あの言葉から、自分達はどのくらい黙っていただろうか。
シャオを目覚めさせる方法は蝕む意思を消す事。その意思の正体は彼の妹で、シャオはもう死んでいて、あの子が本物で…だからと言って、シャオをこのままにする訳にはいかなくて。
やる事は簡単なのに動きたくない。頭の中でグルグルと思考が掻き回されて答えが出ない。
「イオン、ペルセ」
そんな時、前触れもなくクウが急に声をかけてくる。思考を止めて彼を見ると、真っ暗な空間を仰いでいた。
「お前ら、迷ってるか?」
「…そう言うクウさんは決めたんですか?」
「ああ」
イオンにただ一言呟くと、そのまま歩き出した。
「え?」
「ク、クウさん?」
思わずイオンとペルセが声をかけるが、クウは何も返す事無く歩き続ける。
そうして、ある人物の前で足を止めた。
「師匠?」
目の前に立ってじっとこちらを見るクウに、成り行きを見ていたシャオは首を傾げる。
直後、シャオの頭に向かってクウが拳を落とした。
「…ッ…!?」
「ちゃんと存在したい? 死なせた妹を完全に消して欲しい? それがお前の望む事だと?」
全力で叩き落とした拳骨にシャオが目を白黒させる中、クウは静かに…怒りの篭めて言葉を紡ぐ。
「――ざっけんじゃねーぞ!!! クソガキィ!!!」
空間全体に響くぐらい、心の底からシャオに向かって怒鳴りつける。
今までシャオに対して師と言う立場で甘く接していた。そんなクウが今は怒りを見せている。
「てめえ、言ったよな? 俺の弟子だって…俺を尊敬してるって!」
肩を震わせシャオを睨む姿は、このまま泣いてしまうのではと錯覚してしまう。
「例え別の世界だとしても――俺は弟子に、女に酷い事させるような事は絶対に教えねーよっ!!!」
拳骨をぶつけたその拳で、今度はシャオの頬を殴りつける。強い衝撃なのか、シャオはそのまま床に叩き伏せられる。
「ッ…!?」
「あの子は確かにお前を死なせたかもしれない。だが、結局は事故だろ!? お前の妹は好きでやった訳じゃねえだろ!?」
「じゃあ…ボクはこのまま消えろって言うのっ!!! ボクがボクとして存在するには異分子であるあいつを消さないといけない!! 師匠も、イオン先輩もペルセさんも分かってるでしょ!!?」
痛みを堪えながら身を起こしつつ、シャオは少女を指しながら恨み言にも似た感情を吐き出す。
だが、クウの思いは揺らぐ事はなかった。
「だったらどうしてあいつは泣いているんだっ!?」
「「っ!?」」
この一言に、イオンとペルセは気づかされる。
あの少女は泣いている。微かに残った意識になっても尚、兄を死なせてしまった自分の罪を感じて闇の中で泣いているのだと。
「お前を死なせてから、ずっと…こんな殻に閉じこもって泣いていたんだろ? お前を存在させる為に、自分をこんな心の奥深くに閉じ込めて、自ら時間を止め存在を消して…――それだけお前の事を思ってるのに、何で分かってやれないっ!!?」
「がぁ!?」
少女の為に怒り、シャオを一方的に殴っている。だけど、それが暴力だとは感じなかった。まるでシャオの世界での教師のように、間違いを正そうとしているように思えたのだ。
少しは怒りが収まったのか、クウは殴っていた手を止める。殴られていたシャオは俯せになったまま動かない。とは言え、死んでしまった訳ではなさそうだ。
クウは殴っていた際に荒くなった呼吸を軽く整えると、イリアに振り返った。
「…イリア、あの子を助ける方法あるんだろ?」
「あるにはある。だけど、それは『シャオを消す』と言う事に繋がる。それでも」
「消させない」
話を遮りながら、クウははっきりと告げた。
「どっちも消したくない。それが俺の答えだ」
真剣な表情で第三の選択を述べる。そんなクウに、イリアは半ば呆れのような眼差しを送りつけた。
「随分と我が儘な選択ね」
「我が儘でもいい。誰も消したくないし、いなくなったりさせない。俺が選んだ道はそう言う事なんだよ」
例え罪深い存在だとしても、仲間であるなら助けたい。方法が誰かを消すしかなかったとしても、最後まで抗いたい。それがクウの決めた信念なのだ。エンにならない為に決めた、自分の進みたい道。
そうクウが断言していると、ペルセが口を開いた。
「…私も、同じです」
そう呟くと、ペルセも胸に手を当てて思いを口にする。
「私は家族を失った。だから分かるんです、家族がどれだけ大切な存在なのか。それが例え必要な事でも…選べません」
かつて、あるハートレスによって心を奪われただけでなく天涯孤独の身になった。悲しむ事も、嘆く事も、怒りを露わにする事も…先に旅立った家族に何の感情を持つ事も出
[3]
次へ
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想
TOP
掲示板一覧
ゲームリスト |
ゲーム小説掲示板
サイト案内 |
管理人Twitter
HOME