「これで、本当に終わりだ」
完全に障害を取り除き、イリアへと切先を向ける。
やがてイリアは響かせていた詩を止め、シャオに向き合う様に佇む。
それは打つ手がなく、諦めた――からではない。
「どうかな?」
瞬間、上空に光が現れる。
その光は神々しさを感じ、理に近い存在でもあるシャオですら怯んでしまう強大な力を秘めている。
「な、え…!」
「レーヴァテイルは謳いながらでも別の詩魔法を溜める事が出来、発動は任意で行える。私がしている事を人の言葉で言うのならば――隠し玉と言う奴だな」
記憶を使い他人の技を取り入れるのはシャオでも出来る。だが、相手は『カミ』と呼ばれる人物。他人の戦術を取り入れるなんて造作もない事だ。技の使用者よりも威力を格段に上げる事も。
彼女は『謳っている間は戦えない』と味方にも敵にも認識させたが、事実嘘は言ってない。詩魔法は本来溜めてこそ力を発揮する技なのだから。
時間稼ぎは十分に出来た。とは言え、相手は理に近い存在。だから彼が油断する機会を待ち…今その時が訪れた。
イリアは手を大きく広げ、容赦なくシャオへと鉄槌の如く振り下ろした。
「我想ウ故ニ謳ウ我在リ(コード・オブ・サブリメイション)」
心穏やかな詩声とともに、辺り一帯に敵を滅する勢いで破壊光が降り注ぐ。
あまりの威力に、爆風でイリアの長い黒髪や白のドレスがはためく。そんな中、内にいるレプキアは何とも言えぬ吐息を漏らした。
『よりにもよってそれ謳ってたのね…シェルリア、悪いわね』
今の魔法はシェルリアにとって、ゼツとの深い会合によって生まれた特別な詩魔法。そんな大事な魔法を使ったと知ったら、落ち込むか怒るかの二択になるだろう。
思わずレプキアが謝っていると、イリアは不思議そうに訊き返してきた。
「何故謝る?」
『その内分かるんじゃない?…それより、早く謳い直さないと。入口が閉まり始めて』
その瞬間、イリアが弾かれたように前方に手を翳す。
同時に、出現させた障壁に何かが激しくぶつかった。
『ナッ、何々ィ!?』
レプキアが動揺する一方で、イリアは前を見据える。
防御した障壁にキーブレードを振りおろし、先程の魔法でボロボロになっているシャオが睨み付けていた。
理から生まれた存在である以上、イリアであっても倒すのは不可能なのだ。
「凄まじい執念だな。身体もボロボロだと言うのに」
「ッ、黙れぇぇ!!!」
怒鳴ると、イリアに向かって再びキーブレードを振り上げる。
イリアは障壁を出したまま受け止める姿勢を保つ――だが、振り下ろされることはなかった。
シャオの腕が後ろから掴まれたのだ。心が壊れ、倒れていた筈のクウに。
「あなた…」
「は、放せぇ!!」
予想だにしなかった事に、イリアが声をかけているとシャオが暴れる。しかし、クウは虚ろな目をしたまま放そうとしない。
「やくそく、した」
シャオを拘束したまま、抑揚のない声で呟く。
「あのこを、まもるって」
腕を握るクウの手の力が、更に篭る。
「わらってほしいから…!」
彼の呟く言葉に、イリアとレプキアは理解する。
こうしてクウが立ってられるのは、心が壊れても尚残った欠片…断片の記憶が突き動かしているのだと。
『どうなってるのよ、あいつ…ペナルティは科せられたままなのに、あんな記憶見て心が壊れた筈なのに…!』
「“シャオ”が力を貸したのかもしれないわね」
訳が分からないと困惑するレプキアを余所に、例の青い影を使いイリアは記憶を読み取り何があったか理解する。
「あの子を消滅させなければと言う防衛本能の働きをするシャオの意思の他にも、私達を消したくない意思もある。それは無意識にシャオが、あの子が望んでいる事だから」
『じゃあ、あいつが会合したレイアは…』
「彼が夢を通して呼び寄せたのか、もしくは――別の者の力で介入したか…」
最後だけ小さく呟くと、未だに暴れるシャオを物ともせずに只々腕を掴んでいるクウを見る。
シャオもあの攻撃で消耗しきっており、クウの危機に本来の自我が手を貸したのだ。三人を追い詰めていた強さが発揮されないのだろう。
「どちらにせよ、彼が立ち上がっているのはクウだけの力じゃない。いろんな人が力を貸してくれている。人が持つ繋がりの力だ」
彼を動かしている記憶を作った人。微弱ながらもクウの意識を取り戻させたレイア。彼女を呼んだ“誰か”。皆が手を差し出す事で出来ない事も出来る。それは全知全能であるイリアでも、昔は…独りでは手に入らない力。
その時、閉じかけた闇の中から勢いよくイオンとペルセが飛び出した。
「――つぅ!!」
「はぁ…はぁ…!」
ギリギリで戻ってくると、床に寝そべって荒い
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