中に入り込むと、そこは全てが闇に囲まれた世界だった。
上や下はもちろん、左右を見回しても黒しかない。そんな空間の中でリクは立っていた。
「ここは…あいつの心?」
《…だれ?》
周りを見回していると、別の声が聞こえる。
すぐに振り返ると、そこには短めの銀髪に黄色のシャツと黒のズボンを来た子供の姿――幼い頃の自分が立っていた。
「ニセモノ…って、何でこんなに小さくなってんだ!?」
《ホンモノ、か?》
自分と同じ外見だった筈なのに、子供の姿のまま虚ろな目で見てくるニセモノ。
驚いている場合でないと、リクはルキルの手を掴んだ。
「ニセモノ、来い! お前の力が必要なんだ!」
《俺の?》
「ああ! このままだとお前は消える、それにお前の先生も! みんながお前を待っているんだ!」
《誰の事?》
「え?」
ルキルが呟いた予想外の言葉に、リクは反応出来なかった。
そうして固まっていると、ルキルは表情を消したまま俯く。
《俺、もう何も思い出せない。唯一分かってるのは、俺はお前のレプリカだって事だけ》
まるでルキルの気持ちに感化するかのように、二人の周りから闇が現れ包み込む。
《でも、空っぽなんだ……お前の事以外、何も思い出せない。何も無いんだ、俺には…》
「くっ…! 駄目だ、ニセモノ! 目を覚ませ!」
虚無を抱えたまま闇に呑まれようとするルキルに、リクは必死で叫ぶ。
自分達に迫る闇をキーブレードで払おうとするが、実体を持たない為かすり抜けてしまう。そうしている内に、無情にも二人まとめて闇の中に呑まれてしまった。
(もう…ダメなのか…?)
底の見えない闇に視界と共に意識も黒に染まり、必死で伸ばしていた手をリクはゆっくりと下ろし…。
―――諦めないで!!
暗闇で飛んできた鋭い声と一緒に、指先が細い手で手首を掴まれる。すると力強く引っ張り上げられる。
どうにかルキルと共に闇から脱出すると、そこにいたのはリュウドラゴンだった。呑み込んでいた闇はどう言う訳か自分達から距離を取るように周りを囲んでいる。
「お前…!」
「無事みたいね」
「喋ったぁ!?」
竜の姿にも関わらず人の言葉が飛び出し、リクは仰天する。
そんなリクに気にも留めず、リュウドラゴンは全身に光を放つ。やがて光が収まると、一人の女性が屈んだ状態で現れた。
《おねー…さん…》
「スピカさん!?」
そこにいたのは、前の世界で自分達を助ける為に別れた筈の彼女。服装はどう言う訳か白衣姿に変わっている。
思わぬ再会に唖然としていると、スピカはリクに抱きかかえているルキルに微笑み頭を撫でる。
《お姉さん…“また”来てくれたんだ》
「どう? 苦しくない?」
《うん、苦しい…でも、お姉さんがいればまだ頑張れる気がする》
「そう、本当にあなたはいい子ね。でも、もう大丈夫だから」
そう優しく言うと、スピカはあやすように再び頭を撫でる。まるで母と子のような光景に、リクはようやく口を開いた。
「あの…どうしてあなたがここにいるんですか? あなたは確か、カルマに洗脳されてた筈じゃ…」
最後に別れた時、スピカはカルマと言う人物の服従と戦いながら逃がしてくれた。しかし、今は服従の証として顔を蝕んでいた仮面がない。
リクが疑問をぶつけると、笑顔を消してスピカは顔を逸らした。
「――私は、貴方の知る《スピカ》じゃないの」
「え?」
「私はこことは別世界に存在するスピカ。そして――あなたの世界にシルビアを送り付けた張本人」
「あなたがっ!?」
話だけはシルビアから聞いていた。だが、決して交わる事はないと思っていた。
夢の世界、しかも同じで違う別人の出会いにさすがのリクも開いた口が塞がらない。そんな中、別世界のスピカが頭を下げる。
「ごめんなさい。本当ならあなたやこの子だけでなく、巻き込んでしまった人達全てに謝りたい所だけど……もうそんな時間すらないようね」
直後、周りの闇が揺らぐ。
スピカが小さな光の球を作り出し、ルキルの中へと入れ込む。すると、再び呑み込もうとする闇から遠ざけるように、ルキルを抱えるリクを大きく突き放した。
先程、人形の攻撃を庇ってくれたウィドと同じように。
《お姉さん!?》
「スピカさん!?」
スピカの作った光のおかげか、闇に触れる事なく脱出する事は出来た。しかし、一人取り残されたスピカに二人が叫ぶと、逆に言い返す。
「その子をお願い。私はもう、この《夢》に留まる事は出来そうにない」
《嫌だ! お姉さん!》
「まだ間に合う!! スピカさん、手を!!」
気持ちはルキルと同じなようで、とっさに手を伸ばすリク。が、スピカはその手を伸ばす事はせずに闇の中で首を横
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