様々な機械で作られた薄暗い部屋。あちこちにある電光板の光だけが明かりの代わりとなっている。
その部屋の壁際で気を失って傷だらけのクウに、癒しの魔法を放つレイア。
緑色の光に包まれながらもう少しで傷も治り全快となろうとした時、クウの目が開いた。
「ううっ…!」
「クウさん、大丈夫ですか!」
「レイ、ア…!?」
レイアの心配そうな表情を見て、クウは痛みを堪えるようにゆっくりと上体を起こす。
「クウさん、動かないでください! 怪我はまだ完治出来て――!」
「そんな事はどうでもいい!! どうしてここに来た!?」
助けて貰っている筈なのに、構う事無くレイアに向かって怒鳴りつける。クウに怒られた事に対し、レイアは肩を震わせて身を縮ませる。
「あの、私…!」
「分かってる、大方ソラ達と来たんだろ!! ちくしょう、ウィドもいない…!! とにかく、お前はすぐにでも戻れ!! 今回ばかりは巻き込んでいい問題じゃ――!!」
「嫌です!!」
クウの怒鳴り声を遮りながら、レイアが叫ぶ。
普段の内気な彼女が年上、しかも思い人に対して反論なんて事はしない。それに気付きながらも、クウも引く事はしなかった。
「言う事を聞け、レイア!! ソラ達と連絡取れるなら、あいつらにも戻る様に伝えろ!!」
「なんで…!」
怒られている事に不満を感じたのか、レイアは小さく呟くと目を鋭くしてクウを睨んだ。
「何で、今になってそう言う事を言うんですか!? 私は、私達はクウさんの力に…みんなの力になりたくて、ここまで来たんです!! なのに、どうして…!!」
とうとうレイアの目から一つ、二つとポロポロ涙が零れ落ちる。
泣かせてしまったレイアの姿を見てようやく落ち着きを取り戻したのか、クウはさっきまでの気迫を失くし壁に背を付ける。
「そうじゃない…そうじゃないんだよ…!!」
力無く頭を振ると、泣いてしまったレイアへと理由を話し出した。
心にある自分の思いを。
「俺は、もう誰も失いたくない…傷付けたくないんだよ…! それにお前らまで関わったら、嫌でもこの世界の残酷な真実を――」
そこまで言った瞬間、クウは我に返って口を手で押える。
だが、ちゃんとクウの話は聞こえていたようでレイアは泣き止んで訊き返す。
「しん、じつ…?」
目を瞬かせてじっと顔を見上げるレイアに、クウは明らかに居心地が悪くなり顔を逸らす。
この態度に、レイアは不安そうにまた質問をする。
「クウさんとウィド先生が戦っているのは…それが理由なんですか?」
「…少しだけ、な。残りは俺達の問題だ。だから、お前達を巻き込みたくない…巻き込んじゃいけないんだ…!」
本音を語り、クウは再び口を閉ざす。その気持ちが伝わり、レイアも顔を俯かせる。
しばらくの間沈黙が走るが、やがてレイアは顔を上げた。
「――やっぱり、私も行きます」
「レイアっ!?」
思わずクウが叫ぶが、レイアは笑いかけた。
「大丈夫ですよ。クウさんがいれば、私」
直後、レイアの口の動きが言いかけた状態で突然止まる。
そのまま声を発することなく、レイアは静かにクウへと倒れ込む。
その胸に、黒い刃を突き刺して。
「ジャ、ス…!」
倒れたレイアを受け止めながら、クウは目の前だけを見ていた。
右手に握る黒い槍を伸ばし、背後からレイアの胸を貫いたジャスの姿を。
彼の足元に転がっている、深い刺し傷を負ったまま意識を失っているウィドと一緒に。
「お前はあの時言ったな。守ると」
レイアを貫く為に伸ばした槍を元のサイズに戻しながら、震えているクウへと問いかける。
「彼とその手の者を見ても尚、本当に、守ってきたと言えるのか?」
どこまでも冷酷に突き付けるジャスに、クウの堪忍袋の尾が切れた。
「てっ…めぇぇぇ!!!」
レイアを退かすと共にクウが拳を握り、敵となったジャスに向かって飛び掛かる。
が、振り翳した一撃は武器である槍によって防がれる。
「答えろ。お前は何を守ったと言うんだ? どれだけの奴らを守れたんだ? そして…どれだけの者を傷付けた?」
鍔迫り合いの状態で、ジャスは容赦なく言葉のナイフをクウの心へと突き刺す。
これによりクウの表情が歪み出すが、湧き上がる黒い感情を押し殺す様に叫び出す。
「確かに大層な事は言えない、そんなの俺自身が分かってる! それでも、お前を止める事ぐらいは出来るだろ! 何の為にそっち側にいるか分からねーけど、行かせたらヤバイ事だけは分かるんだよ!」
そんなクウの叫びに、突然ジャスの目の色が変わった。
「笑わせるな!! キーブレードもまともに使えないお前に――スピカを救えなかった貴様に、私を止められる訳がない!!」
「
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