見知ったキーブレードが、こちらに牙を向けて襲い掛かる。
最初は両手の二本だけ。だが、一本、また一本と数を増やし今では六本にまで増えてしまった。
「クソッ…!」
ソラとヴェンのキーブレードが横切る。テラとリクのキーブレードが回転しながら飛んでくる。アクアと花を模ったハート型のキーブレードが魔法を繰り出す。
治癒できないまま傷が増える。身体は重い。右腕は使い物にならない。明らかに不利――いや、ここまで来たら無謀だ。勝敗は目に見えている。
碌な回避も出来ずに足取りが重くなる中で、クウにある考えが過る。
(俺は、正しい事をしているんだよな?)
泣いているあの子を救いたい。シャオと妹にとって、一番に望む未来を作りたい。
そう決めた事なのに、揺らいでいる。
(あの子を助けるのが最善と思って、こうして戦っている…だけど、本当に正しい事なのか? 誰かを殺してしまった記憶だ。乗り越えたとしても、心の傷を思い出させて背負わせる事になるんじゃ…)
出来る出来ないじゃない。根本的な部分を否定してしまう。
分からなくなる。不安で、怖くて、苦しくて…。
この世界に来てから、自分の感情が負へと塗り潰されている。
(…いろんな感情が渦を巻いて、気持ち悪い…! ちくしょう、何だよコレ!)
「当然だよ。師匠はあの時、この世界の負荷を背負っちゃったんだから。身体だけじゃない、心にだってそれは蝕む」
まるで心の中を見据えたかのように、攻撃の手を止めてシャオが話してくる。
周りだけでなく手に握るキーブレードを消し、何とそのままモード・解除を行った。
「今の師匠が戦っても、勝てる訳がない。足止めなんて出来っこない」
酷く落ち着いた様子でボロボロのクウを見るシャオ。その姿が、ぶれる。
(エ――)
何が起こったのかクウが全てを認識する前に、腹を剣で貫かれた。
「ガ、ハっ!!」
せり上がる激痛。だが、妙な既視感を覚える。
痛みで薄れていた視界が戻る。目の前にいるのは、銀の細剣を握った銀髪の青年。
ここにいる筈のない人物。
「ずっとお前が憎かった。幾度となく私から大切なモノを奪い取って…」
(シャオ…違う、これは…!)
「こんなものじゃない…――お前から与えられた私の苦痛はぁ!!!」
自分に向けて憎悪の炎を瞳に宿し、罵倒するウィドの姿。
(紛れも無く、ウィドなんだ…)
怒り、憎しみ、悲しみ、嘆き。自分に対する彼の本心が伝わる。
ここにいるウィドはシャオだ。頭では理解しても、激しい負の想いに心が軋む。
そうして――。
「あいつの心は闇に還った。先輩達も後を追った。師匠は始末した。後はあんたを消せばボクは目覚める」
ウィドの姿から元の少年の姿へと戻るシャオ。足元には、倒れ込んだクウ。
こんな状況でも謳い続けるイリアへと目を向けたシャオは、キーブレードを握ったまま近づく。
『イリア…!』
(詩は止められない。あの子達が帰って来れなくなる)
未だに残っている闇の沼。この深層意識と無の回帰との境目を結ぶ唯一の出入り口だ。
シャオが迫る。イリアは謳いながら、一つのチャンスを見定める。
「…ん?」
その時違和感を覚えたように、シャオが足を止める。
彼が足に視線を落とすと、黒い羽根が突き刺さっている。
すぐに振り向くと、倒れながらもクウが腕を伸ばしている。どうやら羽根を投げて足止めしようとしたらしい。
「師匠ってば本当にしぶといよね。どれだけ傷付けても立ち上がろうとする、抗おうとする、護ろうとする…どの世界でも変わらない」
足に刺さった羽根を掴み、引き抜く。やはり傷は負っていない。
だが、どう言う訳かイリアではなく倒れているクウの所へ戻り、そのまましゃがみ込む。
とてもいい笑顔を見せつけて。
「そんな目障りな師匠でも…こうすれば、消えてくれるよね?」
「ェ――」
何の前触れも無く、頭に手を置かれる。
直後、大量の知らない記憶がクウの中に流れ込んだ。
「ア、ガ…! アア……ウアアアアアアアアアァ!!!」
『あんた!? こいつに何を見させるのよ!? あんたの世界のクウの記憶なんて、見せたら混同しちゃうのよ!!』
「ボクの邪魔をするのがいけないんだ。この世界ではボクが本物でなければならない。例え相手が師匠だろうと、家族だろうと、友達だろうと――ボクを認めない奴は、みんな、みーんな消えちゃえばいい」
思わずレプキアが口を借りて叫ぶと、尚も悲鳴を上げるクウに冷たい笑顔を見せる。その目は、完全に見下している。
「ねえ、師匠。ボクが与えたその記憶の一部、とっても重要なんだよ。それはシルビアの与えた力の真髄。繋がりによって生み出される二つにして一つの力。その全て
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