「あった」
進んでいた途中から整備された道は途切れ、道らしき道を歩いて数刻。激しいがけ崩れの起きた場所に新たな記憶の歪みを見つけた。
イリアが足を止めると、後ろにいたイオンとペルセも歩みを止める。歪みに入る前に、二人は軽く辺りを観察した。
「大きく崩れてる…大雨が降った影響みたい」
「この記憶、見ておくべきかな? 話にあった桜の木ってここにはないようだけど?」
ペルセが崖崩れを調べる中、イオンはこの付近に桜の木が無い事に気付く。
それをイリアに指摘するとふむ、と軽く頷く。
「少なくとも、見ておいて損はないだろう。それに、あの先に道はないようだし」
「本当だ、靄がかかって先が見えませんね」
ここから先は白い靄が不自然なほど深く包み込んでいる。こんな所を無理に進めば迷子になってしまいそうな雰囲気だ。ここは諦めて目先の事に向けた方がいいようだ。
イリアのアドバイスもあって方針を決めていると、上空から羽ばたく音が響いた。
「どうにか間に合ったようだな」
その声と共に、囮となって別行動をとっていたクウがその場に舞い降りた。
「「クウさん!」」
着地して翼を消すと、先程イリアが投げた黒い羽根を握ってイオンとペルセに笑いかけるクウ。表情だけ見れば余裕を保っているが、身体は攻撃を受けたのかボロボロになっていた。
「どうしたんですか、その傷!?」
「あー、ちょっとヘマしてな。あいつらはどうにか足止めしておいた」
「回復しますから、じっとしてください!」
そう言うと、イオンはすぐに回復魔法をかける。
見る見るうちにクウの傷が癒えていく中、ペルセは安心したように微笑んだ。
「でも良かった、無事で」
「へぇ、俺の事心配してくれたのか? お世辞でも嬉しいぜ…」
「ク・ウ・さ・ん?」
「悪い、冗談だからキーブレードは仕舞ってくれ」
回復の手を止めて武器を握るイオンに、折角治りかけた傷が開くのを恐れてクウは即座に謝りを入れる。ついでにペルセに伸ばしていた手も途中で止める。
渋々だが武器を仕舞って回復を終えると、イオンは不機嫌そうにペルセの手を握った。
「心配して損しましたよ! さっさと行こう、ペルセ!」
「うん」
イオンに手を引かれるまま、ペルセも歪みへと一緒に入っていく。
そんな二人をクウが見ていると、イリアが無表情のまま視線を送る。しかし、向けられる視線は若干冷ややかだ。
「私、忠告した筈よ。『積み重なればどうにも出来なくなる』って」
「…悪い」
番人であるハートレスを倒した事を見抜かれてしまい、クウは申し訳なさそうに頭を下げる。
「でも、あなたらしい選択ね」
まるで仕方ないと言ったように呟くと、そのままクウの脇を通り過ぎる。
てっきりお咎めの言葉でも飛ぶだろうと身構えていた分、あっさりと話を切り上げたイリアに驚きの目を向ける。
その視線に気づき、イリアは足を止めると振り返った。
「来なさい。その為にここにいるのでしょう」
「ああ」
そうして二人も記憶の中へと足を踏み入れた。
記憶の中に入ると、同じ地点だが夜になっていた。
雨が降った後なのか、地面のあちこちに水溜りが出来ている。
「ダイジョブ…こわくない、こわくない…!」
そんな薄暗い夜道を一人の子供が歩いている。その子は先程のように、輪郭はぼやけてはいなかった。
その姿は肩まである銀髪に水色の瞳。白いワンピースを着た、まだ幼い少女だった。
雨で濡れて地面がぬかるんでいる所為か、少女は何処かおぼつかない足取りで先に進む。
「『―――』!」
すると背後から呼びかける様な何かが聞こえ、振り返る。
そこには、幼いシャオが息を荒くしながら少女を睨んでいた。
「お兄ちゃん…?」
「『―――』、やっぱりここに来てたんだね! 家にもいないからみんな探してるよ! さ、帰るよ――」
咎めるように話しながら、シャオは少女の手を握る。
そのまま引っ張って返ろうとするが、少女は意外にも抵抗した。
「やー! 『―――』もサクラ見るの!」
ばっとシャオの手を払い除け、逃げるようにその場から駆けた。
「だめだ、『―――』!!」
シャオが後を追いかけるが、少女は嫌だとばかりに走り続ける。
そうして曲り道に差し掛かった瞬間、少女が足を踏み入れた影響かまるで巻きこむ様にして崖崩れが起こった。
「ぇ…?」
「『―――』ァ!!」
崖から落ちようとする少女に、急いでシャオが駆け寄って手を伸ばして掴む。
だが、幼子の力では到底持ち上げる事は叶わず、二人して崖から落ちてしまった…。
記憶は途切れ元の場所に戻るが、今見た光景にイオンとペルセの顔色は蒼白になっていた。
「シャオ…!
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