今まで見て来たシャオの中に会った他人の記憶に繋がる歪み。
それらを素通りしながら、クウはイリアについて行く形で先を進んでいた。
「イリア、本当にこっちでいいのか?」
「ええ。彼らの入った記憶は分かっている」
何の迷いもなく頷くイリアを見ながら、思わず感心を表情に浮かべてしまう。
あらゆる面に置いて頼りになるその姿は、まさしく万能と言った所だろう。相手がカミと呼ばれる存在だから当然だが。
やがてイオン達と同じように林の中に差し掛かると、突然歩きながら訊いてきた。
「それより、そっちはもういいのか?」
この世界の自分の事を知る事を言っているのだと分かり、クウは頭を押さえながら溜息を吐く。
「ここに来たのはシャオの異常を解決する事だろ。さすがにあいつらに任せっぱなしにする訳にはいかねーよ。それにある程度は知る事が出来たんだから、そろそろ引き際にしておかないとな」
自分の事を知りたいと思ってはいるが、シャオの事をほおって置く訳にはいかないのも事実だ。クウとて本来の目的を忘れる程集中したい訳じゃない。
(そうだ、このままウダウダ考えても仕方ない。気持ちを切り替えないといけないって分かっているのに…)
自分の事を考えながら、無意識に米神を指で押える。
さっきから何かおかしいのだ。スピカの記憶は確かに自信を無くすほどにショックを受けた。だからこちらの自分を知りたくて、いろんな記憶を見て来た。悪い部分だけでなく良い部分だって垣間見たのに、未だに不安は消えない。
心の中でモヤモヤとした気持ちを抱えていると、イリアが足を止める。目の前には今まで見て来たのとは明らかに不自然な歪みがあった。
「あった。あの記憶が潜在意識の境界――」
その時、前触れもなくハートレスが二人を囲む様に何匹も現れた。
「またハートレスかよ! イリア、下がれ!」
守るとばかりにクウが前に出ると同時に、空中に浮遊するハートレスから魔法が飛び出す。
とっさに翼を具現化させて盾の要領で攻撃を防ぎ、黒い翼を大きく羽ばたかせると羽根を弾丸のように飛ばす。
反撃に出した『ウィングノクターン』は空中のハートレスに当たり、次々と消えていく。先程と同じように敵はあまり強くないと分かり、全滅させようとキーブレードを取り出した。
「え…?」
クウがキーブレードを握った途端、急に身体に違和感を感じる。
直後、何か重い物が圧し掛かったかのような圧力がクウに襲い掛かり、その場で膝を付いた。
「身体が、重…っ!」
「クウ!」
クウの異変にイリアが叫ぶ。その隙を突く様に、ハートレスが襲い掛かった。
町の中にある黄昏の色に染まった公園。
夕焼けに照らされながら、幼いシャオと例の子供が黒髪の母親と話をしていた。
「「サクラ?」」
「そう。あそこに見える丘の上に、とっても大きな桜の木があるんだけど…その桜はね、ピンクじゃなくて銀色の花を咲かせるの」
遠くの町外れを指しながら母親が語っていると、シャオの隣にいた子供は近寄る。
「ぎんいろって、ぱぱや『―――』とおなじいろ?」
「そうよ。一度みんなで見に行った事があるけど…綺麗だったなぁ」
「いいなー、ボクもみたーい! ね、かあさん。サクラみにいこうよー!」
幼子らしい純粋な眼差しでシャオが母親のスカートを握って強請る。そんなシャオに、母親は小さく笑う。
「だーめ。その桜は春になっても見れる訳じゃないのよ」
「そうなの?」
「いつ咲くかは分からないけど、その時が来たらみんなで一緒にいこうね」
「「うんっ!」」
二人が頷くと、母親が目線を合わせるようにしゃがみ込んで小指を立てる。
「じゃあ、お母さんと約束」
「やくそく?」
「ボク知ってる。“やくそく”って言うのはね、指をこうして――」
子供の手を取るなり、シャオは小さな手を使って小指を立てて自分の小指と絡めあう。
そうやってシャオが子供に教えた所で、記憶が途切れた。
気が付くと、イオン達は記憶で見たのと同じ公園に戻っていた。
「桜、か…」
「あっちの方だよね。行って見る?」
「そうだね。この場所も思い出に沿って動いた方が記憶も見つかるみたいだし」
これまでの経験を元にして、イオンもペルセの案に賛成する。
まずは町外れを目指そうと二人が公園を出た時、突然ハートレスが行く手を阻む様に現れた。
「ハートレス!? ペルセ、行くよ!」
「分かった!」
敵の登場に、イオンとペルセは狼狽える事無くすぐに武器を取り出す。
安全にイオンに魔法を使わせようと、ペルセは間接剣を構えて前に出た。
「――攻撃するな、お前らぁ!!」
それとほぼ同時に、クウの怒鳴り声が響くと黒い衝撃波がペル
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