夜へと時間が移り、ビフロンス居城では食事が執り行われていた。
前日と同じような面々と、新たな客人を迎えた食事は一定の賑やかさを彩っていた。
しかし、何席かの空席も目立っていた。
「まあ、仕方ないでしょう」
城主アイネアスはそう呟きつつ食事を続けた。
彼の隣には妻であるサイキだけだ。
いくつかのテーブルを用意して、各々でそれぞれ食事を楽しむということだった。
「新しい客人…たしか『ジラソル』というのでしたね」
「ああ。なにぶん特異な存在だが」
そういいつつ、二人は視線をそのジラソルがいるテーブルへ向いた。
彼女は今、現地で纏っていた襤褸衣ではなく、城で用意したシンプルながらも高級な部屋着を身に包んで、席に座っている。
そして、同席者はリュウア、リュウカの兄妹だ。知らない事の多い彼女に、彼らが率先して彼女の面倒を担うことにした。
「どう、食べられる?」
「…解らない」
リュウカの問いに困惑した様子のまま答える。
何もかもが彼女には新世界なのだから、仕方ないが。
しかし、ジラソルはゆっくりと料理を口に含む。
「……」
「どう?」
じっくりと口を閉じ、もぐもぐと吟味するように咀嚼した。
そして、ごくっと飲み込んだ彼女は笑顔になる。
「おい、しい…!」
「そう…良かったわ」
「よし、俺のも食べるか! どれも美味いぜ!」
彼女の笑顔に、リュウカは感涙し、リュウアは自分に用意された料理の一つを彼女に譲る。
そんな様子をアイネアスを初めとした者らも安堵したように微笑を浮かべる。
「まさに親にもなったようね」
二人の様子をそう表現したサイキは淑やかに微笑して、
他のものたちもその様子を眺めながらも食事を続けていった。
そして、別のテーブルの一つではリュウカらの様子を気にも留めずに話を続けている者らがいた。
半神4姉妹――『四属半神』たちだった。
「まさか、此処まで成長するとはね」
「つい数時間前までは可愛がりのある妹が、頼もしい妹になっちゃたわね」
「誉れ高き四属半神の一人に相応しい風格になった、という事だ。姉としても嬉しく思うな」
「…ジロジロとあまり、見ないで下さい…姉さんたち」
シムルグ、アレスティア、ブレイズと4姉妹の姉たちは末妹の変化振りに感慨深く言う。
姉らの言葉に困惑と呆れを覚えながらもイリシアは言葉を続けた。
「私もまだ慣れて…いないの。せめて姉さんたちはいつも通り接してくれると助かるのだけど……」
「はは、それもそうね」
どこ吹く風とシムルグは気楽そうに笑って、鼻を鳴らし腕を組んで胸を張るブレイズは言う。
「問題無いだろう? それより、食事の後で軽い訓練でもするか?」
「今日は色々とあったし休ませたほうがいいと思うのだけれど」
武辺な気が強いブレイズに対して長女のアレスティアは冷静に反対する。
イリシアも長女の意見に同意し、食事を終えて入浴を済ませばすぐに休むと決めた。
「そうか。仕方ないな」
少々不服に、用意されたワイングラスに注がれた深みのある赤ワインを小さくあおる。
一見強引に付き合わせようとするが、すぐに諦めたのは末妹をブレイズの姉なりに思ってのことだった。
そんな姉の不器用な一面を知っているイリシアは微苦笑で頷いた。
「――そういえば、イリシアだけ戻ってきたけどキルレストはまだ神殿に?」
一通り食事を終え始めた頃、シムルグは、思い出したように妹へと問いかける。
問われたイリシアは軽く頷いてから答えた。
「ええ。剣錬成の素材を運んだ後、『後は私だけでいいから。君も城に戻っていてくれ』――って」
「食事を持っていかなくても良かったかな、って思ったのよ」
「私もそう思って聞いたのだけど…」
神殿に追加で敷設した錬成工房。
それは半神キルレストが、かつて自身が同胞たる半神たちの武器を造るために用意した施設でもあった。
もともとはレプセキアに備えていたがカルマらの占領、KRの製造による施設改造により取り潰されてしまう。
先日の神殿の修理の際、簡易ながらも取り付けることを考えたのは大きな戦いに備えてのものであったが、ウィドの武器作りに思わぬ貢献を奏した。
「そこに『ツェーラス湖』から回収した水を貯めてくれるか」
「ええ。ヴァッサー、お願い」
キルレストが指定したからの水槽にイリシアの傍に侍らせていたヴァッサーは命に応じて、『ツェーラス湖』の水を注ぎ込む。
そうして、水槽が満たされ、命令を果たしたヴァッサーは主たる彼女へ還った。
「では、次はこれをこっちだな」
取り出した黒い玉を別の空器に置くと、黒い玉は破裂する。
玉が収めていたそれ―――ジラソルの尾たる龍の頭部
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