全てが黒に包まれた深層の世界。だが、先程まで静寂で包まれていた筈のこの場所は今、失望と狂気に満ちてしまった。
まるで容赦なく威圧される暗黒と化した悪夢の中で、激しい戦いの謳歌が舞う。
金属音、氷の割れる音、爆音――絶え間なく鳴り響く戦いの音色に掻き消される事無く、慈しむ詩(うた)は奏でられる。
『レーヴァテイルの力…凄いわね』
イリアから奏でられる詩魔法(うたまほう)を聴きながら、レプキアはほぅと息を吐く。
レーヴァテイル特有の言語で歌いながら、闇の中で閉じ籠るあの子に語りかけつつ三人に力を与えている。本来、詩魔法を使うにはレーヴァテイルの遺伝子を持っていないと使えないが、この部分でもイリアにはそんな常識通用しないようだ。
だが、攻撃や補助と言った戦闘で使う魔法と違い、心に語る・何かを構築し発動する詩は繊細な為にどうしても無防備になってしまう。それは神理であるイリアも同じだ。それ用の力を使うのだから当然だろう。
だからこそ、従来のレーヴァテイルのように力を発揮するには護る人が必要なのだ。
「ブラッディ・ウェーブ!!」
「サンダガ・ランス!!」
「そこっ! 絶氷麗刃!!」
黒い衝撃波と雷撃の槍がシャオの居る場所を襲う。
追撃とばかりに放電が広がり、シャオの視界が奪われる。そこを狙い、ペルセは刀身を凍らせてシャオに斬りかかる。
当然視界を奪われたシャオにペルセの斬撃は避けきれず、斬られると共に氷漬けになった。
「やった――!」
氷の中に閉じ込め、ペルセは安堵を浮かべる。
だが、一瞬で罅が入るとシャオが氷結を壊して脱出する。あまりにも早すぎる。その証拠に、すでに彼はキーブレードの切先を向けている。
「スパークブラスト!」
反応出来ないまま、一番近くにいたペルセは雷の爆発に巻き込まれてしまった。
「きゃあ!」
「ペルセ!?」
「余所見すんな、イオン!!」
吹き飛ばされるペルセに気を取られたイオンの前に、いつの間にか『スピード・モード』に変わったシャオが二つの剣で斬り裂こうとする。
とっさにクウは間に入り込んでキーブレードでシャオの攻撃を受け止め、どうにか鍔迫り合いの形へと持って行く。
『今の所、どうにかシャオを抑えてはいるけど――段階が進めばどうなるか』
イリアの目に映っている四人の攻防戦に、レプキアは固唾を呑み込む思いになる。
幾ら攻撃が通るとは言え、このフィールドはシャオの思いのまま。現に攻撃を喰らっても傷は全く負っていない。
理を持っていなくても、シャオは彼女が生み出した存在。領域にいる限り倒すのは不可能なのだ。
『不安定――死、破壊…か』
アルカナの占いは本当に良く当たる。代行者とは言え、母であるレプキアは息子の力に感心する。
不安定になった精神。死はシャオの存在を示していた。破壊はまだ分からない――いや、この後に待っているのだろう。
そうこう思慮しながら戦いを見守っていると、イリアの詩が変化する。同時に、少女を囲む闇の中に一つの光の入口が作られた。
「道が出来たぞ!」
「はいっ!」
僅かに詩を止めてイリアが叫ぶと、先にイオンはペルセと共に少女の元へと走り出す。
「行かせるかぁ!!!」
足止めを振り払うかのように、シャオはキーブレードに光を溜め込むと爆発的な力でクウを吹き飛ばした。
「ぐっ! このガキ…!」
「どうしても行くのならボクが行ってあげるよ。そしてあいつを消す!!! あいつが消えれば、ボクと言う存在が完璧になるんだ!!!」
「ざけんじゃねえぞ!! クソガキィ!!」
すぐにクウがシャオに斬りかかろうとするが、その前に高く飛び上がって双剣から大剣に変える。先程同様の早さで『パワー・モード』に変わると、二人に向かってキーブレードを振り下ろした。
「メテオレイン!!」
そのまま少女とイオン達に割り込む形で、幾つもの隕石が降り注ぎ爆発した。
「うわわぁ!?」
「くっ…!」
「グランドクロスっ!!」
強力な攻撃に二人が足止めを喰らう中、離れていたクウは直撃しようとした隕石にクロスの衝撃波をぶつけて相殺する。
攻撃が止むと、即座にクウはイオン達の前に立ってシャオに切先を向けた。
「イオン、ペルセ! こいつは俺が抑える! その隙にあの子の所に行け!」
「「えっ!?」」
「いいからさっさと立ち直らせて来い! 言っとくが、そんなに長く持たないからな!」
「でも、僕なんかよりもクウさんの方がっ!!」
イオンが反論していると、背中を向けていたクウが振り返る。顔には怒りの表情が張り付いている。
「ぐだぐだうっせぇんだよ!! てめえも男なら、さっさと行って涙の一つでも拭ってこいっ!!!」
「クウさん…――分か
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