二人がさっきの場所まで戻ろうとしたが、その途中にある通路の所でウィドとシーノ、リュウドラゴンと鉢合わせになった。
「ああ、お帰り」
「あの、ごめん…勝手にまた離れて」
動揺していたとはいえ、再び単独行動に走った事に対してシーノに詫びるオパール。
すると、足元でリク達についてきたドリームイーターもキュンキュンと鳴いてくる。シーノは僅かに驚きを見せて目線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「またドリームイーター…しかもハナダニャンなんてレアも良い所のスピリットじゃないか。この子をどこで?」
シーノが問いかけるが、この子とは偶然出会ったようなものだ。二人はどう答えればいいか分からず困ってしまう。
その雰囲気で答えられないと察したようで、シーノはそれ以上訊く事はしなかった。
「そっか。でもこの子達は一体…」
次から次に現れる味方となるスピリットのドリームイーターに、シーノはハナダニャンを観察しながら考え込んでしまう。当のハナダニャンは可愛らしくシーノに首を傾げている。
ここでリクが何気なくウィドに視線を向けると、思いつめた顔で黙っているのに気付いた。
「どうしたんだ、ウィド?」
「…何でもない、それよりも敵の正体が分かった」
「敵?」
いきなり飛び出した話の内容にリクが訊き返すと、シーノもしゃがみながら続きを話した。
「レプリカだったんだ。それも、特殊な」
「レプリカ…」
先程の内容を思い出し、オパールも反応を見せる。
「何でもソラと言う人の記憶を使ったレプリカなんだって。まぁ僕はソラについては良く知らない。もちろん、カイリも君達の方が知ってるよね」
知っている者同士で話をした方がいい。シーノの台詞を訳すなら、彼はこう言いたいのだろう。
わざわざ遠回しな言い方をして身を引くシーノ。これにより二人の目は自然とウィドへと向いた。
「ウィド、話してくれ」
リクが言うのをキッカケに、ウィドはゆっくりと重い口を開いた。
「……お前達が離れた後、ある記憶を見た。忘却の城で正体に気付いた記憶。そしてナミネと言う少女と会合していた記憶だ」
そう言うと、その場面を話し始めた…。
忘却の城を思わせる全てが白い部屋。壁や床のあちこちに風景や人物の絵が描かれた紙が飾られていたり散らばっていたりしている。
そんな部屋の白いテーブルの向こう側に、ナミネが椅子に座って微笑んでいた。
「会いたかったわ、“―――”」
彼女が呼びかけると、コートを外したのか視界がより広がる。
そうして近くに会った椅子に座ると、ナミネと向かい合いながら口を開いた。
「ナミネ、あなたにはあたしの顔が見える?」
その問いかけに、ナミネは一つ頷いた。
「あたしはどうすればいいの?」
「“―――”はどうしたい?」
逆に問われると、視線を壁に貼ってある絵を捉える。それは黒コートを来た三人の絵だ。
「はじめはずっとロクサス達と一緒にいたいって思ってた。でも、今は自分の記憶…ううん、これは自分の記憶じゃないんだよね」
「あなたはソラでもロクサスでもない。ソラの記憶の中にいるカイリなの」
ナミネが告げた真実に、何かを思ったのか視線を落とす。
人形(レプリカ)とは別に知った自分の人格を構成している正体を訊くと、再び真正面にナミネに顔を向ける。
「思い出していく内に元の場所に帰らなきゃいけないって思ったの。どうすれば帰る事が出来るの?」
「ソラの所に帰るのね」
ほんの少しだけナミネが悲しそうに言うと、コクリと頷く。
「記憶をソラに返せば、あなたは消えてしまう。あなたは元々記憶を持たない代わりにみんなと記憶で繋がってるの。だから、あなたが消えてしまったら誰もあなたの事を思い出せなくなる。私の力でも、あなたと言う記憶の欠片は繋ぎ止めて置く事が出来ない」
ナミネの話を要約すれば、この子は消えてしまうだけでなく誰からも忘れられてしまう。いや…もう忘れられているのだろう。忘れられて、彼女の存在はまさしく《無かった事》になっている。
そんな残酷な現実を知っても、決意が揺らぐ事は無かった。
「もう覚悟は出来てる。でも、どうしたらいいのか分からない。だからあなたに会いに来たの」
そう言うが、まだ不安が残っているのか顔を俯かせる。
「本当はロクサスも一緒に帰らなきゃいけないんだよね。でも…ロクサスはまだ、すぐには難しいと思う。ロクサスはまだソラの事を感じていないから。だから、ナミネ。あたしが消えたらロクサスの事…お願い。他の人にもロクサスの事お願いしたの。あたしじゃロクサスの事…守れない」
自分が消えるとしても、大切な親友を守りたい。その意思に感化されたのか、ナミネも頷いた。
「わかった」
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