突如聞こえた場違いな鳴き声に、二人は抱き合ったまま顔を向ける
自分達がいる坂の一番下、そこにピンクの色をした犬とも猫とも言えない不思議な生き物がこちらを見上げていた。
「なに…この生き物?」
「こいつも、ドリームイーターなのか?」
どこからともなく現れた生物に、思わず観察してしまう二人。
そうしていると、ドリームイーターらしき生物はトテトテと四足で坂を上り出す。そのまま座り込んでいるオパールに近づくと、全身を足に摺り寄せて来た。
「ん…ありがと」
まるで慰めているような行動に、オパールは涙を拭うと僅かに笑みを浮かべてドリームイーターの頭を撫でる。すると、ドリームイーターは嬉しそうに先端が花の形をした尻尾を振る。
その愛くるしい仕草にオパールが笑みを溢していると、急にリクへと視線を戻す様に見上げ始めた。
「ね、リクも撫でてみたら?」
「お前な、本気で言ってるのか?」
「もちろん。ほら、さっさとやる」
「わ、分かったよ…」
腕を解いてオパールを放し、隣に座り直す。彼女に言われるままに手を伸ばし、ドリームイーターの頭を触る。
しかし、触った部分が悪かったのか急に怒ったような鳴き声を上げリクを威嚇し出した。
「うわっ!」
「もう、ぎこちないんだから。もっと優しく撫でなさいよ」
「そんな事言われても、俺はこういうの…」
「ほら、手を貸して。力も抜く」
「え、あっ…!」
無理やり手首を握られると共に、されるがままに再度手をドリームーイーターへと伸ばす。
オパールに動かされる状態で今度は胴体の横の部分を撫でさせられる。すると、ドリームイーターはさっきとは違って気持ち良さそうに目尻を下げるとその場に寝そべった。
「ねっ、簡単でしょ?」
「…そうだな」
頷きつつ、オパールの助け無しでドリームイーターを撫でてみる。相変わらずそこが気持ちいいのか、目を細めて嬉しそうにキュウキュウと鳴いている。
動物との触れ合いは少し抵抗があるが、こうして直に触って気持ち良さそうにしているのを見ているとこっちまで嬉しくなる。いつしか隣にいるオパールと穏やかで心温まる一時を楽しんでいると、ドリームイーターが転がる様に手から離れてしまう。
横に転がったドリームイーターは手摺の手前で止まるなり、飛び跳ねてその上に着地する。そうして広間でも見たハート型の月を眺め出すので、二人も立ち上がってドリームイーターの傍に近づいた。
「ハートの月なんて、不思議…あれって何だろ?」
「キングダムハーツ。機関がハートレスから解放された人々の心を集め、作った物だ」
「キングダムハーツ…機関が、ゼアノートが求めていたモノ…」
オパールは手摺の上に腕を組む様に置くと、リクの言葉を噛み締めるように呟く。
何だか微妙な感じの空気に包まれる中、急にリクが手摺に腕を乗せて俯き始めた。
「俺は…間違っていたのかもしれないな」
「え?」
突然の話にオパールが振り向くと、リクは暗い表情を浮かべている。
「忘却の城の記憶は見ただろ。あの事件の後、ソラは記憶の修復の為に眠る事になった。だけど記憶を元に戻す為には…ロクサスの存在がどうしても必要だったんだ」
こちらを見るオパールに、リクは尚も目を合わせない様に説明する。
ソラの記憶が一年もの間修復出来なかったのは、ソラの半身であるロクサスが原因だった。彼がノーバディとして生まれた事で、ソラはハートレスから人の姿に戻っても不完全な状態だったのだ。
「ソラを目覚めさせるため、俺はロクサスを倒してソラの中に戻した…いや、あいつを消滅させたんだ」
そうしてリクが言わなければならない事を告げると、隣で聞いていたオパールはただ一言呟いた。
「そっか」
「驚かないのか…?」
「何となく、予想してたから。あたしだって、それなりにノーバディの知識はあるのよ。それに…あんたの事も恨んだりしない。ソラの為にやった事なんでしょ?」
リクがした行いを受け入れて許そうとするオパール。それに対し、リクの中では罪悪感が募っていく。
「だけど、ロクサスにも居場所や親友がいたのに……俺は自分の目的の為にあいつを犠牲にしたんだ。だからアクセルは、ロクサスを取り戻そうとソラをハートレスにしようとしたりカイリを浚ったりしていた」
「リア…」
この後に起こった出来事を話すと、明らかに表情を曇らせるオパール。
手摺の上にいるドリームイーターも話に感化されたのか顔を俯かせて悲しそうな仕草をする。そんな彼女達に、リクは顔を上げないまま問いかける。
「なあ、オパール。あの時の俺は、どうすれば良かったんだろうな?」
誰かを犠牲にして手に入れた未来。だけど、同時に誰かの未来を奪ってしまった。傷付き
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