少しずつ数が増えたハートレスが襲い掛かる。猛攻を耐えながら、手に具現化した羽根を投げる。そうする事で直接攻撃を当てようとした敵を怯ませて上手く牽制する。
そんな事を何度も繰り返しながら、クウは町の中を走っていた。
「ほら、こっちだ!」
出来る限り囮になる為にわざと大声を上げて逃げると、ハートレス達は何の疑問も持たずに追いかけてくる。
時折飛び交う攻撃を避けながら、乾いた笑いを浮かべる。
「極力倒さずにとは決めたものの――骨が折れるな、こりゃ」
既に手にはキーブレードは持っていない。ハートレスはある程度距離が離れると消えてしまう性質を知っていた為逃亡を図っているのだが、なぜか一向に消える気配はない。寧ろ数を増やしている。
これでも格闘家として過ごしてきたのだ。スピードと体力には自信がある。それでも、この状況が続けば何れ力尽きてしまう。
何とかしなければ。そう思考を巡らせた一瞬の隙に、前方にハートレスが行く手を阻むように現れた。
「マズ!? ぐわぁ!!」
逃げ場を失い囲まれてしまった事に反射的に足を止めてしまい、そこを狙ってハートレスが一斉に飛び掛かってクウを地面へと押し潰した。
「うぐぅ……悪い、イリア…!」
大量のハートレスによって身動きが取れない中、クウは一言謝る。
そして、覚悟を決めたように目を閉じた。
町を離れて丘に続く入口が見えて来た時、急にイリアは足を止めて来た道を振り返った。
「イリアドゥスさん?」
「何でもないわ」
イオンの声に反応してすぐに視線を戻すイリア。
一先ず目的地の近くに着いた事で、三人は軽く雑談を始めた。
「何事も無くこれましたね」
「町から離れちゃったけど、良かったのかな?」
「さあ。でもここが間違いだったとしても、どうせ町まで戻ればいいのだし」
そうして万が一の事も話すと、イオンはある事を思い出した。
「そうだ、イリアドゥスさん。あなたはシャオに兄弟がいた記憶とかないですか?」
こちら側の記憶に存在していたシャオと関係のある子について訊くと、イリアは力なく首を横に振った。
「そんな記憶…どこにもなかった。あなた達の記憶を覗くまでは」
この答えに、イオンとペルセは顔を見合わせる。
全ての記憶を読み取るイリアですら、その子の存在を見破ってはいない。一体あの子は何者なのか。どうして存在を隠す事が出来るのか。
「まさか、ここまでくるなんてね」
その時、聞き慣れた声が自分達にかけられる。
振り返ると、丘に続く道の所に幼い頃ではなく今の少年の姿をしたシャオが立っていた。
「シャオ!?」
「あなた、シャオなの?」
信じられずにイオンが叫んでいると、ペルセも半信半疑なのか疑いをかけて問いかける。
半ば予想していたのか、シャオは苦笑しながらも頷いた。
「そう、だね。ボクはシャオの意識を司っているから当たってはいるかな? 詳しく説明するのはボクには出来ないしややこしくなるから、とりあえずその認識でいいよ」
説明に不足はあるものの、とにかく目の前にいる彼はシャオだと言う事は分かった。
こうしてシャオに関して最低限の情報を手に入れると、イオンは次に思っていた事を聞いた。
「大丈夫なの? 確か別の意思が蝕んでいるって…」
「――一応は、ね。偽の記憶が壊れた所為で、ボクの中に会った別の意思の記憶が露出しちゃって。今はこの場所でしか表に出る事は出来るけど、そいつをどうにかしないとボクは目を覚ます事が出来ないんだ」
「その意思って言うのはこの先にいるの?」
「…うん。あの先は、ボクの――」
イオンに向かって頷くが、途中で言葉を濁らせる。すると、顔を俯かせるなり口を閉ざしてしまった。
「シャオ?」
心配してペルセが声をかけた瞬間、黙っていたイリアが口を開いた。
「あなた、『夢の理』じゃないわね」
「イリアドゥスさん?」
突発に放ったイリアに顔を向けると、不審な目でシャオを睨んでいる。それに対して、シャオは顔を俯かせたまま肩を震わせて怯えを浮かべている。
「あなたはシャオの意識の存在。それならばこの世界を自由に操れる彼の理であるはず。だけど、あなたからはその力を感じ取る事が出来ない」
『夢の理』。
全ての夢に宿されている“心臓”のようなもの。理を持つのは夢の世界を作っている本人自身。『夢の理』を持っていれば、この夢の世界ではどんな事でも可能となる。
だが、今その理が彼から感じられない。シャオである彼が理を持っていないのだとしたら、結論は一つ。
自分達のいるこの夢は、シャオのものではない。
「あなた、本当は誰なの?」
瞬間、周りの空気が変わった。
「…てよ…」
再びシャオの肩が
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