傷付いた体に回復魔法をかけ、薬を使う事数分。懇親的に続けた二人の治療のおかげで深かった傷跡も大分塞ぐ事が出来た。
先程まで苦しそうだったリュウドラゴンの声も今では穏やかになり、リクはようやく回復の手を止めてキーブレードを仕舞う。
「どうにか治癒出来たな…すまなかった、お前を傷付けてしまって」
そう謝ると、リュウドラゴンの頭を優しく撫でるリク。
どうにか峠を越えてオパールもアイテムを入れていたポーチの口を閉じる。それから後ろを振り返ると、奥の方でウィドが尚も背を向けた状態で頭を押えていた。
「ウィド、どうしたのかな?」
「反省してくれるとありがたいんだが…」
少なくともさっきのように襲いかかる気配はなさそうだ。また揉め事にならない事だけにリクは安堵を吐く。
そして今も尚リュウドラゴンを気に掛ける二人に気づかれないよう、右手に軽く目線を向ける。
(あんな状態のウィドと一人で戦ったのか、あいつは…)
こうして治療をした後も、ウィドと戦った時に武器を打ち合った手はまだ軽く痺れている。
結果的には負けていたが、自分達が戻るまでクウは戦っていた。ウィドを抑え込んでくれていた。大切な人が囚われて精神的に辛かったにも関わらず、だ。
あんな成りだが、キーブレード使いとしての強さは確かに持っている。そうリクが痛感していると、徐にシーノが口を開いた。
「ここは僕達に任せて。君達は他の記憶を覗きに行ってよ」
「え?」
考え事をしていたのでとっさにシーノに顔を向けると、彼は微笑して説明する。
「さっき説明しただろ。ルキルを蝕んでいるレプリカは、他の人達の記憶を持って繋がっている事で存在していたって」
「そうか。記憶を見ないと同調を高められないのは、レプリカの特徴に関係あったんだな」
「レプリカの記憶を見る程、あたし達はその記憶を手に入れる。その分存在が露わになっていく…か」
レプリカに関する記憶を持てば繋がりが出来る。繋がりさえ持てばその存在を認識出来るようになる。その事が分かれば、この場所のからくりも自然と解けてしまう。
こうしてリクとオパールが納得を見せると、シーノも更に補足を入れる。
「下手に進めば、実体を持たない敵と相対する事になる。この世界の心臓部にあたる『夢の理』がこちらにあれば大丈夫なんだろうけど、こんな状況じゃ当てには出来ないし」
「とにかくいろんな記憶を見回ってくればいいんだろ。行くぞ、オパール」
「うん。シーノ、リュウドラゴンの事お願い」
未だに蹲っているリュウドラゴンをシーノに任せ、二人は立ち上がる。
すると、ハナダニャンが前に躍り出て自分達を見上げながら尻尾を振りだした。
「キューン」
甲高く一声鳴くと先に行ってしまい、けれど途中で立ち止まってこちらを振り返る。さっきのリュウドラゴンのように誘って来るその仕草に、二人に笑みが零れた。
「どうやら、代わりに案内してくれるようだな」
「手間省けるわね」
ハナダニャンにしてみれば真剣に誘っているのだろうが、容姿が容姿だけにこちらの目からは可愛らしく映ってしまう。
さっきまで張り詰めていた空気が朗らかになるのを感じながら、二人はその場を離れて行った。
「さて…」
シーノは二人と一匹が完全にいなくなるのを確認すると、リュウドラゴンに目を向ける。
その目には、疑心が宿っていた。
ハナダニャンに案内され、二人は白く無機質な城の中を歩く。あちらこちらに歪みはあるが、ハナダニャンは立ち止まらずに奥へと進む。
やがて目当ての物を見つけたのか突然走り出す。後を追いかけると、隅の方にある歪みの前で立ち止まりキュンキュンと鳴いて中に入るように催促する。
リクとオパールはその場にハナダニャンを残してすぐに足を踏み入れる。そうして二人が歪みの中に入ると、そこは夕日に照らされた屋敷の前――リクとルキルが戦ったあの場所だった。
「嫌な役目はいつも俺だ…」
「アクセル…」
突然森の入口から闇の回廊を使って現れたアクセル。自傷気味に笑っている彼に、記憶の持ち主は悲しげに呟く。
対するアクセルは、真剣な目になってこちらを真っ直ぐに見つめてきた。
「“―――”、お前はどうする気だ?」
「あたしはあたしが帰るべき場所に帰るだけ」
ハッキリとアクセルへ告げると、彼女の言葉の意味を知っているのか視線を逸らす様に顔を俯かせる。
「俺も最初はそうするのが一番いいんじゃねーかって思った。でも何かもやもやすんだよ、納得できねえ何かがあるんだ」
「でもこれがみんなのためなの」
「勝手なこと言うなよ。どいつもこいつも…」
「これでいいのよ」
今も尚迷っているアクセルに断言する。何を言っても揺るがない声色に、ア
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