森に囲われた視界の悪い場所で、残るテラたちが偽物の自分たちと戦闘を強いられていた。
現れた偽物たちは本物に引けを取らない連携を伴って攻めかかる。
「気をつけろ、来るぞ!」
しかし、それは本物である自分たちも同義であった。
偽者の連携攻撃に迎撃――強烈な一撃を振り放つテラ、
迅く怒涛に斬り込むヴェントゥス、
その二人の隙間を縫うように無数の魔法と冴え渡る剣技を繰り出すアクア――する。
両者の攻撃は総じて相殺され尽くす。
――が、構わずに次なる一手に出た。
更には言葉で作戦を交わす事も無い。
お互いに、本能的に、『自分へ攻撃対象(ターゲット)を変更する』のであった。
「――――ッ!」
正しく苛烈、鮮烈な攻防一対の嵐だった。
二人のテラの荒々しい斬撃は空気を震え上がらせ、
二人のヴェントゥスの迅い連撃は影すら捉えず、
二人のアクアの冷徹な魔と剣は舞踏の如く美しい戦いを繰り広げる。
「うおおおおぉおおおぁぁっ!!」
「はぁぁああああああっ!!」
二人のテラが吼える。鍵剣に纏った強力な闇のオーラを帯びた一撃を振るい、
「倒れろ、偽者ッ!」
「そっちこそ!」
二人のヴェントゥスが叫ぶ。高めた光の力による輝きを伴った剣戟を閃かせ、
「早く消えなさい、この偽者…!」
「出来るものなら―――やってみなさい…!」
二人のアクアが吐き捨てる。無数に踊り狂う魔法の砲火と共に、激しく。
そうして。
それぞれがそれぞれの戦いに思考を沈めていった。今、他者を慮る必要は無い。
他者――仲間たちなら『必ず勝ち残る』と信じているからこそ、思考のソトへ追いやる。
その想いは、真贋同じでも在った。
そして、その真贋たちの戦いを密かに銀の梟たちは見つめ続けた。
森の奥へと進む一人の人物。異装に身を包む男―――クォーツは『此処』への興味を抱いていた。
神の聖域レプセキアに続いて、重要な地でもあるこの心剣世界に、だった。
「ふむ、存外…」
一先ず足を止め、水晶に映るテラたちの戦う様子を一瞥する。
偽者との戦闘、自分が想像していた状況と異なる戦況に視線を鋭くする。
「……何事も順調とは言い難い物ですね」
レプセキアの件も、今回の件も満たされない成果と結果になるのではないか―――という諦観を抱きそうになる。
「―――」
水晶から目線を落とすして、ため息も零す。
益体も無い。成果と結果が満たされないのはいつだってそうだった。
自分がノーバディになってしまった事も、そうだった。
「……おや」
「むっ」
気配に気付くや、水晶をゆるやかな動作で隠した。思考にふけ過ぎたようだった。
彼が遭遇したものたち―――戦闘から離脱のために行動していたアルビノーレとレイアであった。
「問う。―――敵…か?」
言いながらもアルビノーレはすぐさま警戒態勢に身構える。
レイアも杖を握り締め、冷静に考える。
(此処に私たち以外の人……間違いなく、敵……!?)
「そういえば、あなた達は上手く離脱していたのですね…ルートにハマってしまうとは、いやはや」
クォーツはわざとらしい、困ったように肩を竦めながら戦闘の姿勢(スイッチ)を入れた。
偲び持つ宝石を幾つか手に取り、不意の一撃を見舞おうとする。あくまでもこの場から離脱するのは、自分の方だ。
「―――『幻光の琥珀(ミラージュ・アンバー)』!」
宝石を地面へ叩きつけると同時に、琥珀の閃光が二人の視界を支配する。
「!?」
アルビノーレは、敵が先手の一撃を放とうとする事は読めた。しかし、それが目暗まし、戦線離脱の一手とは読みきれなかった。
追撃するには危険すぎた。傍にはレイアがいる。護衛しなければならない以上、攻勢は必要以上に不要だった。
「―――っ、無事か?」
琥珀の閃光が消え、ゆっくりと視界が回復する。
アルビノーレは視界を眩まれる前にどうにかレイアを掴むことができた。
「あ………はい、大丈夫ですクウさん―――あっ」
視界がおぼろげに回復する中でレイアは掴んだ彼の手の強さに、意中の男性の名を呼んでしまった。
思わず零れた名前にレイアは顔を真っ赤になる。
彼の手を振りほどけばよかったかもしれない。だが、それを実行できるほどの力も思考の余裕もレイアには、ない。
「すまない」
アルビノーレも罰が悪そうに掴んだ手をゆっくりと放す。
そして、直ぐに気を紛らわす微笑みで言う。
「やはり、大切な人の方がいいものか?」
「え? ええっと…!?」
畳み掛けるような不意打つ言葉にレイアは混乱の極みであった。微笑はやがて楽しげに色を変え、
「はは。からかい過ぎたな―――悪かった」
そ
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