「あれは私が使ったアルカナカード『世界』の力だ。
簡潔に言うと『この世界とほぼ同化(リンク)し、超大な力を借り受ける』状態になっていた。
だから、偽者(いぶつ)どもを瞬時に理解し、倒すことができた」
「そんなのが、できるのか…?」
ヴェントゥスをはじめに、アルカナ以外の全員が驚嘆したようすであった。
光の速さともいうべきスピードで悉くを討ち果たした彼の戦闘の様を思い返す。
驚嘆の様に対して、アルカナは困ったような苦笑を浮かべて続ける。
「できる。だが、強大無比な力を授かる事は大きな『代償』を支払うことになる」
「それは…あなたが倒れたように、ですか?」
アクアは小さな畏怖を抱きつつ、その言葉に質問する。
「『半神』という器(からだ)だからこそ、倒れる程度で済んでいる。人間なら即死なものだ。
それに、これを使えるのは私の場合は、『此処』だけだろうしな」
息を呑む一同の中に、アルカナは自ら作った雰囲気を破ろうと微苦笑を浮かべた。
「何、これくらいはすぐに回復できる」
言うと共に、立ち上がった彼は話を続ける。目的の話へ。
「――それよりも、素材の剣の居場所がわかった。すぐ近くにある」
「見つけていたのか?」
「いや。『同化』の際に調べ上げたのさ」
そう笑って返し、彼が先頭、遅れてテラたちが続くように歩き出した。
教会を出た彼らは迷うことなく進むアルカナを追いかけ、彼の足取りがとまった。
「これだ」
そういって、他のものたちに見せるように誘う。
無数に在る心剣の残骸を此処に至るまで見てきた彼らでも一目了見であった。
朽ちた残骸というには異なる印象だった。異質な存在感がその剣から感じとれたのだった。
「この剣も待ちかねていたようだ」
刺さっていた剣をゆっくりと丁重に引き抜いて、触れるだけで感じる力にアルカナは楽しげに言う。
無数の心剣の残骸たちはかつての主を想いが強い故に『虚(うろ)』となった。この剣は『新たな主』に巡り会うために待ち続けたのだ。
そう、アルカナは触れたことで流れ込んだ『想い』を理解した。
「目的のものは手に入れた――じゃあ、戻るとしましょうか」
達成の余韻をひとまずは後に置き、クェーサーが冷静に申しだす。
アルカナもテラたちも同意とそれぞれ小さく肯き返して、
「他のものたちも戻ってきていると良いのだがな」
アルカナはビフロンスへと通ずる空間の裂け目を開き、次々と裂け目へと通り、彼らは心剣世界を後にする。
キルレストたちが帰還した時間はおおよそ昼を迎えた頃、それから1時間を過ぎた時。
ビフロンス城手前の街道の草原で、一人座して待っていたキルレストは気配を察して目を開ける。
彼の傍から異空の扉が開き、出てきたのはツェーラス湖へと赴いていたイリシアたちだった。
立ち上がり、出迎えるキルレストは彼らに声をかける。
「戻ったか」
「ああ、キルレスト。お前たちが最初の様だな」
彼に声を掛けられた彼らは振り向き、その中でディアウスが少々の微苦笑を含んだ笑みで応じた。
一同の様子(服の荒れ具合や傷)を見る限り、同じように戦闘が在ったと直感し、続けて問うた。
「戦闘があったのか?」
「…ああ。酷く面倒な相手だったよ」
「詳しくはイリシアに聞いて頂戴。私たちより彼女のほうが一番熟知してるわ」
疲労を隠せずに率直に戦いの相手の評価と共にため息を吐く夫に、妻のプリティマは平静な言動と寄り添いながら視線を投げやる。
つられるように最後に出てきたイリシア―――であろう人物を捉えた瞬間思考が一瞬、止まった。
「―――――」
つい数時間前までの静かな少女然としたイリシアの姿はそこには無く、まさしく成長した姿の彼女がそこに居た。
キルレストの呆然とした様子に戸惑いながら、彼女はしおらしい歩みで近寄った。
「キ、キルレスト……」
若干震えた声に、はっとなったキルレストは慌てて声に応じた。
「す、すまない……突然の事だったからな、お前も驚いている筈だろうに」
「私はいいの。事情は後で。他のみんなを城に戻らせても?」
「そうだな」
キルレストは彼女の言葉に、思考が回復する。イリシアはどのような姿になったとしても彼女である、と心のどこかで安心したからか。
セイグリットを初めとした彼らを城へ戻って休息や治療を命じて、そうして彼らは了承してそれぞれの歩調で戻っていった。
それらを見送り、残ったのはキルレストとイリシアだけであった。
「――それにしても驚いた」
キルレストは心からそう想い、改めてイリシアと向き合った。
風貌の雰囲気、言葉の姿勢などはまだかつてのイリシアの名残を感じたが、他の3人の姉たちと同じよ
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