる」
「そっ、か…ノーバディ…」
「あ、その…すまない、オパール」
明らかに落ち込むオパールに、思わずリクが謝る。
そんな二人とは別に、シーノの中でどうしても不可解な謎が生まれた。
「でも、何でソラのノーバディとヴェンの姿はそっくりなんだろう? 何か繋がりがあったのかな?」
そうやって思考を巡らせていたが、リュウドラゴンの鳴き声が突如響く。
見ると、少し離れた場所にある記憶の歪みの前でこちらを呼ぶように鳴いていた。
「また呼んでる」
「今度はなんの記憶です?」
「行くしかないさ」
オパールとウィドが疑問を浮かべる中、リクは先陣を切って歪みに近づいて中に入る。
それに続く様に二人も歪みへ入り、最後にシーノも入ろうとした所である事に気付いた。
「歪みが増えた…?」
一つしかなかった筈の歪みが、いつの間にかあちこちに存在している。
この現象にシーノは立ち竦むが、すぐに後を追いかけた。
トワイライトタウンの街並みが見える時計台。
さっきよりもより鮮明となった映像の中、握っているアイスが目に入った。
「何かあったのか?」
声のした方を横目で見ると、そこには食べかけのアイスを持っているロクサス。
その奥にはアクセルもいて、同じようにアイスを持ったまま不安げにこちらを見ている。
「悩みがあれば友達に話すもんだ。そうだろう、ロクサス?」
「俺達…友達だろ?」
二人の言葉に、再びアイスに視線を落とす。
「キーブレードが、使えなくなっちゃったの」
そう言うと、堰を切ったように話し続ける。
「キーブレードが使えないと、ミッションを遂行できない」
「一体何があったんだ?」
ロクサスが問うと、首を横に振る。
「わからない…でも、キーブレードでハートレスを倒さないと、ハートレスから心を解放できてもその心はまたハートレスに取り込まれてしまう。一時的にハートレスの存在を無くすことしかできない。あたしはハートの回収をしなければならないの。だからキーブレードが使えなかったら…あたし…用無しになっちゃう…」
「何とかできないのか、アクセル」
「何とかって言われても…俺にはどうしようもない。キーブレードがなけりゃハートを回収する事は出来ない」
「このままじゃ…あたし、ダスクにされちゃう…」
胸の内の感情が抑えきれなくなったのか、今にも泣き出しそうな声を上げる。
少しだけ滲む視界の中、ロクサスの声が聞こえてくる。
「どうにもならないのか?」
「だから、どうにもならねぇって――待てよ」
「何かいい方法があるのか?」
何かを思いついたアクセルに、すぐにロクサスが喰いつく。
「ロクサス、お前が頑張ればいい」
「え?」
「どう言う事?」
ロクサスと同時に聞き返すと、アクセルに視点を向ける。
視界に映ったアクセルは、何処か優しく笑っている。
「“―――”がキーブレードを使えるようになるまで、必ず二人で行
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