仮面の女の一件、それらの情報を知る王羅たち『旅人』を神無の家で匿うこと数日。
敵の奇襲は無く、平穏の限りであった。しかし、気を緩める事も無く旅人たちは極力、家の中に居座り、今後の行動を何度も何度も話し合う。
「―――神無」
客室には神無を初め、王羅やローレライら旅人、飲み物を運んでいたツヴァイも含めて数名の多さ。その中、一人だけ異質さを漂わせた人物が居た。
燃える赤なる茜色の双眸、髪をした女性で彼女は割り込むように開口し、神無に声をかける。
「今から『例の特訓』だから家を出る」
「ああ。気をつけていけよ」
了承の返事を受け取った凛那は部屋を出、部屋の前に待機していた紗那、ヴァイ、アーファ、イオン、ペルフセフォネら5人と共に家を出て行った。
彼らを見送りからツヴァイが部屋へと戻り、王羅はにこやかに話しかける。
「凛那、さんでしたか。不思議な人……んー、刀? まあ―――製造者があの『伽藍』だからかな」
伽藍の名を呟く顔には複雑な顔を浮かべて、頬を掻いていた。
『器師』伽藍(がらん)。
旅人の中でも異様異質の旅人で、最初は自らを不老のために黒魔術に傾倒するが、様々な分野の技術を吸収する事があるために多種多様な才能を開花している鬼才。その鬼才に頼った一人が、王羅であた。
彼女―――彼はかつての体は病により寿命の限界を迎えていたが、伽藍の手により病は失せたが、どういうわけか『男から女』の体に弄くられた。その後、改めて改造を依頼したが体よく断れて終わった。
そして、明王・凛那は伽藍が作り上げた妖刀を越えた『魔刀』だった。炎産霊神の炎熱を堪え凌ぎ、制御下におくほどの耐熱硬度を逆に刀作りの際に炎産霊神の炎熱を常時利用して、完成したのが凛那であった。
「まさか人になるとは思わなかったがな」
思い返す事、王羅たちが家にやってきて、彼らを招きいれた深夜に遡る。神無の家には上階にそれぞれ兄妹の部屋や物置、下の階に玄関を初めにリビングや無轟の部屋と同じ雰囲気と構造をした客室ともう一つ狭めの客室、神無夫婦の寝室がある。
神無は無轟の客室へ入り、静かな足取りで飾られた刀に近づく。何年もの飾られたものだが、幾年月が過ぎても刀の美麗さは削がれずに冷厳と存在している。
「―――親父の遺言だ。次の担い手、神無としてお前を振るう」
無轟の遺言はいくつか存在している。その一つが彼が使用していた愛刀『明王・凛那』の相続だった。彼のために創られた刀を神無は柄を掴んだ。
溢れんばかりの熱が掌中を焦がす感覚に襲われる。唯一振るう事を許されているのは無轟だけなのだ。過去、この刀を無用心に触れた者は数週間の合間、呪いにも似た火傷に苛まれる。
「くっ、今の俺じゃあ……どうしようもないんだよ……頼むッ」
火傷を堪えながら必死な声で説得すると、痛みは引き、刀が赤く輝いた。
その輝きに眼を奪われ、視界を回復すると輝きはもうなかった。更には自分が掴んでいた凛那の感触も無い。手放したのかと周囲を探ろうとした。
だが、刀の姿は無く代わりに眼前に立つ姿に気づかされる。
「何やら騒がしいと思えば、神無――お前か」
「……凛、那?」
目の前に居る者――茜の髪、双眸をした女性に名を呼びかけると片笑みを浮かべ、頷き返した。
「―――まあ、協力してくれるってのは確かだ」
凛那への会話を一区切りしてから、神無たちはカルマの事件会議を再考する。
一方、凛那と一緒に出かけた紗那たちは町外れの廃工場で特訓をしていた。凛那が一人で紗那たちと戦うというのが特訓の内容だった。ペルセフォネは遅れてきたイオンと刃沙羅と共に特訓の様子を見ている。
そうして訓練が一先ず終了し、雑談へと話は移り変わっていた。
「神無からは事情は聞いた。少ない戦力を補うのは理にかなっている――だが、私は彼の剣として振るう事を拒んだ」
紗那たちの問い――なぜ仲間になったのか、人へとなったのか、に凛那は淡々と答えていた。
「拒んだ?」
「……我はあくまで無轟の刀だ。幾戦、自分と共に在ってきたのは彼だけだった。それを易々と掴まれるのは嫌なんだ」
凛然としていた凛那のどこか遠くを見る目は想いを宿している目だと3人は理解する。
「だから、モノに魂が宿り、『ヒト』と言う形になれたわけだ。ツクモガミというのか?」
「まあ……ヒトになるのって言う時点で奇跡だがな」
休んでいる凛那たちに歩み寄ってきた長身の男――刃沙羅と、イオン、ペルセフォネたちが来た。
「それじゃあそろそろ帰りましょう」
イオンの穏やかで、どこか疲れた声と共に特訓を終え、紗那たちは神無宅へと帰って行った。
神無宅・庭にて
「……まさか、向こうさんからやってくるとはな」
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