―――そして、ベルモンドたちはイリシアが水の星に包み込またのを見た。
それからアニマヴィーアの動きが完全に止まっていることに疑問を抱く。
静止した水の星から目を逸らせず、沈黙が包まれた。
「…イリシアは、どうなったんだ」
リヒターが恐る恐る誰に聞くでもなく、口火を切る様に呟いた。
誰も答えない。ただ、水の星を見つめるしかできない―――。
「……」
同じ半神であるセイグリットは皆の表情とは違う様子で、水の星を見据えている。
彼女を信じている、だけではない。共に日々を過ごして、彼女の性格も知っていた。
普段のおっかなびっくりの性格に秘められた自分を犠牲にしてでも、自分たちを守ろうと戦い抜こうとした気骨を。
― 半神だけが繋がりしかない。
わずかな期間で紡がれた絆を大切にしたい。 ―
イリシアは、神無たちとクウたちとの交流を経て、そう語った。セイグリットは次第に悲しみに堪える様に表情を険しくする。
そうして、誰もが沈黙して、僅かな時間の経過も久遠の長さを感じたその時だった。
中空に浮く水の星が崩れ始めたのだった。
「何が、起きているんだ…!?」
これには厳格に言葉を噤んでいたディアウスも困惑するように言う。
星は湖へと戻っていく。
そして、最後の一滴の様に、一人の姿が水面へと落ちていく。
「ッ!」
落ち行くその人物を救出するべくアルマはスピードを最大限に飛んだと表現していいほどに駆け出す。
――間一髪、水面に叩きつけられる前に無事に受け止めることが出来た。
安堵と共に深く息を吐き、ゆっくりと見やる。
「―――え…? イリシア……?」
不意に呟いた。思わず確認するかのように誰に聞くでもない、名前を問うた。
抱き留めた人物は―――見目は先ほどの彼女(イリシア)よりも成長した姿に思えたのであった。
あどけない臆病な少女から見目麗しき女性の様に。
しかし、一先ずは、仲間たちの下へと急転回した。
そうして、救出されたイリシアと思われる女性を介抱する中で、皆は一先ずの休息を取っていた。
あの異質な戦闘に各々、傷や疲労の色を隠せずにいる。
「にしても……あれはなんだったんだ? 湖そのものって言われても理解しきれんぞ」
その中でリヒターは湖の方を一瞥して、疲れた様にうなだれた。
疑問に、ほとんどの者が口を噤んだ。答える自信は無いし、確証もない。
唯一の事実を知っているのは他でもないこの女性だけだ。
「さあな。その娘(こ)なら知っているだろうな」
静まりかけた雰囲気を裂く様に、妻のプリティマに傷を看て貰っているディアウスが言う。
それと共に一同の視線が女性へと向けられたその時。
「……うっ」
静かな寝息を立て、意識を失っていた彼女は呻き声と共に、ゆっくりと目を覚ました。
傍で看ていたアルマは安堵と共に嬉々とした様子で、手を取り声をかけた。
「イリシア…ッ!」
「あぁ、目が覚めたかい?」
打って変わってセイグリットが興奮気味なアルマを宥めつつ、他の皆もイリシアの顔を覗き込むように近づいてきた。
一気に向けられた彼らの視線に戸惑いながらも、不思議と混乱していない思考で、状況整理を始める。
(……確か――アニマヴィーアを倒そうとして……ああ、うまくいったみたいね……よかった)
仲間たちがこうして無事ならば、結論はそうだと理解した。
自分の命を擲つ覚悟で、あの戦術を取った。
とりあえずは、仲間たちの無事を確認するかのように問いかける。
「――みんな…無事みたい、ね…」
「ええ、イリシアのお陰よ。これで二度目ね…」
プリティマは困ったように微笑する。
一度目は、一人で殿をさせた時、二度目は水の星を食い止めた時だった。
「まったく…意外と胆力のある奴だ」
イリシアの言葉に、ベルモンドが呆れた賛辞をたたえた。周囲も同意の様子であった。
そう言われると少し顔が赤くなる。その様子に一同は陽気に笑いあう。
「―――で、なんで大きくなってるの?」
「え?」
笑いあった末にギルティスの問いかけで、漸く自分の状態が変化して居る事に気が付く。
女性として成長したその姿に、戸惑う声を漏らして、思わず視線を向けてセイグリットに助け舟を求めた。
その視線に気づいた彼女は少し考える様にしながら言う。
「イリシアー…アンタさあ、今『妙に力が湧き上がってたり』していないかい?」
「……」
今一度、確かめる様に感じる。
彼女の言うとおり、それは奇妙な昂揚と力の鼓動だった。
明確に言えず小さく頷き返すと、やれやれと頬を軽くかく。かいたその指でイリシアを指差す。
「――だとすりゃあ、取り込んだことで躰が適応
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