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第二章 心剣士編第四話「爻わる刃たち」

 広大な浮遊する白い大地の上、幾つもの想いの刃たちが火花を散らす。




 凛那がクェーサーの元まで追いつくと、彼女はすかさず自身を象った炎の刃――『緋炎刃』を抜き取り、切りかかった。だが、それを見越していたのか、クェーサーは無数の光弾をてをかざして、放つ。

「紅蓮の連刃――『火之夜藝(ひのやぎ)』!」

 無数の光弾を回避もせず、凛那は緋炎刃一振りで全て切り返した。
 同時に無数の炎の刃が撃ちかえってくる。

「――『鍠刃閃(こうじんせん)・黎羽(れいは)』!」

 薙ぎ払うように光の波濤が火之夜藝の刃たちを打ち消した。しかし、凛那は既に動いていた―――地をけりつけ、クェーサーと飛び掛るように斬りかかった。
 迎え撃つクェーサーは剣で受け止め、二人は激しい唾競り合いをする。

「お前、なかなかの強さじゃないか!」

「そうね。私も見縊っていたわ」

 凛那は凄絶に笑みを浮かべ、押し込む。
 だが、クェーサーも小さく笑みを浮かべ、押し返す。

「残念だ。まだ見縊っているようには見えないな」

「素直に受け取りなさい!!」

 一気に押し返したクェーサーは剣尖を凛那に向け、

「『鍠刃閃・黎槍(れいそう)』!」

 放たれた一直線に走った光線が凛那の晒された胸部を貫いた。

「っ」

「……?」

 貫かれたのに真円の孔からは血は噴出しない。驚くクェーサーはすぐに間合いを取るようにバックステップで後退した。

「―――痛みはあるわよ。血がないだけ」

 すっと孔の空いた胸元を手で翳し、離すと孔は無くなっていた。クェーサーはその面妖さに怪訝な顔色を浮かべる。

「人間じゃあない、……何者?」

「なら、名乗ろう」

 静かに、しかり凛然とした眼差し、その声音で彼女は緋炎刃を更なる炎をで押し固め、一気に解き放った。
 解き放たれたそれを凛那は黒く染まった柄、純白に染まったに鞘をそれぞれ握り締め、抜刀された刀身は茜に燃える緋き刃。

「―――我は『明王凛那』、主亡き刀だ」

「刀がヒト…? ……名乗らせてもらうわ、私はクェーサー。貴女を倒す意欲が増したわ」

 先ほどと身に纏っていた光輝がより増された。増したのは輝きだけではなく、闘気、と言うべき気迫が放たれる。

「それは、我もだ」

 輝く光、燃え盛る紅蓮が激しく対峙しあい、二人は同時に斬りかかった。





「菜月さん!」

「菜月」

 一方、イオンとペルセフォネは菜月の元に追いついた。仮面に包まれた菜月は無言で剣を構えた。

「……」

「ペルセ、参りましょう」

 イオンは虚空より光を刃に変えて、抜き取った。
 鋼の刀身、群青色の柄、たれたキーホルダーは海と雲をかたどったもの―――時、空間を操るキーブレード、名は『マティウス』。
 ペルセも静かに頷き返し、撓り、冷気を帯びた刀身に関節のある剣『アブソルーゼ』を抜刀した。
 それを見た先手、菜月は光で押し固めた槍を放った。だが、それが二人に迫る途端、無数の槍に枝分かれした。

「ラグナ=ランスの、改良!?」

「躱そう!」

 二人はそれそれ二手に分かれて槍の追撃を躱しながら、一気に菜月の元へと駆け出す。そうしている間に、彼は何処からか愛用していたバイクを出現させ、エンジンと共に激しい炎を吹き出して、逆にイオンに切りかかる。

「イオン!」

「大丈夫!! マティウス、力を―――!」

 菜月の一撃がイオンを捉えた刹那、彼は僅か1秒も無い瞬間だが動きを止めた。イオンはその隙に攻撃をかわし、彼が乗っているバイクを一閃する。

「!」

 一閃されたバイクは噴出す火に引火し、爆破する―――それを直感的に感じ取った菜月はバイクを捨て、爆破から回避した。
 素の彼なら破壊されたバイクを想い、絶叫する。だが、小さく一瞥して、再びイオンとペルセフォネに剣を構えただけだった。

「……」

「ッ……」

 胸元を強く抑え、苦しみを堪えるイオンにペルセフォネは急いで駆け寄った。

「イオン、大丈夫……」

 イオンのキーブレード『マティウス』は時間を停止・加速、空間を転移できる強力な力を有しているが、これは所有者の体力を大幅に削ってしまう。   今まで、彼はこの時間停止を最大回数は3回だった。この数日でも、その回数は増えずにいた。結果、イオンの『マティウス』による時間を止める事・対象の時間を加速(全て1秒も満たない)、含めれば後は2回だった。

「流石に、下手に長引けば……持たないですね」 「私たちで助け出さないと」

「闇よ」

 菜月がらしくない仮面のうちから低い無情の声と共に、無数の闇の弾が一斉に二人に迫る。イオンはかわせないと判断してか、防御の構えを取る――だが、耐えれる筈がない。

「渦華ッ!!」


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